トイレットペーパーで拭くのは前後どちらが良いのか?
尿路感染症(UTI)の生涯罹患率は女性で50%以上である。尿路感染症の臨床的、生理的、生活習慣的な危険因子は多岐にわたりますが、トイレ後の肛門や会陰の衛生習慣、特にトイレットペーパーで拭く方向と尿路感染症の危険性との正確な関係はまだ調査されていません。
そこで今回は、一般集団におけるトイレ後の拭き方習慣と生涯の尿路結石イベントを横断的に調査した日本の研究をご紹介します。
2020年4月から2023年3月の間に日本の2施設の病院を受診した個人が最初に組み入れられました。トイレ後の清拭習慣と過去のUTIイベントに関する自己報告式の質問票で収集され、男女でその関係について調査されました。さらに、年齢によるサブグループ解析が行われ、年齢がこの関係に及ぼす影響について推定されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計294例(男性141例、女性153例)が参加に同意し、トイレ後の拭き方に関する質問に回答しました。
トイレ後の拭き方を前方から股の間から腕で行う人は、男性で32人(23%)、女性で68人(44%)でした。
生涯UTIの発生頻度は男性より女性の方が高いことが示されました(p<0.0001)。年齢と糖尿病の既往を調整したUTIイベントに対するトイレ後の前方からの腕による拭き取りの影響は、男女とも統計学的に有意ではありませんでした(いずれもp≧0.10)。一方、年齢層別に検討したところ、40~59歳の中年女性では、前方からの拭き癖とUTIは有意に関連していましたが、若年層および高齢層では関連していませんでした。
コメント
トイレ後にトイレットペーパーで拭く方向と、尿路感染症リスクとの関連性については充分に検証されていません。
さて、日本の横断研究の結果、約40〜50%の女性が、トイレ後の清拭を前方から行っていました。このトイレ後清拭習慣は、女性、特に40~59歳の中高年サブグループにおいて尿路感染症の潜在的リスクとなる可能性が示唆されました。
あくまでも相関関係が示されたに過ぎず、また横断研究であることから、再現性の検証が求められます。さらに、60歳以上において関連性が認められていないことも気にかかるところです。一般的には抵抗力は年齢が上がるほど低下することから、易感染性となるものと考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 日本の横断研究の結果、約40〜50%の女性が、トイレ後の清拭を前方から行っていた。このトイレ後清拭習慣は、女性、特に中高年のサブグループにおいて尿路感染症の潜在的リスクとなる可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
はじめに:尿路感染症(UTI)の生涯罹患率は女性で50%以上である。尿路感染症の臨床的、生理的、生活習慣的な危険因子は多岐にわたるが、トイレ後の肛門や会陰の衛生習慣、特にトイレットペーパーで拭く方向と尿路感染症の危険性との正確な関係はまだ調べられていない。そこで本研究では、一般集団におけるトイレ後の拭き方習慣と生涯の尿路結石イベントを横断的に調査した。
方法:2020年4月から2023年3月の間に日本の2つの病院を受診した個人を最初に募集した。トイレ後の清拭習慣と過去のUTIイベントに関する自己報告式の質問票を収集し、男女でその関係を調査した。さらに、年齢によるサブグループ解析を行い、年齢がこの関係に及ぼす影響を推定した。
結果:合計294例(男性141例、女性153例)が参加に同意し、トイレ後の拭き方に関する質問に回答した。トイレ後の拭き方を前方から股の間から腕で行う人は、男性で32人(23%)、女性で68人(44%)であった。生涯UTIの発生頻度は男性より女性の方が高かった(p<0.0001)。年齢と糖尿病の既往を調整したUTIイベントに対するトイレ後の前からの腕による拭き取りの影響は、男女とも統計学的に有意ではなかった(いずれもp≧0.10)。一方、年齢層別に検討したところ、40~59歳の中年女性では、前方からの拭き癖とUTIは有意に関連していたが、若年層および高齢層では関連していなかった。
結論:約40〜50%の女性が、トイレ後の清拭を股の間から腕を前に出して行っていた。このトイレ後清拭習慣は、女性、特に中高年のサブグループにおいてUTIの潜在的リスクとなる可能性が示唆された。
キーワード:トイレ後の拭き方、危険因子、トイレ習慣、尿路感染症、女性の健康
引用文献
Post-Toilet Wiping Style Is Associated With the Risk of Urinary Tract Infection in Women
Tetsuya Akaishi. PMID: 38738052 PMCID: PMC11088791 DOI: 10.7759/cureus.58107
Cureus. 2024 Apr 12;16(4):e58107. doi: 10.7759/cureus.58107. eCollection 2024 Apr.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38738052/
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