慢性腎臓病患者における便秘と末期腎不全リスクとの関連性は?(PSマッチコホート研究; BMC Nephrol. 2019)

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CKD患者における便秘は腎機能低下と関連するのか?

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、公衆衛生上の大きな問題となっています。

多くの危険因子が同定され、それぞれに応じた介入が行われましたが、末期腎疾患(end-stage renal disease, ESRD)の発生率は増加の一途をたどっており、アンメットニーズが高い領域であると考えられます。一方、他の危険因子が無視されている可能性もあることから更なる検証が求められています。

腸内細菌叢は重要な内因性臓器として認識されており、腎臓-腸軸(kidney-gut axis)は腸内細菌異常症の一因となり、CKDを悪化させるかもしれません。

CKDでよくみられる便秘は、腸内細菌異常症の臨床症状の1つです。しかし、便秘がCKDに及ぼす臨床的影響についてはまだ不明です。

そこで今回は、全国規模のデータベースにおいて、便秘を有するCKD患者と便秘を有さないCKD患者のESRDリスクを評価することを目的に実施されたデータベース研究の結果をご紹介します。

本研究では、台湾国民健康保険のデータベースから、2000年から2011年に新たにCKDと診断された症例のうち、便秘歴のない症例が抽出されました。後に便秘を発症した症例が便秘群でした。傾向スコアでマッチングされた便秘を有さない他の症例は非便秘群でした。

2013年末までの便秘の有無によるESRDの発生率とハザードについて、時間依存変数を用いたCox比例ハザードモデルにより比較されました。

試験結果から明らかになったことは?

便秘群
(/1,000人・年)
非便秘群
(/1,000人・年)
調整後ハザード比 aHR
(95%CI)
ESRD発症率22.9人12.2人aHR 1.90
1.60~2.27

1,000人・年当たりのESRD発症率は、便秘群22.9人、非便秘群12.2人でした。時間依存変数を用いたCox比例ハザードモデルでは、調整後ハザード比は1.90(95%CI 1.60~2.27)でした。

年間下剤使用日数ESRD発症リスクの調整後ハザード比 aHR
(95%CI)
vs. 便秘を有さないCKD患者
33日未満aHR 0.45(0.31~0.63
33~197日aHR 1.85(1.47~2.31
198日以上aHR 4.41(3.61~5.39

便秘を有さないCKD患者と比較して、年間下剤使用日数が33日未満、33~197日、198日以上のCKD患者の調整ハザード比は、それぞれ0.45(0.31~0.63)、1.85(1.47~2.31)、4.41(3.61~5.39)でした。

コメント

便秘を有するCKD患者において、腎機能低下と便秘の重症度が関連している可能性があります。しかし、実臨床における検証は充分に行われていません。

さて、台湾の傾向スコアマッチコホート研究の結果、新たにCKDと診断された患者集団において、便秘でない患者と比較して、新たに発生した便秘患者ではESRD発症リスクが高いことが観察されました。

さらに、便秘の重症度が高い(下剤の使用日数が多い)患者では、ESRD発症リスクがより高くなることが示唆されました。

あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、便秘の重症度によりESRD発症へ影響する程度が異なるようです。台湾以外の他の国や地域でも同様の結果が示されるのか、便秘を解消するための介入によりESRD発症リスクを低減できるのか、他の交絡因子は何か、など更なる検証が求められるところです。

続報に期待。

✅まとめ✅ 台湾の傾向スコアマッチコホート研究の結果、新たにCKDと診断された患者集団において、便秘でない患者と比較して、新たに発生した便秘患者ではESRD発症リスクが高いことが観察された。

根拠となった試験の抄録

背景:慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、公衆衛生上の大きな問題となっている。多くの危険因子が同定され、それに応じて介入が行われたが、末期腎疾患の発生率は増加の一途をたどっている。他の危険因子が無視されている可能性もある。腸内細菌叢は重要な内因性臓器として認識されている。腎臓-腸軸は腸内細菌異常症の一因となり、CKDを悪化させるかもしれない。CKDでよくみられる便秘は、腸内細菌異常症の臨床症状の1つである。便秘がCKDに及ぼす臨床的影響についてはまだ不明である。本研究では、全国規模のデータベースにおいて、便秘を有するCKD患者と便秘を有さないCKD患者のESRDリスクを評価することを目的とした。

方法:台湾国民健康保険のデータベースから、2000年から2011年に新たにCKDと診断された症例のうち、便秘歴のない症例を抽出した。後に便秘を発症した症例を便秘群とした。傾向スコアでマッチングされた便秘のない他の症例は非便秘群とした。
2013年末までの便秘の有無によるESRDの発生率とハザードを、時間依存変数を用いたCox比例ハザードモデルを用いて比較した。

結果:1,000人・年当たりのESRD発症率は、便秘群22.9人、非便秘群12.2人であった。時間依存変数を用いたCox比例ハザードモデルでは、調整後ハザード比は1.90(95%CI 1.60~2.27)であった。便秘のないCKD患者と比較して、年間下剤使用日数が33日未満、33~197日、198日以上のCKD患者の調整ハザード比は、それぞれ0.45(0.31~0.63)、1.85(1.47~2.31)、4.41(3.61~5.39)であった。

結論:新たにCKDと診断された患者集団において、便秘でない患者と比較して、新生便秘の患者ではESRD発症リスクが高いことが観察された。便秘がより重症であれば、そのリスクはさらに高まるであろう。

キーワード:慢性腎臓病、便秘、末期腎不全、腸内細菌叢、腎臓-腸軸

引用文献

Association of Constipation with risk of end-stage renal disease in patients with chronic kidney disease
Chung-Yen Lu et al. PMID: 31382927 PMCID: PMC6683335 DOI: 10.1186/s12882-019-1481-0
BMC Nephrol. 2019 Aug 5;20(1):304. doi: 10.1186/s12882-019-1481-0.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31382927/

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