小児の非特異的な急性咳嗽に対する “はちみつミルク” の効果は?
はちみつは、オーストラリアのガイドラインで小児の非特異的な急性咳嗽に推奨されています。
これまで実施されたランダム化比較試験では、はちみつを夕方1回摂取した場合の鎮咳効果は評価されていますが、複数回摂取した場合の効果は検討されていません。
そこで今回は、イタリアで最も処方されている市販(OTC)の鎮咳薬であるデキストロメトルファン(中枢性鎮咳薬)またはレボドロプロピジン(末梢性鎮咳薬)と比較して、小児の非特異的な急性咳嗽に対する野草ハチミツの効果を評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験では、非特異的な急性咳嗽に苦しむ134例の小児をランダムに割り付け、その後3晩、牛乳(90mL)と野草ハチミツ(10mL)の混合液、または年齢に応じて調整した量のデキストロメトルファンまたはレボドロプロピジンが投与されました。
有効性は保護者が回答した咳のアンケートによって評価されました。一次エンドポイントは治療成功でした。その後の評価は、ベースライン値と比較して治療後に咳嗽アンケートのスコアが50%以上減少した場合と定義されました。
試験結果から明らかになったことは?
親がアンケートに回答しなかったため、3例ハチミの小児が研究から除外されました。
ハチミツ+ミルク群 | OTC鎮咳薬群 | |
治療成功 (非特異的な急性咳嗽の治療成功) | 80% | 87% (p=0.25) |
治療成功率は、ハチミツ+ミルク群で80%、OTC鎮咳薬群で87%でした(p=0.25)。
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ハチミツは鎮咳作用を有していることが報告されていますが、複数回投与した場合の効果検証は充分に行われていません。
さて、非盲検のランダム化比較試験の結果、ミルクとハチミツの混合は、小児の非特異的な急性咳嗽に対して、少なくともデキストロメトルファン(中枢性鎮咳薬)やLevodropropizine(末梢性鎮咳薬)と同等の効果があることが示されました。
倫理的な側面からか、プラセボとの比較は行われていないことから、ハチミツ+ミルクの鎮咳作用の程度については他の試験結果を参照する必要があります。また、今回の試験は非盲検かつアンケート調査の結果のみで評価していることから、ややバイアスが入り込みやすい結果であると考えられます。なかなか難しいところではありますが、客観的な評価も行い、総合的に判断した方がより堅牢な結果になると考えられます。
とはいえ、鎮咳薬の副作用を考慮すると、1歳以上であれば、まずはハチミツを試してみる価値は有馬そうです。特に昨今では、鎮咳薬の流通が充分ではないこともあり、代替できるものが求められています。
鎮咳薬そのものの効果については疑義が生じていますが、その話はまた今度。
続報に期待。
✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、ミルク+ハチミツの3日間投与は、小児の非特異的な急性咳嗽に対して、少なくともデキストロメトルファンやLevodropropizineと同等の効果があるようである。
根拠となった試験の抄録
背景:はちみつは、オーストラリアのガイドラインで小児の非特異的な急性咳嗽に推奨されている。現在実施されているランダム化比較試験では、はちみつを夕方1回摂取した場合の効果は評価されているが、複数回摂取した場合の効果は検討されていない。
目的:イタリアで最も処方されている市販の鎮咳薬であるデキストロメトルファンまたはレボドロプロピジンと比較して、小児の非特異的な急性咳嗽に対する野草ハチミツの効果を評価する。
方法:非特異的な急性咳嗽に苦しむ134例の小児をランダムに割り付け、その後3晩、牛乳(90mL)と野草ハチミツ(10mL)の混合液、または年齢に応じて調整した量のデキストロメトルファンまたはレボドロプロピジンを投与した。有効性は保護者が回答した咳のアンケートによって評価された。一次エンドポイントは治療成功とした。その後の評価は、ベースライン値と比較して治療後に咳嗽アンケートのスコアが50%以上減少した場合と定義した。
結果:親がアンケートに回答しなかったため、3例ハチミの小児が研究から除外された。治療成功率は、ハチミツ+ミルク群で80%、OTC鎮咳薬群で87%であった(p=0.25)。
結論:ミルクとハチミツの混合は、小児の非特異的な急性咳嗽に対して、少なくともデキストロメトルファンやレボドロプロピジンと同等の効果があるようである。これらの結果は、プラセボ効果を完全に排除することはできないにしても、小児の咳嗽に対する蜂蜜の健康効果を報告した先行研究と一致している。
キーワード:急性咳嗽、小児、デキストロメトルファン、蜂蜜 honey、Levodropropizine
引用文献
Effect of multiple honey doses on non-specific acute cough in children. An open randomised study and literature review
S Miceli Sopo et al. PMID: 25201759 DOI: 10.1016/j.aller.2014.06.002
Allergol Immunopathol (Madr). 2015 Sep-Oct;43(5):449-55. doi: 10.1016/j.aller.2014.06.002. Epub 2014 Sep 6.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25201759/
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