トラマドールはNSAIDsやオピオイドより有効なのか?(Can Fam Physician. 2025)

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― ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析


臨床疑問(Clinical Question)

成人の急性または慢性疼痛において、トラマドール(±アセトアミノフェン)はNSAIDsやオピオイドと比べて有効かつ安全なのか?


研究の背景

トラマドールは弱オピオイドとして位置づけられ、急性痛や慢性痛の治療に広く使用されている。

しかし臨床では、NSAIDs、他のオピオイド、アセトアミノフェンなど複数の鎮痛薬が存在し、
トラマドールの有効性や安全性がどの程度優れているかは明確ではない。

そこで本研究では、トラマドール(単剤またはアセトアミノフェン併用)を他の鎮痛薬と比較したランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を行い、有効性と安全性を評価した。


PICO

P:成人の急性または慢性疼痛患者
I:トラマドール(±アセトアミノフェン)
C:NSAIDs、他のオピオイド、アセトアミノフェン
O:疼痛改善(30%以上、50%以上)、有害事象、試験中止など


試験デザイン

  • 研究タイプ:システマティックレビュー+メタ解析
  • 対象研究:二重盲検RCT
  • データベース
    • MEDLINE
    • Embase
    • Cochrane CENTRAL
  • 検索期間:1946年〜2022年8月19日

研究選定:

  • スクリーニング:3184論文
  • 採用:37 RCT

内訳

比較試験数
オピオイド21
NSAIDs15
アセトアミノフェン1

総参加者数:7,156例

研究期間:1時間〜12週間


試験結果から明らかになったことは?

オピオイドとの比較

指標効果量
50%以上の疼痛改善有意差なし
30%以上の疼痛改善有意差なし
非致死性重篤有害事象RR 1.35(95%CI 0.43–4.20)
有害事象による中止RR 0.99(95%CI 0.80–1.22)
試験中止RR 0.93(95%CI 0.78–1.11)
有害事象RR 0.97(95%CI 0.89–1.05)

結論:オピオイドと有効性・安全性に有意差なし


NSAIDsとの比較

指標効果量結果の解釈
30%以上の疼痛改善RR 0.82(95%CI 0.76–0.90)NSAIDsの方が有効
有害事象による中止RR 2.86(95%CI 2.23–3.66)トラマドールで多い
試験中止RR 1.68(95%CI 1.47–1.93)トラマドールで多い
有害事象RR 1.37(95%CI 1.28–1.47)トラマドールで多い

結論:NSAIDsより有効性が低く忍容性も劣る


解析できなかったアウトカム

以下はメタ解析に十分なデータがなかった。

指標
致死性有害事象
薬物依存
生活の質
機能改善
レスキュー薬使用

試験の限界(批判的吟味)

本研究にはいくつかの重要な制限がある。

まず、多くの試験で研究期間が短い(最短1時間〜最長12週間)ため、長期使用の有効性や安全性を評価することはできない。

次に、試験のサンプルサイズが比較的小さく、統計的検出力が十分でない可能性がある。

さらに、研究では患者選択が厳しく、臨床現場でみられる多様な患者背景を反映していない可能性がある。

また、アウトカムの報告方法にばらつきがあり、研究間の結果の一貫性が十分ではない

そのため、著者らは研究期間の短さ、症例数の少なさ、患者選択の偏り、アウトカム報告の不一致が科学的妥当性を制限する可能性があると指摘している。


コメント(臨床的解釈)

本研究の結果から、

  • トラマドールは他のオピオイドと同程度の有効性
  • NSAIDsと比較すると有効性が低く副作用が多い

可能性が示唆された。

臨床ではトラマドールは「NSAIDsが使えない患者の代替薬」として使用されることが多いが、
本研究の結果はその位置づけを再考する材料となり得る。

一方で、長期安全性や依存リスクについては十分なデータがなく、今後の研究が必要である。


まとめ

本メタ解析では、

  • トラマドールは他のオピオイドと有効性・安全性に差はなかった
  • NSAIDsより鎮痛効果が低く、副作用が多い可能性が示された

ただし研究期間の短さや症例数の制限があり、結論の解釈には注意が必要である。

そもそもトラマドールが必要な患者像についての再考するときなのかもしれません。どのような患者層で有益性が高いのか、コストとのバランス等、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験のメタ解析の結果、トラマドールはアセトアミノフェン併用の有無にかかわらず、他のオピオイドと有意差を示さず、NSAIDsと比較して効果が低く、忍容性も低かった。研究期間の短さ、サンプル数の少なさ、広範囲にわたる患者の除外、そして結果報告の不一致により、結論の科学的妥当性は限定的である。

根拠となった試験の抄録

目的: 成人の疼痛管理におけるトラマドール(アセトアミノフェン併用または非併用)の有効性と安全性を、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、オピオイド、アセトアミノフェン単独と比較して評価する。

データソース: 1946年から2022年8月19日までのOvid MEDLINEデータベース全体、Ovid MEDLINE Epub Ahead of Printデータベース、Embase、Evidence-Based Medicine Reviews (Cochrane Central Register of Controlled Trials)の検索を通じて研究が特定されました。

研究の選択: 対象研究は、急性または慢性疼痛の治療における経口トラマドール(アセトアミノフェン併用または非併用)とオピオイド、NSAIDs、またはアセトアミノフェンを比較した二重盲検ランダム化比較試験(RCT)であり、11項目(総有害事象(AE)、致死性重篤AE(SAE)、非致死性SAE、AEによる試験中止例(WDAE)、試験中止例総数、依存性または嗜癖の指標、生活の質、機能改善、30%以上の疼痛軽減、50%以上の疼痛軽減、およびレスキュー薬の使用)のうち少なくとも1項目が報告されているものであった。全体で3184件の論文がスクリーニングされ、37件のRCT(オピオイド21件、NSAIDs15件、アセトアミノフェン1件、N=7156、試験期間1時間~12週間)が対象となった。試験は、コクランランダム化試験バイアスリスクツール1.0を用いて批判的に評価されました。メタアナリシスの結果は、リスク比(95%信頼区間[CI]付き)として報告されました。

まとめ: オピオイドと比較して、アセトアミノフェンの有無にかかわらずトラマドールは、痛みまたはあらゆる有害事象(非致死性SAE [リスク比(RR)= 1.35、95% CI 0.43〜4.20]、WDAE [RR = 0.99、95% CI 0.80〜1.22]、総中止 [RR = 0.93、95% CI 0.78〜1.11]、または総AE [RR = 0.97、95% CI 0.89〜1.05])の50%以上または30%以上の軽減に基づく有効性に有意差はありませんでした。 NSAIDsと比較して、トラマドールはアセトアミノフェン併用の有無にかかわらず、疼痛の30%以上の軽減を達成する可能性が低く(RR=0.82、95%信頼区間0.76~0.90)、WDAE(RR=2.86、95%信頼区間2.23~3.66)、全離脱例(RR=1.68、95%信頼区間1.47~1.93)、全AE(RR=1.37、95%信頼区間1.28~1.47)の発生率が高かった。致死的なSAE、薬物依存または嗜癖、生活の質、機能改善、またはレスキュー薬の使用に関するメタアナリシスを行うにはエビデンスが不十分であった。

結論: トラマドールはアセトアミノフェン併用の有無にかかわらず、他のオピオイドと有意差を示さず、NSAIDsと比較して効果が低く、忍容性も低かった。研究期間の短さ、サンプル数の少なさ、広範囲にわたる患者の除外、そして結果報告の不一致により、結論の科学的妥当性は限定的である。

引用文献

Tramadol (with or without acetaminophen) efficacy and harm: Systematic review and meta-analysis
Jessica A Otte et al. PMID: 40940161 PMCID: PMC12454558 DOI: 10.46747/cfp.7109574
Can Fam Physician. 2025 Sep;71(9):574-581. doi: 10.46747/cfp.7109574.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40940161/

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