早期筋萎縮性側索硬化症における超高用量メチルコバラミン投与の有効性と安全性(DB-RCT; JETALS試験; JAMA Neurol. 2022)

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ALSに対するビタミンB12の効果はどのくらい?

現在承認されている筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬の有効性は限られており、さらなる治療法の開発が必要とされています。初期の研究で、超高用量メチルコバラミンが有望な薬剤であることが示されていますが、再現性の確認も含めて、より大規模な検証が求められています。

そこで今回は、発症後1年以内に登録されたALS患者に対する超高用量メチルコバラミン投与の有効性と安全性を検証した二重盲検ランダム化比較試験(JETALS試験)の結果をご紹介します。

本試験は、12週間の観察期間と16週間のランダム化期間を有する多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化第3相臨床試験であり、2017年10月17日から2019年9月30日まで実施されました。患者は日本国内の25の神経内科施設から募集され、当初は、更新された淡路基準(the updated Awaji criteria)により発症から1年以内と診断されたALS患者が登録されました。このうち、12週間の観察後に以下の基準を満たす患者がランダム化の対象となりました: 改訂筋萎縮性側索硬化症機能評価尺度(the Revised Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale, ALSFRS-R)の総スコアが1点または2点低下していること、パーセント強制生命力が60%以上であること、非侵襲的呼吸補助および気管切開の既往がないこと、歩行可能であること。

メチルコバラミン群、プラセボ群ともに目標参加者数は64人でした。患者は電子的なWeb回答システムによりメチルコバラミン群とプラセボ群にランダムに割り付けられました。

試験結果から明らかになったことは?

合計130例の患者(平均年齢 61.0[SD 11.7]歳;男性 74例[56.9%])が、メチルコバラミン群とプラセボ群(各65例)にランダムに割り付けられました。合計129例の患者が全解析セットの対象となり、126例が二重盲検期を完了しました(このうち124例が非盲検延長試験に進んだ)。

メチルコバラミン投与群プラセボ投与群群間差
(95%CI)
ALSFRS-R総スコアの最小二乗平均値-2.66-4.631.97ポイント
0.44~3.50
P=0.01

ランダム化期間の16週目におけるALSFRS-R総スコアの最小二乗平均値の差は、メチルコバラミン投与群がプラセボ投与群より1.97ポイント大きいことが示されました(-2.66 vs. -4.63;95%CI 0.44~3.50;P=0.01)。

有害事象の発生率は2群間で同様でした。

コメント

ALSの治療薬は限られており、新たな治療選択肢が求められています。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果から、超高用量メチルコバラミン投与は、早期ALSで進行速度が中等度の患者における機能低下までの期間を延長させるのに有効であり、16週間の治療期間中安全に使用できることが示されました。

ALSについては、まだまだ治療選択肢が限られていることから、非常に有望な結果です。日本において治療薬としての開発が中断していましたが、2024年9月24日付で筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン®筋注用25㎎」(一般名:メコバラミン)として「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」の効能・効果で、製造販売承認を取得しています。販売開始が待たれるところです。

ちなみにではありますが、臨床的に意義のある差異の最小差(MICD)については、1件の研究結果ではありますが、9ポイント(95%CI 8~10)であることが報告されています。つまり、低下幅を9ポイント以内に抑えるようにしていくことで、患者QOLを維持できる可能性があると考えられます。

ALS治療薬については、いずれも対症療法です。一方、根本的な治療薬としてトフェルセンという遺伝子治療薬の製造販売承認申請が、日本においても2024年に行われました(米国FDAでは迅速承認されています)。トフェルセンは、ALSの約2%を占める「SOD1」と呼ばれる遺伝子に変異がある患者を対象としています。SOD1が筋力低下を引き起こす有害なタンパク質を産生してしまうことから、これを抑えるトフェルセンの効果に期待が寄せられています。

続報に期待。

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果から、超高用量メチルコバラミン投与は、早期ALSで進行速度が中等度の患者における機能低下までの期間を延長させるのに有効であり、16週間の治療期間中安全に使用できることが示された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:現在承認されている筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬の有効性は限られており、さらなる治療法の開発が必要である。初期の研究で、超高用量メチルコバラミンが有望な薬剤であることが示された。

目的:発症後1年以内に登録されたALS患者に対する超高用量メチルコバラミン投与の有効性と安全性を検証する。

試験デザイン、設定、参加者:2017年10月17日から2019年9月30日まで実施された、12週間の観察期間と16週間のランダム化期間を有する多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化第3相臨床試験である。患者は日本国内の25の神経内科施設から募集され、当初は、更新された淡路基準(the updated Awaji criteria)により発症から1年以内と診断されたALS患者が登録された。このうち、12週間の観察後に以下の基準を満たす患者がランダム化の対象となった: 改訂筋萎縮性側索硬化症機能評価尺度(the Revised Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale, ALSFRS-R)の総スコアが1点または2点低下していること、パーセント強制生命力が60%以上であること、非侵襲的呼吸補助および気管切開の既往がないこと、歩行可能であること。メチルコバラミン群、プラセボ群ともに目標参加者数は64人であった。患者は電子的なWeb回答システムによりメチルコバラミン群とプラセボ群にランダムに割り付けられた。

介入:メチルコバラミン(50mg)またはプラセボを週2回、16週間筋肉内注射した。

主要アウトカムと評価基準:主要エンドポイントは、全解析セットにおけるベースラインから16週目までのALSFRS-R総スコアの変化であった。

結果:合計130例の患者(平均年齢 61.0[SD 11.7]歳;男性 74例[56.9%])が、メチルコバラミン群とプラセボ群(各65例)にランダムに割り付けられた。合計129例の患者が全解析セットの対象となり、126例が二重盲検期を完了した。このうち124例が非盲検延長試験に進んだ。ランダム化期間の16週目におけるALSFRS-R総スコアの最小二乗平均値の差は、メチルコバラミン投与群がプラセボ投与群より1.97ポイント大きかった(-2.66 vs. -4.63;95%CI 0.44~3.50;P=0.01)。有害事象の発生率は2群間で同様であった。

結論と関連性:このランダム化比較試験の結果から、超高用量メチルコバラミン投与は、早期ALSで進行速度が中等度の患者の機能低下を遅らせるのに有効であり、16週間の治療期間中安全に使用できることが示された。

臨床試験登録番号:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT03548311

引用文献

Efficacy and Safety of Ultrahigh-Dose Methylcobalamin in Early-Stage Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Randomized Clinical Trial
Ryosuke Oki et al. PMID: 35532908 PMCID: PMC9086935 DOI: 10.1001/jamaneurol.2022.0901
JAMA Neurol. 2022 Jun 1;79(6):575-583. doi: 10.1001/jamaneurol.2022.0901.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35532908/

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