【批判的吟味】痛風患者に対するアロプリノールとフェブキソスタット、どちらが安全そうですか?(非劣性 PROBE; FAST trial; Lncet 2020)

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Long-term cardiovascular safety of febuxostat compared with allopurinol in patients with gout (FAST): a multicentre, prospective, randomised, open-label, non-inferiority trial

Isla S Mackenzie et al.

Lancet. 2020 Nov 28;396(10264):1745-1757. doi: 10.1016/S0140-6736(20)32234-0. Epub 2020 Nov 9.

PMID: 33181081

DOI: 10.1016/S0140-6736(20)32234-0

Funding: Menarini, Ipsen, and Teijin Pharma Ltd.

論文の抄録

痛風患者の心血管安全性に対するフェブキソスタットとアロプリノールの効果はどのくらいですか?(PROBE; 欧州 FAST trial; Lancet 2020)

PICOTSL

  • P:心血管ハイリスク因子を1つ以上有する60歳以上の痛風患者
  • I :フェブキソスタット(80mgで開始し、血清尿酸値により120mgに増量*)
  • C:アロプリノール(100あるいは300mg, 100〜900mg***)
  • O:主要アウトカム___心血管系アウトカムの複合***
  • 副次的アウトカム___非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性の急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中、心血管系イベントによる死亡、全死亡、心不全による入院、不安定・新規・悪化した狭心症による入院、冠動脈血行再建による入院、脳血行再建による入院、一過性脳虚血発作による入院、非致死性心停止による入院、静脈および末梢動脈血栓性イベントによる入院、虚血を伴わない不整脈による入院。
  • T:治療・予後、欧州多施設共同、PROBE(エンドポイント判定委員会のみ盲検)
  • S:英国、デンマーク、スコットランド、スウェーデン
  • L:一次イベント数が予測より少ないため検出力は約77%に低下した。

*日本で承認されている用量は最大60mg/. **日本で承認されている用量は最大300mg/
***
構成要素:非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性の急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中(入院に至ったか否か、または入院中に発生したと報告されているか否かにかかわらず)、または心血管系イベントによる死亡

選択基準

患者は主に英国とデンマークのプライマリーケア850施設(プライマリーケア記録の検索)から募集されたが、スコットランドの2次医療センター2施設、スウェーデンの臨床研究機関2施設を介しても募集された。

主要組入基準

  • 60歳以上
  • 痛風(尿石除去療法を必要とする)
  • 少なくとも1つの追加の心血管系危険因子
  • アロプリノール療法をすでに実施中

主要除外基準

  • 無症候性高尿酸血症
  • 過去6ヶ月間に心筋梗塞または脳卒中の既往歴
  • うっ血性心不全(NYHAクラスIIIまたはIV)
  • 重度の腎障害

批判的吟味

  • ランダム割り付けされているか?→⭕️ ランダム化比較試験
  • 割り付けは隠蔽化されているか?→⭕️ 中央割り付けであるため隠蔽化されていると判断した(グラスゴー大学ロバートソン生物統計学センターに設置されているウェブベースの中央ランダム化施設、interactive voice response systemあるいはweb ­based applicationを利用)
  • ベースラインは同等か?→⭕️ 99.1%が白人であった(東洋人は0.1%程度)。
  • 調整された因子は網羅されているか?→⭕️ 概ね調整されていると判断した。
  • ITT解析か?→⭕️
  • 脱落はどのくらいか?→⭕️ 両群同程度であり、脱落数も問題ない程度であると判断した。
  • 試験終了日(20191231日)に、フェブキソスタット群189例(6.2%)、アロプリノール群169例(5.5%)がすべてのフォローアップを辞退した。
  • 盲検化(マスキング、ブラインド)されているか?→ PROBE法を採用している。主要アウトカムはハードあるいは客観的であるため影響は少ないと考えられる。
  • サンプルサイズは充分か?→⭕️ 計算上、必要とされたサンプルサイズは5,706例であり、実際にランダム化されたのは6,128例と充分。
    <方法の項より一部抜粋>検出力80片側α0.025と仮定し、ハザード比(HR)の非劣性限界を1.3、アロプリノールと比較してフェブキソスタットの非劣性を示すためには456件の初発一次イベントが必要であると計算した。非劣性限界値1.3は、臨床上の関心の差が最小であるとして欧州医薬品庁(EMA)が選定し承認したものであり、これまでの規制当局のガイダンスや前例に基づいたものである。アロプリノール群では3年間で約10%の一次イベント発生率が予想される(観察データベースで観察された事象に基づく)ため、各治療群で患者2,282例が必要になると推定した。治療中の集団からの脱落率を20%と仮定すると、各治療群に患者2,853例(合計5,706)を登録すると、平均追跡期間3で必要な一次イベント数が発生すると予測された。

結果

主要アウトカム(心血管系アウトカムの複合)

フェブキソスタットアロプリノール
生数(%)率/100人・年発生数(%)率/100人・年HR(95%CI)非劣性P値優越性P値
256(8.4)2.047285(9.3%)2.2950·89
0.75〜1.06)
<0.00010.185

群間で非劣性が認められましたが、優越性は示されませんでした。

群間差は2.3%、NNTは44

追跡期間中央値は1,467日(IQR 1,029〜2,052)、治療中の追跡期間中央値は1,324日(IQR 870〜1,919)でした。

ちなみに平均投与量は、フェブキソスタット群で81mg/日、アロプリノール群で279mg/日であった。

主要アウトカムの構成要素

非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性の急性冠症候群による入院:0.93(95%CI 0.71〜1.21

非致死的脳卒中:0.92(0.68〜1.25

心血管系イベントによる死亡:0.96(0.74〜1.23

ちなみに全死亡については0.84(0.71〜1.01)でした。

有害事象

有害事象の発生率に差は認められませんでした。また、内訳についても群間で大きな差は認められませんでした(本文 Table 4)。

全有害事象
フェブキソスタット群:1,720例(57.3%)
アロプリノール群  :1,812例(59.4%)

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✅まとめ✅

心血管ハイリスク因子を1つ以上有する痛風患者に対するフェブキソスタットの使用は、アロプリノールと比較して、心血管リスクを増加させなかった

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