RSV感染で入院した高齢者における急性心臓イベントの発生頻度は?(横断研究; RSV-NET; JAMA Intern Med. 2024)

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RSV感染による心血管イベントの発生リスクはどのくらいか?

呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory syncytial virus, RSV)感染は高齢者に重篤な呼吸器疾患を引き起こす可能性があります。また、RSV疾患により心臓合併症が引き起こされる可能性がありますが、インフルエンザやSARS-CoV-2感染の合併症と比較して、充分に検証されていません。

そこで今回は、RSV感染症の50歳以上の成人における入院中の急性心イベントの有病率と重症度を明らかにすることを目的に実施された横断研究の結果をご紹介します。

この横断研究は、RSV入院サーベイランスネットワーク(RSV Hospitalization Surveillance Network)のサーベイランスデータを分析したもので、臨床医主導の検査室検査によりRSV感染が検出された入院患者の詳細なカルテ抽出が行われました。5回のRSVシーズン(2014~2015年、2017~2018年、2022~2023年まで毎年)にわたる12州内の50歳以上の成人におけるRSV感染症例が調査され、急性心イベントの加重期間有病率および95%CIが推定されました。

国際疾病分類第9版(International Classification of Diseases, 9th Revision, Clinical Modification)または国際疾病統計分類第10版(International Statistical Classification of Diseases, 10th Revision, Clinical Modification)の退院コード、および退院時要約レビューにより急性心イベントが同定されました。

本研究では、集中治療室(ICU)入室、侵襲的人工呼吸器装着、院内死亡を含む重症疾患の転帰が評価されました。調整リスク比(ARR)を算出することで、急性心イベントの有無による重症転帰が比較されました。

試験結果から明らかになったことは?

本研究では、検査でRSV感染が確認された入院成人6,248例(年齢中央値 72.7、IQR 63.0〜82.3歳;女性 59.6%;基礎心血管疾患を有する患者 56.4%)が対象となりました。

RSV感染が確認された入院成人における有病率
心臓イベント22.4%(95%CI 21.0~23.7
急性心不全15.8%(95%CI 14.6~17.0
急性虚血性心疾患7.5%(95%CI 6.8~8.3
高血圧クリーゼ1.3%(95%CI 1.0~1.7
心室頻拍1.1%(95%CI 0.8~1.4
心原性ショック0.6%(95%CI 0.4~0.8

心臓イベントを経験する有病率の加重推定値は22.4%(95%CI 21.0~23.7)でした。加重推定有病率は、急性心不全 15.8%(95%CI 14.6~17.0)、急性虚血性心疾患 7.5%(95%CI 6.8~8.3)、高血圧クリーゼ1.3%(95%CI 1.0~1.7)、心室頻拍 1.1%(95%CI 0.8~1.4)、心原性ショック 0.6%(95%CI 0.4~0.8)でした。

心血管疾患の基礎疾患を有する成人有さない成人調整リスク比 ARR
(95%CI)
急性心イベント33.0%8.5%ARR 3.51
2.85〜4.32

心血管疾患の基礎疾患を有する成人は、有さない成人と比較して急性心イベントを経験するリスクが高いことが示されました(33.0% vs. 8.5%;ARR 3.51、95%CI 2.85〜4.32)。

RSV感染で入院した成人のうち、18.6%がICU入室を必要とし、4.9%が入院中に死亡しました。

急性心イベント既往既往なし調整リスク比 ARR
(95%CI)
ICU入室25.8%16.5%ARR 1.54
1.23〜1.93
院内死亡8.1%4.0%ARR 1.77
1.36〜2.31

急性心イベントを経験していない患者と比較して、急性心イベントを経験した患者では、ICU入室(25.8% vs. 16.5%;ARR 1.54、95%CI 1.23〜1.93)および院内死亡(8.1% vs. 4.0%;ARR 1.77、95%CI 1.36〜2.31)のリスクが高いことが示されました。

コメント

感染症により、心疾患リスクが増加することが報告されており。具体的にはインフルエンザや新型コロナウイルスが挙げられます。一方、RSウイルスについては、あまり知られていません。

さて、5シーズンにわたる横断研究の結果、RSV感染で入院した50歳以上の成人のほぼ4分の1が急性心イベント(最も頻度が高かったのは急性心不全)を経験しており、その中には心血管疾患の基礎疾患のない成人の12人に1人(8.5%)が含まれていました。

RSウイルス感染によっても、心疾患イベントのリスクが増加することが明らかとなりました。今後、RSワクチンにより、RSウイルスの感染リスクだけでなく、心疾患リスクについてもリスクを低減できるのか注目したいところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 5シーズンにわたる横断研究の結果、RSV感染で入院した50歳以上の成人のほぼ4分の1が急性心イベント(最も頻度が高かったのは急性心不全)を経験しており、その中には心血管疾患の基礎疾患のない成人の12人に1人(8.5%)が含まれていた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory syncytial virus, RSV)感染は高齢者に重篤な呼吸器疾患を引き起こす可能性がある。RSV疾患の心臓合併症については、インフルエンザやSARS-CoV-2感染の合併症に比べてあまり知られていない。

目的:RSV感染症の50歳以上の成人における入院中の急性心イベントの有病率と重症度を明らかにすること。

試験デザイン、設定、参加者:この横断研究は、RSV入院サーベイランスネットワーク(RSV Hospitalization Surveillance Network)のサーベイランスデータを分析したもので、臨床医主導の検査室検査によりRSV感染が検出された入院患者の詳細なカルテ抽出を行っている。5回のRSVシーズン(2014~2015年から2017~2018年、2022~2023年まで毎年)にわたる12州内の50歳以上の成人におけるRSV感染症例を調査し、急性心イベントの加重期間有病率および95%CIを推定した。

曝露:国際疾病分類第9版(International Classification of Diseases, 9th Revision, Clinical Modification)または国際疾病統計分類第10版(International Statistical Classification of Diseases, 10th Revision, Clinical Modification)の退院コード、および退院時要約レビューにより同定された急性心イベント。

主な転帰と測定:集中治療室(ICU)入室、侵襲的人工呼吸器装着、院内死亡を含む重症疾患の転帰。調整リスク比(ARR)を算出し、急性心イベントの有無による重症転帰を比較した。

結果:本研究では、検査でRSV感染が確認された入院成人6,248例(年齢中央値 72.7、IQR 63.0〜82.3歳;女性 59.6%;基礎心血管疾患を有する患者 56.4%)を対象とした。心臓イベントを経験する有病率の加重推定値は22.4%(95%CI 21.0~23.7)であった。加重推定有病率は、急性心不全15.8%(95%CI 14.6~17.0)、急性虚血性心疾患 7.5%(95%CI 6.8~8.3)、高血圧クリーゼ1.3%(95%CI 1.0~1.7)、心室頻拍 1.1%(95%CI 0.8~1.4)、心原性ショック 0.6%(95%CI 0.4~0.8)であった。心血管疾患の基礎疾患を有する成人は、有さない成人と比較して急性心イベントを経験するリスクが高かった(33.0% vs. 8.5%;ARR 3.51、95%CI 2.85〜4.32)。RSV感染で入院した成人のうち、18.6%がICU入室を必要とし、4.9%が入院中に死亡した。急性心イベントを経験していない患者と比較して、急性心イベントを経験した患者では、ICU入室(25.8% vs. 16.5%;ARR 1.54、95%CI 1.23〜1.93)および院内死亡(8.1% vs. 4.0%;ARR 1.77、95%CI 1.36〜2.31)のリスクが高かった。

結論と関連性:5シーズンにわたるこの横断研究では、RSV感染で入院した50歳以上の成人のほぼ4分の1が急性心イベント(最も頻度が高かったのは急性心不全)を経験しており、その中には心血管疾患の基礎疾患のない成人の12人に1人(8.5%)が含まれていた。重症転帰のリスクは、急性心イベントを経験しなかった患者と比較して、急性心イベントを経験した患者で約2倍高かった。これらの知見により、RSVワクチンが使用可能になる前の、RSV感染による潜在的な心臓合併症の基本疫学が明らかになった。

引用文献

Acute Cardiac Events in Hospitalized Older Adults With Respiratory Syncytial Virus Infection
Rebecca C Woodruff et al. PMID: 38619857 DOI: 10.1001/jamainternmed.2024.0212
JAMA Intern Med. 2024 Apr 15. doi: 10.1001/jamainternmed.2024.0212. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38619857/

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