投与経路によりアセトアミノフェンの効果に違いがみられるのか?
アセトアミノフェンは、安全マージンが広く、安価であり、投与経路が複数あることから、小児集団における急性疼痛の治療に最もよく使用される薬剤です。しかし、投与経路による効果の違いについては充分に検証されていません。
そこで今回は、小児外科集団における術後の急性疼痛緩和のためのアセトアミノフェンの最も有効な投与経路を明らかにしようとしたメタ解析の結果をご紹介します。
あらゆる種類の外科手術を受けた生後30日~17歳の小児を対象とし、術後疼痛に対するアセトアミノフェンのさまざまな投与経路の鎮痛効果を評価したランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューが実施されました。
MEDLINE、CENTRAL、Embase、CINAHL、LILACs、およびGoogle Scholarのデータベースを対象に、開始時から2023年4月16日までに発表された試験が検索されました。
対象試験のバイアスリスク評価についてはCochrane Risk of Bias 1.0ツールが用いられました。ランダム効果モデルを用いて、頻出主義ネットワークメタ解析が行われました。
本研究の主要アウトカムは、検証済みの疼痛尺度を用いた術後疼痛でした。
試験結果から明らかになったことは?
2,344件の研究をスクリーニングし、829人が参加した14件の試験を解析に組み入れられました。0時間から2時間までの期間についてネットワークメタ解析が行われ、496人が参加した6件の試験が解析に含められました。
術後疼痛の平均値の差 (95%CI) | エビデンスの確実性 | |
静脈内投与 vs. 直腸投与 | 平均値の差 -0.28 (-0.62 ~ 0.06) | 非常に低い |
静脈内投与 vs. 経口投与 | 平均値の差 -0.60 (-1.20 ~ 0.01) | 低い |
経口経路 vs. 直腸経路 | 平均値の差 -0.88 (-1.44 ~ -0.31) | 低い |
アセトアミノフェンの静脈内投与 vs. 直腸投与(平均値の差 -0.28、95%信頼区間[CI] -0.62 ~ 0.06;エビデンスの確実性が非常に低い)、およびアセトアミノフェンの静脈内投与 vs. 経口投与(平均値の差 -0.60、95%CI -1.20 ~ 0.01;エビデンスの確実性が低い)の間に差を示すエビデンスはありませんでした。一方、経口経路と直腸経路の比較では、経口経路を支持するエビデンスが認められました(平均値の差 -0.88、95%CI -1.44 ~ -0.31;エビデンスの確実性が低い)。
吐き気と嘔吐の発生率 | |
経口経路 vs. 直腸経路 | 相対リスク 1.20 (95%CI 0.81~1.78) |
関心のある副次的アウトカムを報告した試験はほとんどありませんでした;吐き気と嘔吐の発生率で経口経路と直腸経路を比較した場合、差を示す証拠はありませんでした(相対リスク 1.20、95%CI 0.81~1.78)。
コメント
投与経路によりアセトアミノフェンの有効性・安全性に違いが生じるのかについて、充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験を対象としたメタ解析の結果、小児の術後疼痛に対するアセトアミノフェンの投与経路の影響に関する利用可能な証拠は非常に不確実であることが示されました。対象となった症例数、試験数が限られていることから、致し方ない結果であると考えられます。
また、術後疼痛コントロールと術後嘔吐の転帰は、経口経路と直腸経路でほとんど変わらない可能性が示されました。
まだまだ検証が求められる分野ではありますが、アセトアミノフェンの有効性・安全性について投与経路による明確な差は示されていません。患者の状態、置かれた状況について、投与方法を選択すれば良さそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたメタ解析の結果、小児の術後疼痛に対するアセトアミノフェンの投与経路の影響に関する利用可能な証拠は非常に不確実である。術後疼痛コントロールと術後嘔吐の転帰は、経口経路と直腸経路でほとんど変わらない可能性がある。
根拠となった試験の抄録
目的:アセトアミノフェンは、安全マージンが広く、安価であり、投与経路が複数あることから、小児集団における急性疼痛の治療に最もよく使用される薬剤である。われわれは、小児外科集団における術後の急性疼痛緩和のためのアセトアミノフェンの最も有効な投与経路を明らかにしようとした。
方法:あらゆる種類の外科手術を受けた生後30日~17歳の小児を対象とし、術後疼痛に対するアセトアミノフェンのさまざまな投与経路の鎮痛効果を評価したランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューを実施した。MEDLINE、CENTRAL、Embase、CINAHL、LILACs、およびGoogle Scholarのデータベースから、開始時から2023年4月16日までに発表された試験を検索した。Cochrane Risk of Bias 1.0ツールを用いて、対象研究のバイアスリスクを評価した。ランダム効果モデルを用いて、頻出主義ネットワークメタ解析を行った。
主要アウトカムは、検証済みの疼痛尺度を用いた術後疼痛とした。
結果:2,344件の研究をスクリーニングし、829人が参加した14件の試験を解析に組み入れた。0時間から2時間までの期間についてネットワークメタ解析を行い、496人が参加した6件の試験を解析に含めた。アセトアミノフェンの静脈内投与 vs. 直腸投与(平均値の差 -0.28、95%信頼区間[CI] -0.62 ~ 0.06;エビデンスの確実性が非常に低い)、およびアセトアミノフェンの静脈内投与 vs. 経口投与(平均値の差 -0.60、95%CI -1.20 ~ 0.01;エビデンスの確実性が低い)の間に差を示すエビデンスはなかった。経口経路と直腸経路の比較では、経口経路を支持するエビデンスが認められた(平均値の差 -0.88、95%CI -1.44 ~ -0.31;エビデンスの確実性が低い)。関心のある副次的アウトカムを報告した試験はほとんどなかった;吐き気と嘔吐の発生率で経口経路と直腸経路を比較した場合、差を示す証拠はなかった(相対リスク 1.20、95%CI 0.81~1.78)。
結論:小児の術後疼痛に対するアセトアミノフェンの投与経路の影響に関する利用可能な証拠は非常に不確実である。術後疼痛コントロールと術後嘔吐の転帰は、経口経路と直腸経路でほとんど変わらない可能性がある。この重要な臨床的疑問を解決するためには、より適切にデザインされ実施されたRCTが必要である。
試験登録:PROSPERO(CRD42021286495)、初回登録:2021年11月19日
キーワード:アセトアミノフェン、小児、メタ解析、疼痛、術後、薬剤投与経路
引用文献
Efficacy of different routes of acetaminophen administration for postoperative pain in children: a systematic review and network meta-analysis
Danilo Osorio et al. PMID: 38622469 DOI: 10.1007/s12630-024-02760-y
Can J Anaesth. 2024 Apr 15. doi: 10.1007/s12630-024-02760-y. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38622469/
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