心血管疾患一次予防のためにポリピル療法にアスピリンを併用した方が良いですか?(HOPE-3、TIPS-3、PolyIran; 個人データのメタ解析; Heart. 2023)

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2種類以上の降圧薬とスタチンによるポリピル療法の効果はどのくらいか?さらにアスピリンを併用した方が良いのか?

心血管疾患は、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの基礎疾患あるいは合併症併発により発生リスクが増加することが報告されています。それぞれの疾患に対して治療薬を使用することと比較して、1つの錠剤に各成分を配合した治療薬(ポリピル)を使用することで、服薬コンプライアンス(アドヒアランス)が向上することも報告されています。しかし、患者予後に関する検証は充分ではありません。

そこで今回は、HOPE-3、TIPS-3、PolyIran、3つの一次予防ランダム化比較試験の個人参加者データを用いて、異なる年齢層における固定用量配合薬(ポリピル)の心血管アウトカムに対する効果を評価したメタ解析の結果をご紹介します。

本解析では、中等度リスク(フラミンガム心血管系リスクスコアの10年平均:17.7%)の参加者を、2種類以上の降圧薬とスタチンからなるポリピルとアスピリン併用または非併用、あるいはそれぞれの対象群にランダムに割り付けられ、5年間フォローアップされました。年齢層は60歳未満、60~65歳、65歳以上でした。

本試験の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合でした。Cox比例ハザード比(HR)と95%CIは、各年齢群において計算されました。

試験結果から明らかになったことは?

ポリピル群対照群ハザード比 HR
(95%CI)
主要転帰
心血管死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合
3.3%5.2%HR 0.63
0.54~0.74
 60〜64歳HR 0.57
0.47~0.70)
NNT=53
 65歳以上HR 0.57
0.47~0.70)
NNT=33

主要転帰のリスクは、18,162例の総集団において37%(ポリピル 3.3% vs. 対照 5.2%:HR 0.63、95%CI 0.54~0.74) 減少し、高齢群(60~65歳:HR 0.58、95%CI 0.42~0.78、65歳以上:HR 0.57、95%CI 0.47~0.70) でより大きな効果があり、1件の主要転帰を避けるための必要治療人数も同様でした(それぞれ53、33)。

主要転帰のリスクは、アスピリンを含むポリピル投与群(n=8,951)では54%と54%、アスピリンを含まない投与群(n=12,061)では34%と38%、それぞれ最も高齢の2群で減少しました。

ポリピルの副作用で最も頻度の高かった”めまい”は、65歳未満の参加者でより高いことが明らかとなりました。アスピリンは、重大な出血リスクの過剰とは関連していませんでした。

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2種類以上の降圧薬とスタチンの各固定用量からなるポリピルとアスピリン併用または非併用による患者予後への影響についてはデータが限られています。

さて、ランダム化比較試験3件の患者個人データを用いたメタ解析の結果、中等度の心血管リスクを有する参加者(フラミンガム心血管系リスクスコアの10年平均:17.7%)において、2種類以上の降圧薬とスタチンからなるポリピル療法は60歳以上の高齢者においてより大きな心血管ベネフィットをもたらしました。アスピリン併用でより大きなベネフィットが得られる可能性が示されましたが、その効果は大きくないようです。

患者の状態に合わせて治療用量をフレキシブルに調整するよりも、さまざまな薬剤の固定用量をひとまとめにし服薬アドヒアランスを向上させる方が、患者予後への影響は大きいようです。

ただし、ランダム化比較試験は実臨床と異なり、より手厚くフォローされることから、本試験結果を一般化するには限界があると考えられます。患者予後への影響は本試験結果よりも小さくなると推察されます。

どのような患者でポリピル療法のベネフィットが最大化するのか、実臨床における効果はどのくらいなのか検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 中等度の心血管リスクを有する参加者において、2種類以上の降圧薬とスタチンからなるポリピル療法は高齢者においてより大きな心血管ベネフィットをもたらし、アスピリン併用でより大きなベネフィットが得られるかもしれない。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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