慢性疾患高齢者のポリファーマシー削減のための電子的意思決定支援ツールの効果はどのくらいですか?(クラスターRCT; BMJ 2020)

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Use of an electronic decision support tool to reduce polypharmacy in elderly people with chronic diseases: cluster randomised controlled trial

Anja Rieckert et al.

BMJ. 2020 Jun 18;369:m1822. doi: 10.1136/bmj.m1822.

PMID: 32554566

PMCID: PMC7301164

DOI: 10.1136/bmj.m1822

Trial registration: Current Controlled Trials ISRCTN10137559.

目的

ポリファーマシーを有する高齢者における包括的な薬物レビューのためのコンピュータ化された意思決定支援ツールの効果を評価すること。

試験デザイン

実践的、多施設、クラスターランダム化比較試験。

試験設定

オーストリア、ドイツ、イタリア、英国の一般診療所359件。

試験参加者

8種類以上の薬物を定期的に使用している75歳以上の成人3,904例。

介入

新たに開発された電子的意思決定支援ツールは、包括的な薬物レビューで構成されており、開業医が不適切な薬剤や根拠のない薬剤を再処方するのを支援する。

医師は、電子的意思決定支援ツールを使用するか、通常通りの治療を行うかのいずれかにランダム割り付けされた。

主要アウトカム指標

主要アウトカムは、24ヵ月までの計画外入院または死亡の複合であった。

主要な副次的アウトカムは、薬剤数の減少であった。

結果

・2015年1月から10月までの間に成人3,904例が登録された。

・診療所181施設と参加者1,953例を電子的意思決定支援(介入群)に、診療所178施設と参加者1,951例を通常通りの治療(対照群)に割り付けた。

・主要アウトカム(24ヵ月までの計画外入院または死亡の複合)は、介入群の参加者871例(44.6%)と対照群の参加者944例(48.4%)で発生した。

・意図対治療分析では、複合アウトカムのオッズ比は0.88(95%信頼区間 0.73~1.07;P=0.19、997/1,953例 vs. 1,055/1,951例)であった。

・プロトコールに従って診療に参加している参加者に限定した解析では、介入に有利な差が認められた。

★オッズ比 =0.82、95%信頼区間 0.68~0.98、774/1,682例 vs. 873/1,712例、P=0.03

・24ヵ月までに、介入群では対照群と比較して処方される薬の数が減少した。

★無調整平均変化量 =-0.42 vs. 0.06:調整平均差 =-0.45、95%信頼区間 -0.63~ -0.26、P<0.001

結論

意図対治療分析において、ポリファーマシーを有する高齢者の包括的な薬物レビューのためのコンピュータ化された意思決定支援ツールは、計画外の入院または24ヵ月までの死亡の複合アウトカムに決定的な効果を示さなかった。それにもかかわらず、患者のアウトカムに悪影響を及ぼすことなく薬剤の削減が達成された。

コメント

高齢化社会において、ポリファーマシーに対する対策が求められています。高齢による並存疾患の増加、これに伴う薬剤数の増加は自然だと考えます。しかし、薬剤数の増加に伴い、潜在的不適切処方(PIMs)が増加する可能性についての報告が多くあります。したがって、ポリファーマシー、特にPIMsに対する対策は重要であると考えます。

さて、本試験結果によれば、コンピュータ化された意思決定支援ツールにより、ITT解析による主要アウトカム(24ヵ月までの計画外入院または死亡の複合)のオッズ比は0.88(95%信頼区間 0.73~1.07)と有意な差は認められませんでしたが、リスクは低下傾向でした。一方、PP解析によれば主要アウトカムのオッズ比は0.82(95%信頼区間 0.68~0.98)と有意な差が認められました。

また介入により、薬剤数が有意に減少しました(調整平均差 =-0.45、95%信頼区間 -0.63~ -0.26、P<0.001)。

個人的には有望な試験結果です。コンピュータ化された意思決定支援ツールの効果はありそうですね。続報に期待。

✅まとめ✅ 慢性疾患高齢者のポリファーマシー削減のための電子的意思決定支援ツールによる介入は、主要アウトカム(24ヵ月までの計画外入院または死亡の複合)に対して低下傾向、薬剤数に対しては有意に減少させた

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