術後の興奮やせん妄に対する第一世代抗ヒスタミン薬の有効性は?
第一世代抗ヒスタミン薬による術後の興奮(agitation)やせん妄の予防効果は不明です。第一世代抗ヒスタミン薬の術後効果を明らかにすることで、患者の安全管理に重要な知見が得られる可能性があります。
そこで今回は、術後の第一世代抗ヒスタミン薬の有効性と安全性を評価したランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューの結果をご紹介します。
集中治療室または手術室で第一世代抗ヒスタミン薬を使用した患者が対象となりました。本研究の主要転帰は、術後の興奮またはせん妄であり、二値変数および連続変数で評価されました。副次的転帰はあらゆる有害事象でした。
試験結果から明らかになったことは?
9件の研究が組み入れられました。
クロルフェニラミンまたはジフェンヒドラミンを投与された患者では、生理食塩水を投与された患者よりも術後出現時興奮の頻度が低い傾向が示されました。
しかし、Richmond Agitation-Sedation Scaleを連続変数として用いた評価では、クロルフェニラミンだけが術後の出現時興奮を低下させるのに有効でした。
せん妄を評価した研究は1件のみでしたが、第一世代抗ヒスタミン薬の有用性は認められませんでした。
第一世代抗ヒスタミン薬の有害事象は他の薬剤と差がありませんでした。
コメント
第一世代の抗ヒスタミン薬がせん妄や興奮に対して効果的である可能性がありますが、充分に検証されていません。
さて、系統的レビューの結果、一部の第一世代抗ヒスタミン薬が術後の興奮を予防し、安全であるという限定的な証拠が提供されましたが、研究数が少なく結果の統合は行われませんでした。
ランダム化比較試験の実施が求められますが、エビデンスが少ないため、データベースを用いた後向きの解析や前向きコホート研究など様々な方向性から検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 系統的レビューの結果、一部の第一世代抗ヒスタミン薬が術後の興奮を予防し、安全であるという限定的な証拠が示唆されたが、研究数が少なく更なる検証が求められる。
根拠となった試験の抄録
目的:第一世代抗ヒスタミン薬による術後の興奮(agitation)やせん妄の予防効果は不明である。第一世代抗ヒスタミン薬の術後効果を明らかにすることで、患者の安全管理に重要な知見が得られる可能性がある。そこで、術後の第一世代抗ヒスタミン薬の有効性と安全性を評価したランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューを行った。
方法:集中治療室または手術室で第一世代抗ヒスタミン薬を使用した患者を対象とした。
主要転帰は、術後の興奮またはせん妄を二値変数および連続変数で評価した。副次的転帰はあらゆる有害事象とした。
結果:9件の研究が組み入れられた。クロルフェニラミンまたはジフェンヒドラミンを投与された患者では、生理食塩水を投与された患者よりも術後出現時興奮の頻度が低い傾向があった。しかし、Richmond Agitation-Sedation Scaleを連続変数として用いた評価では、クロルフェニラミンだけが術後の出現時興奮を低下させるのに有効であった。せん妄を評価した研究は1件のみであったが、第一世代抗ヒスタミン薬の有用性は認められなかった。第一世代抗ヒスタミン薬の有害事象は他の薬剤と差がなかった。
結論:この結果は、一部の第一世代抗ヒスタミン薬が術後の興奮を予防し、安全であるという限定的な証拠を提供するものである。この可能性をさらに検証するためには、術後出現時激越またはせん妄に関する明確かつ普遍的な評価基準を有する新たなRCTを実施すべきである。
キーワード せん妄;ヒスタミンH1拮抗薬;術後;系統的レビュー。
引用文献
Preventive effects of first-generation antihistamine on emergence agitation or delirium: a systematic review
Kazumasa Kotake et al. PMID: 39264446 DOI: 10.1007/s00228-024-03748-9
Eur J Clin Pharmacol. 2024 Sep 12. doi: 10.1007/s00228-024-03748-9. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39264446/
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