アロプリノールは肝硬変関連合併症を予防できるのか?
肝硬変とは、B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に炎症が生じ、その炎症を修復するときにできる線維増加が肝臓全体に拡がった状態のことです。肝硬変では、腹水や食道静脈瘤、肝性脳症や黄疸、こむらがえりなどが問題となります。このように肝硬変に伴う合併症は様々であり、致命的となる可能性もありますが、肝硬変に対する治療の選択肢が限られていることから新たな治療戦略の立案が求められています。
競合的キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるアロプリノールは、門脈圧亢進症モデル動物において、酸化ストレスを軽減し、細菌移行を弱めることが報告されています。これは、粘膜細胞に対する酸素由来のフリーラジカルと過酸化の有害な影響が、フリーラジカルスカベンジャー(除去剤)によって打ち消される可能性があることを示唆しています。事実、2007年に行われたパイロット研究では、肝硬変患者に対するアロプリノール使用が酸化ストレスの有意ば減少と関連していることが示されましたが、腸の透過性と炎症マーカーには影響しないことが示されました。ただし、研究期間が10日間であったことから、より長期間にわたる質の高い研究が求められています。
そこで今回は、肝硬変関連合併症の再発予防におけるアロプリノールの効果を検証した四重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本研究では、肝硬変患者100例を1:1の割合でランダムに割り付け、アロプリノール300mgまたはプラセボ錠を1日1回6ヵ月間投与しました。
本研究の主要エンドポイントは肝硬変関連合併症(顕性腹水、自然発症細菌性腹膜炎、静脈瘤出血、肝腎症候群、肝性脳症)の発症率でした。
試験結果から明らかになったことは?
(アロプリノール投与6ヵ月後) | ハザード比 HR (95%信頼区間 CI) |
肝硬変関連合併症の発症 (顕性腹水、自然発症細菌性腹膜炎、静脈瘤出血、肝腎症候群、肝性脳症) | HR 0.44 (0.27〜0.62) p<0.001 |
顕性腹水 | HR 0.33 (0.0098〜0.94) p=0.039 |
自然発症細菌性腹膜炎 | HR 0.25 (0.05〜0.76) p=0.01 |
肝腎症候群 | HR 0.2 (0.04〜0.87) p=0.033 |
アロプリノール投与6ヵ月後では、登録後に初めて経験した合併症の相対リスク(RR)が56%減少しました[ハザード比(HR) 0.44、95%信頼区間(CI) 0.27〜0.62);p<0.001]。
アロプリノールは、顕性腹水のRRを67%減少させ[HR 0.33(0.0098〜0.94);p=0.039]、自然発症細菌性腹膜炎のRRを約75%減少させ増した[HR 0.25(0.05〜0.76);p=0.01]。同様に、アロプリノールは肝腎症候群の発症RRを80%減少させました[HR 0.2(0.04〜0.87);p=0.033]。
コメント
肝硬変に対する治療方法の立案が求められています。これまでにアトルバスタチンやアロプリノールが患者予後を改善する可能性を示していますが、充分に検証されているとは言えません。
さて、四重盲検ランダム化比較試験の結果、肝硬変患者におけるアロプリノールは肝硬変関連合併症全体の再発を有意に減少させました。
有料文献であるため、批判的吟味が充分に行えていませんので、本試験結果の有効性は割引いて捉えた方が良いと考えられます。
とはいえ、期待の持てる結果です。より大規模かつ長期にわたる研究の実施が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 四重盲検ランダム化比較試験の結果、肝硬変患者におけるアロプリノールは肝硬変関連合併症全体の再発を有意に減少させた。
根拠となった試験の抄録
背景:肝硬変に伴う合併症は様々であり、致命的となる可能性もある。肝硬変に対する治療の選択肢は限られている。そこで本研究では、肝硬変関連合併症の再発予防におけるアロプリノールの使用を検討することを目的とした。
方法:肝硬変患者100例を1:1の割合でランダムに割り付け、アロプリノール300mgまたはプラセボ錠を1日1回6ヵ月間投与した。
主要エンドポイントは肝硬変関連合併症(顕性腹水、自然発症細菌性腹膜炎、静脈瘤出血、肝腎症候群、肝性脳症)の発症率とした。
結果:アロプリノール投与6ヵ月後では、登録後に初めて経験した合併症の相対リスク(RR)が56%減少した[ハザード比(HR) 0.44、95%信頼区間(CI) 0.27〜0.62);p<0.001]。アロプリノールは、顕性腹水のRRを67%減少させ[HR 0.33(0.0098〜0.94);p=0.039]、SBPのRRを約75%減少させた[HR 0.25(0.05〜0.76);p=0.01]。同様に、アロプリノールは肝硬変関連合併症の発症のRRを80%減少させた[HR 0.2(0.04〜0.87);p=0.033]。
結論:アロプリノールは肝硬変関連合併症全体の再発を有意に減少させた。したがって、アロプリノールは肝硬変患者にとって有望な薬剤となりうる。このような良好な結果は、細菌の移動と炎症を抑制するアロプリノールの能力の結果である可能性がある。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov NCT05545670
キーワード:アロプリノール、腹水、肝硬変、代償不全
引用文献
Allopurinol Prevents Cirrhosis-Related Complications: A Quadruple Blind Placebo-Controlled Trial
Khadija A M Glal et al. PMID: 37832758 DOI: 10.1016/j.amjmed.2023.09.016
Am J Med. 2023 Oct 11:S0002-9343(23)00607-1. doi: 10.1016/j.amjmed.2023.09.016. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37832758/
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