XIa阻害薬であるアスンデキサンの有効性・安全性は?
心房細動患者における直接作用型経口抗凝固薬による脳卒中予防は出血のリスクを伴うため、その使用は制限されています。
Asundexian(アスンデキサン)は、開発中の活性化血液凝固第XI因子(XIa)阻害薬であり、Xa阻害薬よりも出血リスクが低いことが期待されている経口抗凝固薬です。しかし、有効性・安全性における薬剤間の比較データはありません。
そこで今回は、心房細動患者におけるアスンデキサンとアピキサバンの有効性・安全性について比較検証したランダム化比較試験(OCEANIC-AF試験)の結果をご紹介します。
第3相国際二重盲検試験で、心房細動を有する高リスク患者がアスンデキサン50mg1日1回投与群と標準用量アピキサバン投与群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。
本試験の有効性の主要目的は、脳卒中または全身性塞栓症の予防において、アスンデキサンがアピキサバンに対して少なくとも非劣性であるかどうかを判定することでした。また、安全性の主要目的は、大出血イベントに関してアスンデキサンがアピキサバンより優れているかどうかを決定することでした。
試験結果から明らかになったことは?
ランダムに割り付けられた14,810例がintention-to-treat集団に組み入れられました。患者の平均(±SD)年齢は73.9±7.7歳、35.2%が女性、18.6%が慢性腎臓病、18.2%が脳卒中または一過性脳虚血発作の既往、16.8%が経口抗凝固薬を6週間以上投与されておらず、平均CHA2DS2-VAScスコア(範囲 0~9:スコアが高いほど脳卒中のリスクが高いことを示す)は4.3±1.3でした。
試験は独立データモニタリング委員会の勧告により早期に中止されました。
アスンデキサン投与群 | アピキサバン投与群 | ハザード比 (95%CI) | |
脳卒中または全身性塞栓症 | 98例(1.3%) | 26例(0.4%) | ハザード比 3.79 (2.46~5.83) |
大出血 | 17例(0.2%) | 53例(0.7%) | ハザード比 0.32 (0.18~0.55) |
脳卒中または全身性塞栓症は、アスンデキサン投与群98例(1.3%)、アピキサバン投与群26例(0.4%)に発生しました(ハザード比 3.79、95%信頼区間[CI] 2.46~5.83)。
大出血はアスンデキサン投与群17例(0.2%)、アピキサバン投与群53例(0.7%)で発生しました(ハザード比 0.32、95%CI 0.18~0.55)。
有害事象の発生率は両群で同程度でした。
コメント
バイエル社が開発中のXIa阻害薬アスンデキサンと、アピキサバン(商品名:エリキュース)との比較結果(OCEANIC-AF試験)が公表されました。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、脳卒中リスクを有する心房細動患者において、1日1回50mgのアスンデキサンによる治療は、試験が早期に中止されるまでの期間において、アピキサバンによる治療よりも脳卒中または全身性塞栓症の発生率が高いことが示されました。大出血リスクについては、アスンデキサンが明らかに少ないものの、脳卒中または全身性塞栓症の発生リスクが3倍以上高いことから、既存治療に劣っているといっても差し支えないでしょう。
残念ながら心房細動患者の1次予防においては、アスンデキサンは無効であり、バイエル社が試験中止を決定しています。一方、二次予防を目的としたOCEANIC-STROKE試験は継続するようです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、脳卒中リスクのある心房細動患者において、1日1回50mgのアスンデキサンによる治療は、試験が早期に中止されるまでの期間において、アピキサバンによる治療よりも脳卒中または全身性塞栓症の発生率が高かった。
根拠となった試験の抄録
背景:心房細動患者における直接作用型経口抗凝固薬による脳卒中予防は出血のリスクを伴うため、その使用は制限されている。活性化血液凝固第XI因子(XIa)阻害薬であるAsundexian(アスンデキサン)は、より少ない出血で脳卒中を予防できる可能性のある経口抗凝固薬である。
方法:第3相国際二重盲検試験において、心房細動を有する高リスク患者をアスンデキサン50mg1日1回投与群と標準用量アピキサバン投与群に1:1の割合でランダムに割り付けた。
有効性の主要目的は、脳卒中または全身性塞栓症の予防において、アスンデキサンがアピキサバンに対して少なくとも非劣性であるかどうかを判定することであった。
安全性の主要目的は、大出血イベントに関してアスンデキサンがアピキサバンより優れているかどうかを決定することであった。
結果:ランダムに割り付けられた14,810例がintention-to-treat集団に組み入れられた。患者の平均(±SD)年齢は73.9±7.7歳、35.2%が女性、18.6%が慢性腎臓病、18.2%が脳卒中または一過性脳虚血発作の既往、16.8%が経口抗凝固薬を6週間以上投与されておらず、平均CHA2DS2-VAScスコア(範囲 0~9:スコアが高いほど脳卒中のリスクが高いことを示す)は4.3±1.3であった。試験は独立データモニタリング委員会の勧告により早期に中止された。脳卒中または全身性塞栓症は、アスンデキサン投与群98例(1.3%)、アピキサバン投与群26例(0.4%)に発生した(ハザード比 3.79、95%信頼区間[CI] 2.46~5.83)。大出血はアスンデキサン投与群17例(0.2%)、アピキサバン投与群53例(0.7%)で発生した(ハザード比 0.32、95%CI 0.18~0.55)。有害事象の発生率は両群で同程度であった。
結論:脳卒中リスクのある心房細動患者において、1日1回50mgのアスンデキサンによる治療は、試験が早期に中止されるまでの期間において、アピキサバンによる治療よりも脳卒中または全身性塞栓症の発生率が高かった。この間、アスンデキシアンによる大出血イベントはアピキサバンよりも少なかった。
資金提供:Bayer社
試験登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT05643573、EudraCT番号 2022-000758-28
引用文献
Asundexian versus Apixaban in Patients with Atrial Fibrillation
Jonathan P Piccini et al. PMID: 39225267 DOI: 10.1056/NEJMoa2407105
N Engl J Med. 2024 Sep 1. doi: 10.1056/NEJMoa2407105. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39225267/
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