心不全に便秘を合併する場合の予後は?
便秘は薬の副作用や心不全の生理的影響から心不全患者にしばしばみられます。ここ最近の研究結果から、便秘の併存が心血管系疾患の発症や生存率に影響を及ぼす可能性が示唆されていますが、この関係は依然として不明です。
そこで今回は、便秘の併存が心不全患者の生存に及ぼす影響を検討した日本のコホート研究の結果をご紹介します。
本研究は、急性代償性心不全で入院した患者を対象とした多施設前向きコホート研究(高知YOSACOI研究)です。2年生存率を指標としたCox回帰分析により、便秘の併存が生存率に及ぼす影響が評価されました。患者は併存便秘の有無により2群に分けられました。患者背景は傾向スコアマッチングにより調整され、評価にはログランク検定を用いた2年生存率および心血管死発生率の評価が含められました。
試験結果から明らかになったことは?
急性代償性心不全で入院した1,061例のうち、完全なデータを有する715例(便秘を合併していた124例、合併していなかった591例)が解析対象となりました。
生存率のハザード比(95%CI) | |
便秘合併 | ハザード比 1.90(1.3~2.8) P<0.001 |
便秘合併はCox回帰モデルにおいて生存率低下の危険因子として同定されました(ハザード比 1.90、95%信頼区間 1.3~2.8、P<0.001)。
傾向スコアマッチングにより、各群104例が組み入れられました。log-rank検定による生存分析では、便秘合併群で生存率が悪く(P=0.023)、心血管系死亡率が高い(P=0.043)ことが示されました。
コメント
心不全患者において、便秘はしばしば合併しますが、生存率への影響については不明です。
さて、日本の前向きコホート研究の結果、便秘は心不全患者の生存に悪影響を及ぼす可能性があることが示されました。便秘と生存率低下との因果関係は不明ですが、合併便秘を同定することで予後不良のリスクが高い心不全患者を同定することができるかもしれません。
そもそも便秘を合併しやすい患者は、併存疾患が多い傾向にあります。再現性の確認や未知の交絡因子の同定なども含めて、更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 日本の前向きコホート研究の結果、便秘は心不全患者の生存に悪影響を及ぼす可能性があることが示された。便秘と生存率低下との因果関係は不明であるが、合併便秘を同定することは、予後不良のリスクが高い心不全患者を同定するために不可欠である。
根拠となった試験の抄録
背景:便秘は薬の副作用や心不全の生理的影響から心不全患者にしばしばみられる。最近、便秘の併存が心血管系疾患の発症や生存率に影響を及ぼす可能性が示唆されているが、この関係は依然として不明である。われわれは便秘の併存が心不全患者の生存に及ぼす影響を検討した。
方法:急性代償性心不全で入院した患者を対象とした多施設前向きコホート研究(高知YOSACOI研究)を実施した。2年生存率を指標としたCox回帰分析を用いて、便秘の併存が生存率に及ぼす影響を評価した。患者は併存便秘の有無により2群に分けられた。患者背景は傾向スコアマッチングを用いて調整し、評価にはログランク検定を用いた2年生存率および心血管死発生率の評価を含めた。
結果:急性代償性心不全で入院した1,061例のうち、完全なデータを有する715例(便秘を合併していた124例、合併していなかった591例)を解析した。便秘合併はCox回帰モデルにおいて生存率低下の危険因子として同定された(ハザード比 1.90、95%信頼区間 1.3~2.8、P<0.001)。傾向スコアマッチングにより、各群104例が組み入れられた。log-rank検定による生存分析では、便秘合併群で生存率が悪く(P=0.023)、心血管系死亡率が高い(P=0.043)ことが示された。
結論:便秘は心不全患者の生存に悪影響を及ぼす可能性がある。便秘と生存率低下との因果関係は不明であるが、合併便秘を同定することは、予後不良のリスクが高い心不全患者を同定するために不可欠である。
キーワード:便秘;心不全;死亡率;傾向スコアマッチング;危険因子
引用文献
Impact of comorbid constipation on the survival of patients with heart failure: a multicenter, prospective cohort study conducted in Japan
Tomoaki Ishida et al. PMID: 39877026 PMCID: PMC11772488 DOI: 10.3389/fcvm.2024.1470216
Front Cardiovasc Med. 2025 Jan 14:11:1470216. doi: 10.3389/fcvm.2024.1470216. eCollection 2024.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39877026/
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