80歳以上の患者における急性虚血性脳卒中に対するアルテプラーゼの効果はどのくらいですか?(患者個別データのプール解析; Stroke 2020)

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Alteplase for Acute Ischemic Stroke in Patients Aged >80 Years: Pooled Analyses of Individual Patient Data

Erich Bluhmki et al.

Stroke. 2020 Aug;51(8):2322-2331. doi: 10.1161/STROKEAHA.119.028396. Epub 2020 Jul 2.

PMID: 32611284

DOI: 10.1161/STROKEAHA.119.028396

Keywords: alteplase; elderly; ischemic stroke; recombinant tissue-type plasminogen activator; thrombolysis.

背景・目的

専門家のガイドラインでは、急性虚血性脳卒中(AIS)の血栓溶解療法におけるアルテプラーゼの年齢上限は定められていないが、最近まで欧州の規制基準では、18歳から80歳までの患者への使用が制限されていた。

本研究では、80歳以上の患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)および登録データをプールして、AISに対するアルテプラーゼのベネフィット・リスクプロファイルを評価し、年齢制限の解除に向けた規制当局の申請を支持することを目的とした。

方法

AISに対するアルテプラーゼ(0.9mg/kg)とプラセボまたはオープンコントロールのランダム化試験7件と、欧州のSITS-UTMOSTレジストリデータベースから、患者個人のデータを評価した。

良好な機能的アウトカム(スコア 0~1、修正ランキン・スケール90日目またはオックスフォード・ハンディキャップ・スコア180日目)を含む臨床的アウトカムを、RCT全体およびレジストリ集団、および年齢制限を除くアルテプラーゼの既存の欧州規制基準を満たす特定の年齢ベースのサブグループ(80歳未満または80歳以上)で評価した。

結果

・治療配分にかかわらず、欧州の既存の規制基準を満たしている80歳以下のRCT患者と80歳以上のRCT患者では、90日死亡率が低かった(それぞれ246/2405例 [10.2%] vs. 307/1,028例 [29.9%])。

・80歳以上の患者では、アルテプラーゼとプラセボの比較で、良好な脳卒中アウトカムの割合が高く(modified Rankin Scale score 0〜1;99/518例[19.1%] vs. 67/510例[13.1%];P=0.0109)、90日死亡率は同程度(153/518例[29.5%] vs. 154/510例[30.2%];P=0.8382)だった。

・全RCT集団におけるアルテプラーぜの割り付け後の良好な脳卒中アウトカムのオッズは年齢と無関係であった(P=0.7383)。

・日常診療でアルテプラーゼ投与を受けた患者のほぼ半数(4,821/11,169例[43.2%])で良好な脳卒中アウトカムが報告された。日常診療でのアウトカムはRCTで得られたアウトカムと同様であった。

結論

AISに対するアルテプラーゼの投与は、他の規制基準に従って投与された場合、80歳以上の患者において有益性とリスクのプロファイルが良好であった。

AIS用アルテプラーゼは、個々のベネフィット・リスクに基づいて評価されるべきである。

コメント

静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版(2019年3月)におけるアルテプラーゼの記載は以下の通りである;

  1. 静注用の血栓溶解薬には、アルテプラーゼを用いる【推奨グレードA、エビデンスレベル高】
  2. わが国においては、アルテプラーゼの投与量として0.6mg/kgを静注する【A、中】
  3. アルテプラーゼ以外のrt-PA製剤の投与は、わが国において十分な科学的根拠がないので勧められない【C2、高】

治療開始時間については、発症後4.5時間以内が推奨されており、4.5時間以内であっても治療開始はより速い方が良いとされています。しかし、対象年齢については推奨基準が設定されていません。

さて、本試験結果によれば、80歳以上の虚血性脳卒中患者に対するアルテプラーゼの使用は、80齢以下の患者と比較して、90日死亡率が低かったようです。また80齢以上の患者におけるプラセボとの比較においては、アルテプラーゼで90日死亡率は同程度だったようです。

本試験では、欧州のSITS-UTMOSTレジストリデータベースとRCTの患者を比較していますが、脳卒中アウトカムに差は認められなかったようです。

✅まとめ✅ 80歳以上の虚血性脳卒中患者に対するアルテプラーゼ投与は、90日死亡率の低下、良好な脳卒中アウトカムの割合の増加が示唆され、これはレジストリデータとRCTで差がなかった

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