Estimated Research and Development Investment Needed to Bring a New Medicine to Market, 2009-2018
Olivier J Wouters et al.
JAMA. 2020
PMID: 32125404
試験の重要性
新薬の開発にかかる平均費用は議論の対象となっており、最近の推定では3億1400万ドルから28億ドルの範囲である。
目的
一般に入手可能なデータを使用して、新しい治療薬を市場に投入するために必要な研究開発投資を見積もること。
試験設計と設定
2009年から2018年の間に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された新しい治療薬に関するデータを分析し、新薬を市場に投入するために必要な研究開発費を推定した。
データには、米国証券取引委員会、Drugs @ FDAデータベース、ClinicalTrials.govから、臨床試験の成功率に関する公開データとともにアクセスした。
暴露
新しい治療薬の前臨床および臨床研究の実施。
主な結果と対策
FDAによって承認された新しい治療薬の研究開発費の中央値と平均値であり、CIがブートストラップされており、年間10.5%の実質資本コスト率(投資家に必要な収益率)で資本化されている。すべての金額は2018年米ドルを基に報告された。
結果
・FDAは、研究期間中に355の新薬と生物製剤を承認した。
・異なる企業47社が開発した63製品(18%)の研究開発費が利用可能だった。
・失敗した試験の費用を会計処理した後、新薬を市場に投入するための資本化された研究開発投資の中央値は985.3百万ドル(95%CI 683.6百万ドル〜1228.9百万ドル)と推定され、平均投資は1,335.9百万ドル(95%CI 1,042.5百万ドル〜1,637.5百万ドル)。
・治療領域(5種類以上の薬剤を含む)による推定の中央値は、神経系薬剤の7億6590万ドル(95%CI 3億2300万ドル〜1億4350万ドル)から、抗腫瘍薬および免疫調節薬の2億7760万ドル(95%CI 2億5180万ドル〜5億3620万ドル)の範囲だった。
・データは主に、小規模企業、オーファンドラッグ、特定の治療分野の製品、ベストインクラス薬剤、迅速承認の治療薬、成功率、前臨床支出、および資本コストであり、2014年〜2018年の間に承認された製品データにアクセスできた。
結論と関連性
本研究は、公開されているデータに基づいた新しい治療薬の研究開発費の推定値を提供する。
以前の研究との違いは、分析された製品のスペクトル、パブリックドメインでのデータ制限された可用性、およびコスト計算の基礎となる仮定の違いを反映している可能性がある。
コメント
新薬の研究開発費を調査した論文。
2009年〜2018年までにFDAで承認された新薬は355品目(35.5品目/年)だったとのこと。個人的には「品目数多いな〜」と思ったのですが、2019年4月1日から2020年2月21日までPMDAに承認された新医薬品は101品目(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0031.html)でした。日本多すぎですね。もう少し精査した方が良いと思います。
さて、研究開発費としては中央値985.3百万ドル(95%CI 683.6百万ドル〜1,228.9百万ドル)と推定され、平均投資は1,335.9百万ドル(95%CI 1,042.5百万ドル〜1,637.5百万ドル)だったとのこと。日本では、1品目あたり200~300億円と推定されていますので、アメリカではかなりの額が投資されていることがわかります。実際、海外第三相試験のサンプルサイズや試験数をみると、そのぐらいの額はかかるよなと思います。
製薬メーカーが新薬に投資し臨床試験を丁寧に実施するよう行動変容を起こすためには、PMDAの承認制度を変えるしかないと考えています。でないとエビデンスの集積はできず、類薬ばかりが承認され、ハードアウトカムに対し効果があるのかないのか、逆に有害事象リスクを増加させるのか分からない状況のままです。
また製薬メーカーは、今回のような研究報告を精査し、投資の内訳を自社と比較して取り入れられる部分は取り入れた方が良いと思います。エビデンス集積への投資を増やして、事実に基づいたプロモーションをして欲しいと切に願っています。
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