SGLT2iによるfirst dipの程度は併用薬により異なるのか?
2型糖尿病患者において、ナトリウム・グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT2i)の使用初期にfirst dipと呼ばれる推定糸球体濾過量(eGFR)の低下が認められます。このeGFR低下とAKIなど腎アウトカムとの関連性、また併用薬による影響については結論が得られていません。
そこで今回は、背景薬がSGLT2iのeGFRおよび腎臓の転帰に対する効果に影響を与えるかどうかを明らかにしたデータベース研究の結果をご紹介します。
本試験では、台湾の多施設医療施設の医療データを使用し、2016年6月1日から2018年12月31日までにSGLT2i治療を受けた10,071例の患者が対象となりました。特定の背景薬の使用 vs. 不使用の直接比較は、傾向スコアマッチングによりベースライン特性を調整した後に実施されました。患者は、複合腎臓アウトカム(血清クレアチニン値の2倍上昇または末期腎臓病の発症)の発生について、死亡または試験期間の終了まで追跡調査されました。
試験結果から明らかになったことは?
SGLT2i投与開始後、平均治療期間8.1±3.1週間までの間、ベースラインからeGFR first dipが初期平均-2.72(SE 0.10)mL/min/1.73m2の減少を示しました。eGFRの軌跡は、SGLT2i治療後24週間で安定し、平均(SE)傾斜は-1.36(SE 0.25)mL/min/1.73m2/年でした。
薬剤を使用しない場合と比較して、背景薬のレニン-アンジオテンシン阻害薬(n=2,073)、チアジド系利尿薬(n=1,764)、ループ利尿薬(n=708)、フェノフィブラート(n=1,043)、キサンチンオキシダーゼ阻害薬(n=264)、インスリン(n=1,656)の使用はeGFR初期低下と大きく関連しており、バックグラウンドのメトホルミン治療(n=827)はSGLT2i治療後のeGFR初期低下の小ささと関連していました。
併用薬 | ハザード比[HR] (95%信頼区間[CI]) |
レニン・アンジオテンシン阻害薬 | HR 0.61 (0.40〜0.95) |
ループ利尿薬 | HR 1.88 (1.19〜2.96) |
SGLT2i治療中の長期複合腎臓アウトカムと関連する薬剤は、レニン・アンジオテンシン阻害薬(ハザード比[HR] 0.61、95%信頼区間[CI] 0.40〜0.95)およびループ利尿薬(HR 1.88、95%CI 1.19〜2.96)だけでした。
コメント
糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の使用により、”first dip”と呼ばれるeGFRの初期低下が報告されています。このfirst dipに対する併用薬への影響については検証されていませんでした。
さて、本試験結果によれば、いくつかの背景薬は、SGLT2i開始後の最初のeGFR dipと関連していました。レニン-アンジオテンシン系阻害剤が良好な複合腎アウトカム(血清クレアチニン値の2倍上昇または末期腎臓病の発症)と関連しましたが、ループ利尿薬はアウトカムの悪化と関連していました。ただし、あくまでも相関が示されたに過ぎません。
アウトカムは複合であり、ソフトアウトカムが含まれています。有料文献であるため、抄録からは詳細を確認できませんでしたが、個々のアウトカムの発生についても検討する必要があります。また、腎代替療法への移行や腎移植、死亡などの臨床上より重要なアウトカムについても検証が求められます。よりさらに、そもそも腎関連アウトカムが悪化しやすい患者(予後不良な患者)に対してループ利尿薬が使用されていた可能性を排除できません。
続報に期待。
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