COVID-19ワクチンの副作用と長期中和抗体反応との関連性は?(前向きコホート研究; Ann Intern Med. 2024)

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副反応の発現と中和抗体反応との関連性は?

SARS-CoV-2ワクチン接種をためらう理由としては、副反応への懸念が一般的です。ワクチン接種後に発現する副反応は、免疫反応の一部として理解されており、中和抗体反応との関連性が示唆されています。

発熱、疲労、筋肉痛、関節痛などの全身反応は、全身的な免疫反応の一部として現れます。これらは、身体がウイルスに対する防御機構を構築する過程でみられる症状であり、ワクチン接種により中和抗体が形成される際の免疫反応の一部とされています。

したがって、ワクチン接種による副反応の発現リスクと、中和抗体反応とに関連性が示される可能性があるものの、充分に検証されていません。

そこで今回は、SARS-CoV-2メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種による短期間の副反応が、その後の中和抗体(neutralizing antibody, nAB)反応と関連するかどうかを明らかにすることを目的に実施された前向きコホート研究の結果をご紹介します。

本試験は、サンフランシスコ湾岸地域で実施されました。試験参加者は、SARS-CoV-2に対するワクチン接種を受けていない、またはSARS-CoV-2に暴露した成人が、BNT162b2またはmRNA-1273を2回接種されました。

評価項目は、2回目のワクチン接種1ヵ月後と6ヵ月後の血清nAB力価でした。各接種時の毎日の症状調査および客観的生体測定についても評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

症状関連解析には363名(女性65.6%;平均年齢52.4歳[SD 11.9])が、生体情報関連解析には147名(女性66.0%;平均年齢58.8歳[SD 5.3])が組み入れられました。

2回目接種後の悪寒、疲労感、気分不良、頭痛はそれぞれ、接種1ヵ月後と6ヵ月後のnAB値が1.4~1.6倍高くなることと関連していました。

症状数、ワクチン接種による皮膚温と心拍数の変化は、いずれの時点においてもnABと正の相関を示しました。

2回目接種後の皮膚温が1℃上昇するごとに、1ヵ月後のnABは1.8倍、6ヵ月後のnABは3.1倍上昇しました。

コメント

副反応の発現と中和抗体反応との関連性が報告されていますが、充分に検証されていません。

さて、米国のコホート研究の結果、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の短期的な全身性副反応は、長期にわたる中和抗体(nAB)反応と関連することが、自己報告と客観的生体計測の一致した所見から示されました。

想定される免疫反応メカニズムが、実臨床における評価で裏付けられたことになります。mRNAベースのCOVID-19ワクチン接種後に、中和抗体価の上昇、短期的な全身性副反応が引き起こされるようです。つまり、副反応はワクチン接種の効果が得られていることの “証” であることが明らかになったことになります。

副反応と聞くと、ついついネガティブな印象を抱いてしまいますが、血液検査をしなくともワクチン接種による免疫獲得を実感できることは有益であると考えられます。

ただし、本試験は観察研究であるため、自己報告型の評価項目にはバイアスが入り込みやすく、試験結果を割引いて捉えておく必要があります。また、他の国や地域、ワクチン接種回数、流行株などの異なる環境下では、同様の結果が認められるのかは不明です。更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 米国のコホート研究の結果、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の短期的な全身性副反応は、長期にわたる中和抗体反応と関連することが、自己報告と客観的生体計測の一致した所見から示された。

根拠となった試験の抄録

背景:SARS-CoV-2ワクチン接種をためらう理由としては、副反応への懸念が一般的である。

目的:SARS-CoV-2メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種による短期間の副反応が、その後の中和抗体(nAB)反応と関連するかどうかを明らかにすること。

試験デザイン:前向きコホート研究

試験設定:サンフランシスコ湾岸地域。

試験参加者:SARS-CoV-2に対するワクチン接種を受けていない、またはSARS-CoV-2に暴露した成人が、BNT162b2またはmRNA-1273を2回投与された。

測定:2回目のワクチン接種1ヵ月後と6ヵ月後の血清nAB力価。各投与時の毎日の症状調査および客観的生体測定。

結果:症状関連解析には363名(女性65.6%;平均年齢52.4歳[SD 11.9])が、生体情報関連解析には147名(女性66.0%;平均年齢58.8歳[SD 5.3])が組み入れられた。2回目接種後の悪寒、疲労感、気分不良、頭痛はそれぞれ、接種1ヵ月後と6ヵ月後のnAB値が1.4~1.6倍高くなることと関連していた。症状数、ワクチン接種による皮膚温と心拍数の変化は、いずれの時点においてもnABと正の相関を示した。2回目接種後の皮膚温が1℃上昇するごとに、1ヵ月後のnABは1.8倍、6ヵ月後のnABは3.1倍上昇した。

限界:本研究は2021年に一次ワクチンを接種した人を対象に行われたため、SARS-CoV-2ワクチン接種歴のある人や曝露歴のある人への一般化可能性は不明である。観察された関連性が、非祖先性SARS-CoV-2株に対する中和活性にも当てはまるかどうかも不明である。

結論:SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の短期的な全身性副反応は、長期にわたるnAB反応と関連することが、自己報告と客観的生体計測の一致した所見から示された。このことは、ワクチン接種の障壁となっているワクチンの副反応に対する否定的な態度に対処する上で、重要であると考えられる。

主な資金源:米国国立老化研究所(National Institute on Aging)

引用文献

COVID-19 Vaccine Side Effects and Long-Term Neutralizing Antibody Response : A Prospective Cohort Study
Ethan G Dutcher et al. PMID: 38857503 DOI: 10.7326/M23-2956
Ann Intern Med. 2024 Jun 11. doi: 10.7326/M23-2956. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38857503/

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