Hydroxychloroquine or Chloroquine With or Without a Macrolide for Treatment of COVID-19: A Multinational Registry Analysis
Mandeep R Mehra et al.
Lancet. 2020 May 22;S0140-6736(20)31180-6. doi: 10.1016/S0140-6736(20)31180-6. Online ahead of print.
PMID: 32450107
PMCID: PMC7255293
DOI: 10.1016/S0140-6736(20)31180-6
Funding: William Harvey Distinguished Chair in Advanced Cardiovascular Medicine at Brigham and Women’s Hospital.
背景
ヒドロキシクロロキンまたはクロロキンは、その有用性についての決定的な証拠がないにもかかわらず、しばしば第二世代のマクロライドと組み合わせて、COVID-19の治療に広く使用されている。
自己免疫疾患やマラリアなどの承認された適応症に使用される場合は一般的に安全であるが、COVID-19ではこれらの治療レジメンの安全性と有益性は十分に評価されていない。
方法
COVID-19の治療にクロロキンまたはヒドロキシクロロキンにマクロライドを併用した場合と併用しない場合の使用について、多国間のレジストリ解析を行った。
レジストリは、6大陸の病院671施設のデータから構成されている。
2019年12月20日から2020年4月14日までの間に入院し、SARS-CoV-2の臨床検査所見が陽性であった患者を対象とした。
診断後48時間以内に関心のある治療法のいずれかを受けた患者を4つの治療群(クロロキン単独、クロロキンとマクロライドの併用、ヒドロキシクロロキン単独、ヒドロキシクロロキンとマクロライドの併用)のいずれかに含め、これらの治療法のいずれも受けなかった患者を対照群とした。
いずれかの治療が診断後48時間以上経過してから開始された患者、または機械換気中に開始された患者、およびレムデシビルを投与された患者は除外した。
主なアウトカムは院内死亡率とde-novo性(新性、新鮮性)心室性不整脈(非持続性または持続性心室頻拍、あるいは心室細動)の発生であった。
所見
・COVID-19を有する96,032例(平均年齢53.8歳、女性46.3%)が研究期間中に入院し、包含基準を満たした。
・このうち、患者14,888例が治療群(クロロキン群1,868例、クロロキン+ マクロライド併用群3,783例、ヒドロキシクロロキン群3,016例、ヒドロキシクロロキン+マクロライド併用群6,221例)、81,144例が対照群だった。
・患者10,698例(11.1%)が入院中に死亡した。複数の交絡因子(年齢、性、人種または民族、体格指数、基礎となる心血管系疾患とその危険因子、糖尿病、基礎となる肺疾患、喫煙、免疫抑制状態、ベースラインの疾患重症度)をコントロールした後、対照群の死亡率(9.3%)と比較すると、ヒドロキシクロロキン(18.0%;ハザード比 =1.335、95%CI 1.223〜1.457)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド併用群(23.8%;1.447、1.368〜1.531)、クロロキン(16.4%;1.365、1.218〜1.531)、およびクロロキン+マクロライド併用群(22.2%;1.368、1.273〜1.469)は、それぞれ独立して院内死亡リスクの増加と関連していた。
・対照群(0.3%)と比較して、ヒドロキシクロロキン(6.1%;2.369、1.935〜2.900)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド併用群(8.1%;5.106、4.106〜5.983)、クロロキン(4.3%;3.561、2.760〜4.596)、クロロキン+マクロライド併用群(6.5%;4.011、3.344〜4.812)は、それぞれ独立して入院中のde-novo性心室性不整脈のリスク増加と関連していた。
結果の解釈
ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンを単独またはマクロライドと併用した場合におけるCOVID-19の院内転帰に対する有効性は確認できなかった。
これらの薬物レジメンはそれぞれ、COVID-19の治療に使用された場合、院内生存率の低下と心室性不整脈の頻度の増加と関連していた。
コメント
以下の6大陸の大規模レジストリ研究。アジアも含まれています。
さて、試験結果としては、対照群と比較して、曝露群で院内死亡リスクおよび心室性不整脈リスク増加が認められました。さらに、クロロキンあるいはヒドロキシクロロキンにマクロライドを併用すると前述のリスク増加はさらに大きくなりました。
なぜここまで、これらの薬剤が使用されるのかはわかりませんが、これまでの報告も含め、一貫してCOVID-19に対する有効性は認められておらず、さらに対照群に比べて有害事象のリスク増加が報告されています。クロロキン、ヒドロキシクロロキンによる治療はお勧めできません。
✅まとめ✅ COVID-19に対してヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンを単独またはマクロライドと併用した場合、院内生存率の低下と心室性不整脈の増加との関連性が報告された
しかし、、、
6月4日Lancetが本論文の撤回を発表しました。理由は以下の通り;
Today, three of the authors of the paper, “Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis”, have retracted their study. They were unable to complete an independent audit of the data underpinning their analysis. As a result, they have concluded that they “can no longer vouch for the veracity of the primary data sources.” The Lancet takes issues of scientific integrity extremely seriously, and there are many outstanding questions about Surgisphere and the data that were allegedly included in this study. Following guidelines from the Committee on Publication Ethics (COPE) and International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE), institutional reviews of Surgisphere’s research collaborations are urgently needed.
The retraction notice is published today, June 4, 2020. The article will be updated to reflect this retraction shortly.
本日、論文「Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis」の著者3名が研究を撤回しました。分析の基礎となるデータの独立した監査を完了することができませんでした。その結果、彼らは「主要なデータソースの信頼性を保証することはもはやできない」と結論付けています。ランセット誌は科学的完全性の問題を非常に真剣に考えており、Surgisphereとこの研究に含まれているとされるデータについては、多くの未解決の疑問があります。出版倫理委員会(COPE)および国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)のガイドラインに従い、Surgisphereの共同研究の機関別レビューが緊急に必要とされています。
撤回通知は、本日2020年6月4日に公表されました。記事は近日中にこの撤回を反映して更新されます。
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