背景
数年おきに出荷調整がかかるアダプチノール®️(ヘレニエン)。網膜色素変性症に対する効果はどのくらいなのか調べていたらニバジール®️(ニルバジピン)による効果を検討している論文をみつけることができたため早速読んでみた。Effect of nilvadipine on central visual field in retinitis pigmentosa: a 30-month clinical trial.
Randomized controlled trialNakazawa M, et al. Ophthalmologica. 2011.
PMID: 20948238
目的網膜色素変性(retinitis pigmentosa, RP)における中心視野欠損の進行に対するニルバジピンの効果を評価すること。
デザイン前向き、ランダム化、オープンラベル、単一施設試験。
方法RP患者をランダムに4mg /日の経口ニルバジピンを投与した群、300mg /日のニコチン酸トコフェロール、15mg /日のヘレニエン、または同期間の投薬を受けていない対照群に振り分けた。 RPの進行はハンフリービジュアルフィールドアナライザの10-2 SITA Fast Programを用いて評価し、平均偏差(MD slope)の時間経過から算出した回帰係数を群間で比較した。
結果治療群の19例および対照群の14例の患者は、30ヵ月以上の経過観察を完了した。 観察期間の平均(±標準偏差)は、治療群については48.8±11.8ヶ月(中央値48ヶ月、範囲30〜66ヶ月)であり、対照群については49.2±18.1ヶ月(中央値48ヶ月間、範囲30〜90ヶ月) (p = 0.94)。 最初の30ヶ月間の平均MD値の平均回帰係数(±標準誤差)は、処置群で-0.35±0.17dB /年、対照群で-0.75±0.06dB /年であった(p < 0.01)。 全観察期間の平均(±SEM)MD勾配は、処置群で-0.49±0.17dB /年であり、対照群で-0.89±0.16dB /年であった(平均±SEM、p = 0.042)。
結論4mg /日のニルバジピンは、小規模な本研究において、RPにおける中心視野欠損の進行を有意に遅延させた。
ちなみにRCTのシステマティックレビュー論文もみつけられたので読んでみました。
Systematic Review of Randomized Clinical Trials on Safety and Efficacy of Pharmacological and Nonpharmacological Treatments for Retinitis Pigmentosa.
Review articleSacchetti M, et al. J Ophthalmol. 2015.
PMID: 26339504
結果の一部を抜粋; 19件のRCTが含まれた。高圧酸素送達、局所ブリモニジン酒石酸、ビタミン類、ドコサヘキサエン酸、ガングリオシド、ルテイン、経口ニルバジピン、毛様体神経栄養因子、及びバルプロ酸について検討した試験だった。 全ての治療は安全であることが証明されたが、視覚機能に大きな利点は示さなかった。ビタミンAを長期間補充すると、網膜電図の振幅が著しく遅く低下した。網膜色素変性症に対する薬剤効果について検討した結果、2015年時点における有効な治療薬はなかった。 個々の研究をみてみると、ヘレニエンよりはビタミンAやニルバジピンの方が網膜色素変性症に伴う視野欠損の進行抑制に対し効果がありそう。ちなみに私の周囲では、ヘレニエンからの切り替えはビタミンB12のメチコバール®️(メコバラミン)一択のようです。 個々の研究規模が小さく、またサンプルサイズ等の計算はされていないため、眉唾である可能性も考慮した方が良いと考えられますが、ヘレニエン以外の他の治療法を望む方にはビタミンAあるいは血圧によってはニルバジピンを勧めてみようかな。 わざわざ “有効な治療法はないですね” と伝える必要はないですよね。少しでも効果があるなら試してみたくなる人もいるでしょうし,確実ではないなら実施しない方もいると思います(当たり前なことですね💦) 視力については少しでも患者さんに希望を持って欲しい。ここの部分は自己満足かもしれませんね。]]>コメント
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