アジア人心房細動患者における適応外用量のDOACの有効性・安全性は?(後向きコホート研究; Int J Cardiol. 2022)

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中国の心房細動患者における適応外用量のDOACの有効性・安全性は?

心房細動患者における血栓塞栓症の予防のために、抗凝固薬の投与が行われます。DOACは、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬と比較して、食事制限や頻回なモニタリングが不要なことから、使用量が増加しています。

DOACはその種類により適切なモニタリングが確立されていないため、出血リスクの高い患者に対して予防的に低用量(適応外含む)が選択されるケースがありますが、その有効性・安全性について充分に検証されていません。

そこで今回は、中国の心房細動患者におけるDOACsのラベルコンプライアンスを評価し、DOACsの不適切な投与量と臨床成績の関係を探ることを目的として実施された後向きコホート研究の結果をご紹介します。

本研究は、中国の14施設で実施されたレトロスペクティブな多施設コホート研究です。中国食品医薬品局(CFDA)のラベルと国際的な診療ガイドラインの推奨に従って、患者を適応内投与と適応外投与に分けました。その後、傾向スコアマッチングを行い、臨床アウトカムが比較されました。臨床アウトカムには、大出血、小出血、全出血、血栓症、全死因死亡が含まれました。

試験結果から明らかになったことは?

適応外過少量の
DOAC
適応外過多量の
DOAC
非弁膜症性心房細動(NVAF)患者4,191例約55.6%約1.7%

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者4,191例を対象とし、心房細動患者の約55.6%が適応外過少量、約1.7%が適応外過多量のDOACを投与されました。

適応外過少用量 vs. 適応内用量
オッズ比 OR(95%CI)
大出血OR 0.23(0.08〜0.69
P=0.004
全死亡OR 0.49(0.33〜0.73
P<0.001
血栓性イベントOR 1.06(0.54〜2.07
P=0.865
小出血OR 1.10(0.85〜1.43
P=0.465

適応内用量と比較して、適応外過少用量のDOACは、大出血(P=0.004、OR 0.23、95%CI 0.08〜0.69) および全死亡(P<0.001、OR 0.49、95%CI 0.33〜0.73)のリスクを著しく減少させていました。しかし、血栓性イベント(P=0.865、OR 1.06、95%CI 0.54〜2.07)、小出血(P=0.465、OR 1.10、95%CI 0.85〜1.43)リスクには有意差を認めませんでした。

コメント

DOACの適応外過少用量の処方が増えていますが、その有効性・安全性については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、中国人の心房細動患者の約57.3%が日常診療で適応外用量のDOACを投与されていることがわかりました。DOACの適応外過少用量は、適応内用量と比較して、大出血、全死亡のリスクが有意に低く、小出血、血栓性イベントのリスクは同程度でした。

本試験は後向きコホート研究であるため、あくまでも相関関係が認められたに過ぎません。傾向スコアマッチで調整しきれていない交絡因子が残存している可能性があります。ELDERCARE-AFなど他の報告では、過少用量で出血リスクが増加する可能性が報告されていることから、患者背景の違いなどについても把握する必要があると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 中国人の心房細動患者の約57.3%が日常診療で適応外用量のDOACを投与されていた。DOACの適応外過少用量は、適応内用量と比較して、大出血、全死亡のリスクが有意に低く、小出血、血栓性イベントのリスクは同程度であった。

根拠となった試験の抄録

目的:本研究は、中国の心房細動患者におけるDOACsのラベルコンプライアンスを評価し、DOACsの不適切な投与量と臨床成績の関係を探ることを目的とした。

方法:本研究は、中国の14施設で実施されたレトロスペクティブな多施設コホート研究である。中国食品医薬品局(CFDA)のラベルと国際的な診療ガイドラインの推奨に従って、患者を適応内投与と適応外投与に分けた。その後、傾向スコアマッチングを行い、臨床アウトカムを比較した。病院情報システムを通じて人口統計学的情報を収集し、患者またはその家族のフォローアップを通じて臨床イベントを入手した。臨床アウトカムには、大出血、小出血、全出血、血栓症、全死因死亡が含まれる。

結果:非弁膜症性心房細動(NVAF)患者4,191例を対象とし、心房細動患者の約55.6%が適応外過少量、約1.7%が適応外過多量のDOACを投与された。適応内用量と比較して、適応外過少投与のDOACは、大出血(P=0.004、OR 0.23、95%CI 0.08〜0.69) および全死亡(P<0.001、OR 0.49、95%CI 0.33〜0.73)のリスクを著しく減少させていた。しかし、血栓性イベント(P=0.865、OR 1.06、95%CI 0.54〜2.07)、小出血(P=0.465、OR 1.10、95%CI 0.85〜1.43)リスクには有意差を認めなかった。

結論:アジアの心房細動患者の約57.3%が日常診療で適応外用量のDOACを投与されていた。適応外投与のDOACは、適応内投与のDOACと比較して、大出血、全死亡のリスクが有意に低く、小出血、血栓性イベントのリスクは同程度であった。出血リスクの高いアジアの心房細動患者におけるDOACの至適用量を決定するためには、さらなるプロスペクティブ・ランダム化比較試験が必要である。

キーワード:アジア人、心房細動、直接経口抗凝固薬、投与量、転帰

引用文献

Off-label dose direct oral anticoagulants and clinical outcomes in Asian patients with atrial fibrillation: A new evidence of Asian dose
Wenlin Xu et al. PMID: 36208678 DOI: 10.1016/j.ijcard.2022.09.073
Int J Cardiol. 2022 Oct 5;S0167-5273(22)01460-7. doi: 10.1016/j.ijcard.2022.09.073. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36208678/

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