― ランダム化比較試験(COSMOS試験)のサブ解析
■ 研究の背景(Background)
これまでの大規模ランダム化試験において、マルチビタミン・マルチミネラル(multivitamin-multimineral, MVM)サプリメントおよびココアフラバノールは、高齢者におけるいくつかの加齢関連慢性疾患に対して有益な影響を示す可能性が報告されている。
しかしながら、これらの介入が生物学的老化そのもの(biological aging process)に直接影響するかどうかについては明らかになっていない。
■ 研究の概要
本研究は、COSMOS trial multivitamin cocoa studyのサブ解析として実施されたランダム化比較試験の補助研究です。
高齢者におけるMVM、ココアフラバノールが「生物学的老化」に与える影響について、DNAメチル化指標(エピジェネティッククロック)を用いて評価しています。
■ 研究デザイン
- 試験デザイン:ランダム化比較試験の事前規定サブ解析
- 対象:958例(女性482例、男性476例)
- 介入:
- MVM(Centrum Silver)
- ココア抽出物(500mg/日、(-)-エピカテキン80mg含有)
- 比較:プラセボ
- 追跡期間:2年間
■ 評価項目(Primary解析の位置づけ)
生物学的老化の指標として、以下の5つのDNAメチル化指標を評価:
- PCHannum
- PCHorvath
- PCPhenoAge
- PCGrimAge
- DunedinPACE
■ 試験結果

◆ マルチビタミン(MVM)
プラセボと比較して、
- PCGrimAge
- 年間変化差:-0.113年(95%CI -0.205 ~ -0.020)、p=0.017
- PCPhenoAge
- 年間変化差:-0.214年(95%CI -0.410 ~ -0.019)、p=0.032
→ 第2世代エピジェネティッククロックにおいて、増加速度の抑制が示された
◆ サブグループ解析
PCGrimAgeにおいて、
- 加速老化群:-0.236
- 非加速群:-0.013
- 交互作用:p=0.018
→ ベースラインで老化が進行している群で効果が大きい
◆ ココア抽出物
- 5つの指標すべてで有意差なし
■ 試験から明らかになったこと
- MVMは一部のエピジェネティッククロックで変化量の差を示した
- ココア抽出物は有意な影響を示さなかった
- 効果は一部の指標および特定サブグループに限られた
■ 考察
本研究では、MVMが生物学的老化指標に対して統計学的有意差を示したが、その効果量は限定的(小さい効果)でした。
また、影響が認められたのは一部の指標のみ、ココア抽出物では効果なしであり、介入効果は限定的です。
■ 試験の限界
抄録から確認できる範囲では:
- エピジェネティッククロックは臨床アウトカムではない代替指標
- 効果量が小さい(プラセボとの絶対差が小さく実臨床における効果は不明)
- 長期的な臨床的意義は不明
■ 今後の課題
- エピジェネティック変化と臨床アウトカムの関連検証
- 長期追跡による影響評価
- 対象集団別の効果検証
サブ解析であることから、あくまでも仮説生成的な結果です。実臨床でどのくらいの効果があるのか、更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ ランダム化比較試験のサブ解析の結果、2年間のマルチビタミン・マルチミネラルの摂取は、生物学的老化プロセスを遅らせるかもしれない。ただし、プラセボとの比較効果は小さく、実臨床における老化進行予防効果について更なる検証が求められる。
根拠となった試験の抄録
大規模な無作為化試験では、マルチビタミン・マルチミネラル(MVM)サプリメントとココアフラバノールが高齢者の加齢に伴ういくつかの慢性疾患に有益である可能性が示されていますが、これら2つのサプリメントが生物学的老化プロセスを直接遅らせるかどうかは依然として不明です。この事前に規定された補助研究では、COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study(COSMOS)に参加した958人(女性482人、男性476人)を対象に、MVM(Centrum Silver)とココア抽出物(1日あたり500mgのココアフラバノール、80mgの(-)-エピカテキンを含む)の2年間の摂取が、生物学的老化の5つのDNAメチル化指標(PCHannum、PCHorvath、PCPhenoAge、PCGrimAge、DunedinPACE)に及ぼす影響を評価しました。プラセボと比較して、MVMの毎日の摂取は、第2世代エピジェネティック時計の増加率をわずかに減少させ、PCGrimAgeの年間変化の群間差は-0.113年(95%信頼区間(CI)-0.205~-0.020、P = 0.017)、PCPhenoAgeの年間変化の群間差は-0.214年(-0.410~-0.019、P = 0.032)でした。MVMは、ベースラインで生物学的老化が加速している群(-0.236 [-0.380~-0.091])において、正常または減速している群(-0.013 [-0.130~0.104]、相互作用のP = 0.018)と比較して、PCGrimAgeに対してより強い効果を示しました。ココア抽出物は、テストした5つのエピジェネティック時計に影響を与えませんでした。統計的に有意ではあるものの、MVMサプリメントの毎日摂取が生物学的老化を遅らせる効果は小さいという結果は有望ではあるものの、MVMサプリメントの毎日摂取がエピジェネティック時計に及ぼす臨床的意義、そしてそのような効果がMVMサプリメントの加齢関連慢性疾患に対する有益な効果を説明するのに役立つかどうかを判断するには、さらなる研究が必要である。
引用文献
Effects of daily multivitamin-multimineral and cocoa extract supplementation on epigenetic aging clocks in the COSMOS randomized clinical trial
Sidong Li et al.
Nat Med. 2026 Mar;32(3):1012-1022. doi: 10.1038/s41591-026-04239-3. Epub 2026 Mar 9.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41803341/

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