COVID-19に対するハチミツ+ブラッククミンの効果は?
これまで、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対する特異的で有効な治療法は存在しません。
ハチミツとブラッククミン(HNS)は、抗ウイルス、抗菌、抗炎症、抗酸化、免疫調節など様々な作用が報告されていますが、COVID-19に対する有効性・安全性について充分に検討されていません。
そこで今回は、パキスタンの4つの医療施設でCOVID-19に対する有効性を検証した多施設、プラセボ対照、ランダム化臨床試験の結果をご紹介します。
本試験では、RT-PCRで確認された中等症または重症の疾患を有するCOVID-19成人が試験に登録されました。患者は、標準治療とともに、ハチミツ(1g/kg/日)とブラッククミン種子(80mg/kg/日)またはプラセボのいずれかを最大13日間受けるよう1:1の割合でランダムに割り当てられました。治療意図のある集団(ITT)において、症状の緩和、ウイルスクリアランス、30日死亡率などの転帰を検討しました。
試験結果から明らかになったことは?
2020年4月30日から7月29日にかけて、中等症210例、重症103例の計313例がランダム化を受けました。中等症例では、107例がHNSに割り付けられたのに対し、103例はプラセボ群に割り付けられました。重症例では、50例がHNSを投与され、53例がプラセボを投与されました。
ハチミツ+ブラッククミン (HNS) | プラセボ | ハザード比 HR あるいは オッズ比 OR (95%CI) | |
症状緩和までの時間 | |||
中等症例 | 4日 | 7日 | HR 6.11 95%CI 4.23~8.84 p<0.0001 |
重症例 | 6日 | 13日 | HR 4.04 95%CI 2.46~6.64 p<0.0001 |
ウイルス排出期間 | |||
中等症例 | 6日 | 10日 | HR 5.53 95%CI 3.76~8.14 p<0.0001 |
重症例 | 8.5日 | 12日 | HR 4.32 95%CI 2.62~7.13 p<0.0001 |
6日目の臨床スコア | |||
中等症例(通常の活動を再開) | 63.6% | 10.9% | OR 0.07 95%CI 0.03~0.13 p<0.0001 |
重症例(退院) | 50% | 2.8% | OR 0.03 95%CI 0.01~0.09 p<0.0001 |
死亡率 | 4% | 18.87% | OR 0.18 95%CI 0.02~0.92 p=0.029 |
HNSはプラセボに比べ、症状緩和までの時間を50%程度短縮しました(中等症例:4 vs. 7日、ハザード比[HR] 6.11、95%Confidence Interval [CI] 4.23~8.84、p<0.0001; 重症例:6 vs. 13日、HR 4.04、95%CI 2.46~6.64、p<0.0001)。また、HNSは、中等症例(6 vs. 10日、HR 5.53、95%CI 3.76~8.14、p<0.0001)および重症例(8.5 vs. 12日、HR 4.32、95%CI 2.62~7.13、p<0.0001)ともに、プラセボより早くウイルスを消失させました。
さらにHNSは、6日目の臨床スコアを改善し、中等症例では63.6% vs. 10.9%で通常の活動を再開し(OR 0.07、95%CI 0.03~0.13、p<0.0001)、重症例では50% vs. 2.8%が退院しました(OR 0.03、95%CI 0.01~0.09、p<0.0001)。
重症例では、死亡率はHNS群がプラセボ群の1/4以下でした(4% vs. 18.87%、OR 0.18、95%CI 0.02~0.92、p=0.029)。
HNSに関連する副作用は観察されませんでした。
コメント
COVID-19に対する治療薬の開発が行われていますが、COVID-19重症化や後遺症などの課題も残されており、代替薬あるいは新規の治療法が求められています。
さて、本試験結果によれば、ハチミツ+ブラッククミンの最大13日間の投与は、プラセボと比較して、COVID-19患者の症状を有意に改善し、ウイルス量のクリアランスを早め、死亡率を減少させることが明らかとなりました。
本試験はパキスタンにおける検討結果であり、また小数例での検討結果です。他の地域や国で同様の効果が得られるのかについて、より大規模な臨床試験の実施が求められます。
続報に期待。
ちなみにブラッククミン(Nigella sativa、ニゲラサティバ)は、100種類以上の有効成分を有していると報告されています。アミノ酸、必須不飽和脂肪酸、ミネラル、ビタミンA、B、B2、C、ナイアシン、抗酸化作用があるといわれるニゲロン、シモキノンなどの栄養素が凝縮されているようです。
☑まとめ☑ ハチミツ+ブラッククミンの最大13日間の投与は、プラセボと比較して、COVID-19患者の症状を有意に改善し、ウイルス量のクリアランスを早め、死亡率を減少させた。
根拠となった試験の抄録
背景:これまで、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対する特異的で有効な治療法は存在しない。ハチミツとブラッククミン(HNS)は、抗ウイルス、抗菌、抗炎症、抗酸化、免疫調節の特性が確立されているため、パキスタンの4つの医療施設で多施設、プラセボ対照、ランダム化臨床試験でこの病気に対する有効性を検証した。
方法:RT-PCRで確認された中等症または重症の疾患を有するCOVID-19成人が試験に登録された。患者は、標準治療とともに、ハチミツ(1g/kg/日)とブラッククミン種子(80mg/kg/日)またはプラセボのいずれかを最大13日間受けるよう1:1の割合でランダムに割り当てられた。治療意図のある集団(ITT)において、症状の緩和、ウイルスクリアランス、30日死亡率などの転帰を検討した。
結果:2020年4月30日から7月29日にかけて、中等症210例、重症103例の計313例がランダム化を受けた。中等症例では、107例がHNSに割り付けられたのに対し、103例はプラセボ群に割り付けられた。重症例では、50例がHNSを投与され、53例がプラセボを投与された。HNSはプラセボに比べ、症状緩和までの時間を50%程度短縮した(中等症例:4 vs. 7日、ハザード比[HR] 6.11、95%Confidence Interval [CI] 4.23~8.84、p<0.0001; 重症例:6 vs. 13日、HR 4.04、95%CI 2.46~6.64、p<0.0001)。また、HNSは、中等症例(6 vs. 10日、HR 5.53、95%CI 3.76~8.14、p<0.0001)および重症例(8.5 vs. 12日、HR 4.32、95%CI 2.62~7.13、p<0.0001)ともに、プラセボより早くウイルスを消失させた。HNSはさらに、6日目の臨床スコアを改善し、中等症例では63.6% vs. 10.9%で通常の活動を再開し(OR 0.07、95%CI 0.03~0.13、p<0.0001)、重症例では50% vs. 2.8%で退院した(OR 0.03、95%CI 0.01~0.09、p<0.0001)。重症例では、死亡率はHNS群がプラセボ群の1/4以下であった(4% vs. 18.87%、OR 0.18、95%CI 0.02~0.92、p=0.029)。HNSに関連する副作用は観察されなかった。
結論:HNSは、プラセボと比較して、COVID-19患者の症状を有意に改善し、ウイルス量のクリアランスを早め、死亡率を減少させた。
本試験は、2020年4月15日にClinicalTrials.gov Identifier. NCT04347382に登録された。
キーワード:COVID-19、SARS-CoV-2、ブラッククミン、蜂蜜、Nigella sativa(ニゲラサティバ)、無作為化比較試験
引用文献
Honey and Nigella sativa against COVID-19 in Pakistan (HNS-COVID-PK): A multicenter placebo-controlled randomized clinical trial
Sohaib Ashraf et al. PMID: 36420866 DOI: 10.1002/ptr.7640
Phytother Res. 2022 Nov 24. doi: 10.1002/ptr.7640. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36420866/
コメント