軽度に駆出率が低下または維持された心不全におけるフィネレノンの効果はどのくらい?(DB-RCT; FINEARTS-HF試験; N Engl J Med. 2024)

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心不全(HFmrEF/HEpEF)患者に対するフィネレノン追加効果は?

ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の罹患率と死亡率を減少させることが示されています。一方、駆出率が軽度低下または維持された心不全(HFmrEF/HEpEF)患者における有効性は確立されていません。

そこで今回は、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンの心不全患者における有効性と安全性について検証した二重盲検ランダム化比較試験(FINEARTS-HF試験)の結果をご紹介します。

この国際二重盲検試験では、心不全で左室駆出率が40%以上の患者が1:1の割合でランダムに割り付けられ、通常の治療に加えてフィネレノン(最大用量20mgまたは40mgを1日1回)またはプラセボが投与されました。

本試験の主要アウトカムは、心不全悪化イベント(イベントとは、心不全による初回または再発の予定外の入院または緊急受診と定義)および心血管系の原因による死亡の複合でした。主要アウトカムの構成要素と安全性も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

フィネレノン群
(3,003例)
プラセボ群
(2,998例)
発生率比あるいはハザード比
(95%CI)
主要転帰イベント
(心不全悪化および心血管系死亡の複合)
624例に1,083件719例に1,283件発生率比 0.84
0.74~0.95
P=0.007
心不全悪化イベント842件1,024件発生率比 0.82
0.71~0.94
P=0.006
心血管系死亡イベント8.1%8.7%ハザード比 0.93
0.78~1.11

追跡期間中央値32ヵ月の間に、フィネレノン群では3,003例中624例に1,083件の主要転帰イベントが発生し、プラセボ群では2,998例中719例に1,283件の主要転帰イベントが発生しました(発生率比 0.84;95%信頼区間[CI] 0.74~0.95;P=0.007)。

心不全悪化イベントの総数は、フィネレノン群で842件、プラセボ群で1,024件でした(率比 0.82;95%信頼区間[CI] 0.71~0.94;P=0.006)。心血管系の原因で死亡した患者の割合はそれぞれ8.1%と8.7%でした(ハザード比 0.93;95%CI 0.78~1.11)。

フィネレノンは高カリウム血症のリスク増加と低カリウム血症のリスク減少と関連していた。

コメント

心不全は左室駆出率により、HFpEF、HFmrEF、HFrEFの3つに大別されます。患者予後が異なることから、個々に合った治療方法の確立が求められています。

ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は、ステロイド性、非ステロイド性の2つに分けられ、ホルモン関連の副作用の少ない非ステロイド性MR拮抗薬の使用量が増加しています。

さて、軽度の駆出率低下または駆出率維持の心不全患者において、フィネレノンはプラセボと比較して、心不全の総悪化イベントと心血管系の原因による死亡の複合の発生率を有意に低下させました。

既存治療としては、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB/ARNI、ループ利尿薬が約8割の患者で使用されていました。心不全治療における標準治療が行われているHFmrEF/HFpEF患者に対して、フィネレノン追加は更なる益をもたらすようです。

ただし、イベントの減少は主に心不全悪化(心不全による初回または再発の予定外の入院または緊急受診と定義)を予防したことに起因しています。心血管系を原因とする死亡、全死亡(HR 0.93、95%CI 0.83~1.06)ともに群間差がありません。

また、追跡期間中央値32ヵ月間の結果であり、比較的短期間の検証結果であることは念頭に置きたいところです。更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 軽度の駆出率低下または駆出率維持の心不全患者において、フィネレノンはプラセボと比較して、心不全の総悪化イベントと心血管系の原因による死亡の複合の発生率を有意に低下させた。

根拠となった試験の抄録

背景:ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の罹患率と死亡率を減少させるが、駆出率が軽度低下または維持された心不全(HFmrEF/HEpEF)患者における有効性は確立されていない。非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンの心不全患者における有効性と安全性に関するデータが必要である。

方法:この国際二重盲検試験では、心不全で左室駆出率が40%以上の患者を1:1の割合でランダムに割り付け、通常の治療に加えてフィネレノン(最大用量20mgまたは40mgを1日1回)またはプラセボを投与した。
主要アウトカムは、心不全悪化イベント(イベントとは、心不全による初回または再発の予定外の入院または緊急受診と定義)および心血管系の原因による死亡の複合とした。主要アウトカムの構成要素と安全性も評価された。

結果:追跡期間中央値32ヵ月の間に、フィネレノン群では3,003例中624例に1,083件の主要転帰イベントが発生し、プラセボ群では2,998例中719例に1,283件の主要転帰イベントが発生した(発生率比 0.84;95%信頼区間[CI] 0.74~0.95;P=0.007)。心不全悪化イベントの総数は、フィネレノン群で842件、プラセボ群で1,024件であった(率比 0.82;95%信頼区間[CI] 0.71~0.94;P=0.006)。心血管系の原因で死亡した患者の割合はそれぞれ8.1%と8.7%であった(ハザード比 0.93;95%CI 0.78~1.11)。フィネレノンは高カリウム血症のリスク増加と低カリウム血症のリスク減少と関連していた。

結論:軽度の駆出率低下または駆出率維持の心不全患者において、フィネレノンはプラセボと比較して、心不全の総悪化イベントと心血管系の原因による死亡の複合の発生率を有意に低下させた。

試験登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT04435626

引用文献

Finerenone in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction
Scott D Solomon et al. PMID: 39225278 DOI: 10.1056/NEJMoa2407107
N Engl J Med. 2024 Sep 1. doi: 10.1056/NEJMoa2407107. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39225278/

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