気管支鏡検査時の中等度鎮静に対するレミマゾラムの有効性と安全性はどのくらいですか?(DB-RCT; Chest. 2019)

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Safety and Efficacy of Remimazolam Compared With Placebo and Midazolam for Moderate Sedation During Bronchoscopy

Nicholas J Pastis et al.

Chest. 2019 Jan;155(1):137-146. doi: 10.1016/j.chest.2018.09.015. Epub 2018 Oct 4.

PMID: 30292760

DOI: 10.1016/j.chest.2018.09.015

Keywords: Modified Observer’s Assessment of Alertness/Sedation Scale; flexible bronchoscopy; monitored anesthesia care; remimazolam.

背景

可撓性気管支鏡検査の複雑さが増す一方で、中等度鎮静薬の標準的な選択肢は30年前から変わっていない。安全性を維持しつつ、中等度の鎮静を改善する必要性がある。レミマゾラムは、現在の鎮静戦略の欠点に対処するために開発された。

方法

米国の30施設で、前向き、二重盲検、ランダム化、多施設並行群間比較試験を実施した。可撓性気管支鏡検査中の鎮静に対するレミマゾラムの有効性と安全性をプラセボおよびミダゾラム(オープンラベル)と比較した。

結果

・成功率はレミマゾラム群80.6%、プラセボ群4.8%(P<0.0001)、ミダゾラム群32.9%であった。

・気管支鏡検査の開始時間は、プラセボ群(17.2±4.15分、P<0.0001)およびミダゾラム群(16.3±8.60分)と比較して、レミマゾラム群(平均6.4±5.82分)の方が早かった。

・気管支鏡検査終了後の完全覚醒までの時間は、プラセボ(13.6分、95%CI 8.1〜24.0;P=0.0001)およびミダゾラム(12.0分、95%CI 5.0〜15.0)と比較して、レミマゾラムで治療された患者で有意に短かった(中央値 6.0分、95%CI 5.2〜7.1)。

・レミマゾラムは、プラセボおよびミダゾラムと比較して優れた精神神経機能の回復を記録した。

・安全性は3群間で同等であり、重篤な治療緊急有害事象はレミマゾラム群で5.6%の患者にが認められたのに対し、プラセボ群では6.8%であった。

結論

肺専門医の監督の下で投与されたレミマゾラムは、可撓性気管支鏡検査時の中等度の鎮静に有効で安全であった。

探索的分析では、レミマゾラムはミダゾラムよりも作用発現が短く、神経精神医学的な回復が早いことが示された。

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日本麻酔科学会によれば、麻酔の目的は以下の2点のようです。

  • 手術により生じる身体的・精神的ストレスから患者を守る
  • 手術が円滑に行えるようにする

また全身麻酔の定義については、1957年にGeorge Woodbridgeにより以下の4点が提唱されています。

  • 意識の消失
  • 無痛
  • 筋弛緩
  • 有害反射の抑制

そして全身麻酔薬に求められる条件は以下です。

  • 必須条件
    • 効果が確実かつ可逆的である
  • 望まれる条件
    • 導入が速やか
    • 持続時間の調節が容易
    • 覚醒が速やか
    • 覚醒後に影響が残らない
    • 安全性が高い

さらに、全身麻酔薬に求められる上記の条件について、単剤かつバランスよく満たす麻酔薬はないようです。そこでバランス麻酔の登場です。

バランス麻酔とは、麻酔薬(意識を消失させる)、鎮痛薬(痛みをコントロールする)、筋弛緩薬(骨格筋を弛緩させる)を組み合わせて、全身麻酔役に求められる条件を満たそうとする方法です。

ただし、本試験におけるレミマゾラム使用は気管支鏡検査の鎮静が目的であり、全身麻酔薬としては使用されていません。現段階においては、日本で承認されている効能又は効果と異なりますので注意が必要です。

さて、本試験結果によれば、ベースの鎮痛薬(フェンタニル)へのレミマゾラム追加は、プラセボと比較して、アウトカム(麻酔の成功率、気管支鏡検査の開始時間、検査終了後の完全覚醒までの時間、精神神経機能の回復)の有効性が認められました。

また安全性については、3群間で差がなかったとのこと。

本結果より、気管支鏡検査の鎮静を目的としたレミマゾラムの使用は、従来薬と比べ、効果が確実かつ可逆的であり、導入および覚醒が速やか、覚醒後に影響が残らない、と考えられます。

プラセボより優れていることは間違いありませんが、従来薬との比較は結果を割引いて捉えた方が良いかもしれません。

ただし、実薬群として設定されたミダゾラムはオープンラベルであることから、直接的な統計解析は実施できず、またアウトカムによってはバイアスが入る可能性があるため、あくまでも仮説生成的な結果です。さらに前述した通り、本邦において、レミマゾラムを気管支鏡検査時の鎮静目的で使用することはできません。今後の適応拡大を待ちたいところ。

✅まとめ✅ 可撓性気管支鏡検査時の中等度の鎮静におけるレミマゾラムは、プラセボと比較して有効かつ安全であったが、従来薬との比較については追試が必要である

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