小児の睡眠時無呼吸症候群に点鼻ステロイドは有効?(JAMA Pediatr. 2026)

mother applying nose drops to a sick daughter 03_呼吸器系
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― 生理食塩水との比較ランダム化比較試験から分かること

ステロイド点鼻の効果はどのくらいか?

小児の閉塞性睡眠時無呼吸関連呼吸障害(OSDB: obstructive sleep-disordered breathing)は、いびき、睡眠の質低下、行動問題などと関連し、放置すると生活の質(QOL)や発達に影響を及ぼすことが知られています。

治療の第一選択はアデノイド・扁桃摘出術ですが、近年は手術を回避または遅らせる目的での薬物療法にも注目が集まっています。

今回ご紹介するのは、ステロイド点鼻(mometasone furoate)と生理食塩水を直接比較した、二重盲検ランダム化比較試験です。


試験結果から明らかになったことは?

◆対象となった研究の概要

  • 研究デザイン:二重盲検・プラセボ対照・ランダム化比較試験
  • 実施国:オーストラリア(2施設)
  • 対象:3〜12歳のOSDB症状を有する小児
  • 試験登録数:150人
  • 試験登録期間後の解析:2025年1月〜6月

◆試験の特徴

本試験は、いきなり薬剤を比較するのではなく、
全例に6週間の「生理食塩水点鼻(run-in)」を行った後、症状が残存した児のみをランダム化する、特徴的なデザインを採用しています。


◆介入内容

フェーズ内容
Run-in期(6週間)生理食塩水点鼻(全例)
ランダム化後(6週間)点鼻ステロイド(モメタゾンフランカルボン酸エステル 50µg/日)
vs 生理食塩水

◆評価項目

主要評価項目

  • OSDB症状の消失
    • Sleep-Disordered Breathing(SDB)スコア < −1

副次評価項目

  • 行動指標
  • QOL
  • 保護者による「手術の必要性」の認識

※ いずれも施設差・ベースラインを調整して解析


◆試験結果

Run-in期(生理食塩水6週間)の効果

  • Run-inを完了した139人のうち
    41人(29.5%)で症状が消失

👉 生理食塩水単独でも、約3割の小児でOSDB症状が改善


ランダム化後(追加6週間)の結果

症状消失率
点鼻ステロイド群35.6%
(95%CI 22.9~50.6%)
生理食塩水群36.4%
(95%CI 23.5~51.6%)
群間差−0.9%
(95%CI −20.7% 〜 19.0%)
P=0.93
  • 点鼻ステロイドによる上乗せ効果は認められず
  • 副次評価項目(行動、QOL、手術必要性)にも群間差なし
  • サブグループ解析でも、特定の有効集団は同定されなかった

著者らの結論

  • 生理食塩水点鼻6週間で約3割の小児に症状消失
  • さらに6週間の追加治療(ステロイド or 生理食塩水)で全体として約半数が症状消失
  • 点鼻ステロイドの追加的有効性は示されなかった
  • OSDBに対して、まず3か月間の生理食塩水点鼻を行うことが有効な初期対応になり得る

試験の限界(Limitation)

本研究には、原著で明示されている、または研究デザイン上避けられない以下の限界があります。

  1. 追跡期間が短い(最大12週間)
    • 症状改善が長期的に維持されるかは評価されていない
  2. 評価指標が症状スコア中心
    • ポリソムノグラフィー(PSG)による客観的睡眠指標は用いられていない
  3. 軽症〜中等症が中心の集団
    • 重症OSDBへの外挿は困難
  4. run-inデザインによる選択バイアスの可能性
    • 生理食塩水で反応しない症例のみがランダム化されている
  5. 点鼻ステロイドの用量・期間が限定的
    • 他用量・長期使用の有効性は不明

試験結果の整理

  • 「点鼻ステロイド=有効」とは言えない
  • しかし、
    • 生理食塩水点鼻のみで一定割合が改善
    • 侵襲性が低く、安全性が高い
  • 専門医紹介や手術検討の前段階の介入として合理的

👉 「まず3か月、生理食塩水点鼻を試す」
という選択肢を、エビデンスをもって説明できる点が本研究の臨床的意義です。


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◆まとめ

  • 小児OSDBにおいてステロイド点鼻は生理食塩水を上回る有効性を示さなかった
  • 一方で、生理食塩水点鼻は短期間で約半数の症状改善に寄与
  • 手術・精密検査前の初期対応としての位置づけが明確になった試験

アデノイドや扁桃の腫脹を退縮させることを目的にステロイド点鼻が用いられましたが、その効果は認められませんでした。

むしろ生理食塩水の点鼻を継続することで、閉塞性睡眠時無呼吸関連呼吸障害(OSDB)の症状の半減が見込める結果でした。したがって、現時点では手術が第一選択であり、術前の補助的な介入として生理食塩水の点鼻を提案できそうです。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、ステロイド点鼻は生理食塩水の点鼻と比較して、OSDB症状の消失に差がなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性: 閉塞性睡眠時無呼吸症の症状は小児期に多く見られ、重大な合併症を伴います。アデノ扁桃摘出術による外科的治療が第一選択治療ですが、薬物療法によって症状が改善し、手術の必要性が軽減される可能性があります。

目的: 6 週間の鼻腔内生理食塩水投与後も症状が持続する閉塞性睡眠障害性呼吸障害 (OSDB) の小児における 6 週間の鼻腔内ステロイド (INS) の有効性を、生理食塩水と比較して判定する。

試験デザイン、設定、および参加者: 本試験は、オーストラリアの2施設における専門クリニックの待機リストに登録された患者を対象とした、二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験であった。対象は3歳から12歳までの小児であった。試験データは2025年1月から6月まで解析された。

介入: 全患児は6週間にわたり、1日1回生理食塩水を鼻腔内投与された(ランイン)。症状が持続する患児(SDBスコア≥-1)は、1日1回モメタゾンフランカルボン酸エステル50µgの鼻腔内投与(INS)を受ける群と、さらに6週間生理食塩水を投与し続ける群に無作為に割り付けられた。

主要評価項目と指標: 主要評価項目は症状の消失(SDBスコア<-1)であった。副次評価項目は、行動、生活の質、および手術の必要性に関する保護者の認識であった。解析は、実施施設およびベースラインの指標に基づいて調整された。

結果: 合計150名の小児(平均[SD]年齢、6.2[2.3]歳、男性93名[62%])が登録された。導入期を完了した139名の小児のうち、41名(29.5%)で生理食塩水導入後に症状が消失した。介入群(INS群47名、生理食塩水群46名)に無作為に割り付けられた93名の小児のうち、INS群と生理食塩水群でそれぞれ35.6%(95% CI、22.9%~50.6%)、36.4%(95% CI、23.5%~51.6%)で症状が消失したが、群​​間における臨床的に有意な差は認められなかった(リスク差、-0.9%、95% CI、-20.7%~19.0%、P = .93)。副次的アウトカムには群間差は認められなかった。サブグループ分析では、医療処置に反応する可能性が高いグループと反応しない可能性が高いグループが明らかになりませんでした。

結論と関連性: 本ランダム化臨床試験の結果は、6週間の鼻腔内生理食塩水投与により、約3分の1の小児でOSDBの症状が消失したことを示しました。さらに6週間の鼻腔内生理食塩水またはステロイド点鼻投与により、さらに3分の1の小児で症状が消失しました(全体の消失率は約50%)。鼻腔内生理食塩水投与による追加効果はありませんでした。鼻腔内生理食塩水投与は、睡眠ポリグラフ検査や外科的介入を検討する前のOSDBの効果的な短期第一選択治療です。これらの結果は、専門医への紹介の必要性を評価する前に、生理食塩水を3ヶ月間投与することを推奨することを示唆しています。

試験登録: ClinicalTrials.gov 識別子 NCT05382494

引用文献

Intranasal Treatments for Children With Sleep-Disordered Breathing: The MIST+ Randomized Clinical Trial
Gillian M Nixon et al. PMID: 41557344 PMCID: PMC12820777 (available on 2027-01-20) DOI: 10.1001/jamapediatrics.2025.5717
JAMA Pediatr. 2026 Jan 20:e255717. doi: 10.1001/jamapediatrics.2025.5717. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41557344/

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