― 客観的測定によるコホート研究
臨床疑問(Clinical Question)
11〜14歳の若年者において、就寝前のスクリーンタイムはその夜の睡眠時間や睡眠の質に影響するのか?
研究の背景
就寝前のスクリーン使用と睡眠障害の関連は、多くの研究で指摘されている。
しかし、これまでの研究の多くはアンケートなどの自己申告データに依存しており、実際のスクリーン使用状況を正確に反映していない可能性がある。
現代のスクリーン使用は、
- スマートフォン
- ゲーム
- SNS
- 動画視聴
など多様であり、単純な質問票ではその複雑さを捉えきれない。
そこで本研究では、ビデオカメラによる客観的測定を用いて、就寝前のスクリーン使用と睡眠の関連を評価した。
PICO
| 項目 | |
|---|---|
| P | 11〜14.9歳の健康な若年者 |
| I | 就寝前のスクリーン使用 |
| C | スクリーン使用時間の違い |
| O | 睡眠時間・入眠時間・睡眠の質 |
試験デザイン
- 研究タイプ:反復測定コホート研究
- 実施場所:ニュージーランド(Dunedin)
- 実施期間:2021年3月〜12月
- 解析期間:2023年10月〜11月
◆測定方法
スクリーン使用
- 就寝2時間前〜入眠までを撮影
- ビデオカメラで客観的測定
- 機器タイプ(8種類)
- 活動タイプ(10種類)
睡眠
- リスト型加速度計(actigraphy)
解析
- 混合効果回帰モデル
- 参加者をランダム効果として扱う
- 週末を調整
試験結果から明らかになったことは?
研究対象
| 指標 | |
|---|---|
| 参加者数 | 79人 |
| 男性 | 59.5% |
| 平均年齢 | 12.9歳 |
参加者のほぼ全員が就寝前にスクリーンを使用していた。
スクリーンタイムと睡眠の関連
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 就寝前2時間のスクリーン時間 | 睡眠時間と関連なし |
| スクリーン使用 | 入眠時間の遅延と関連 |
ベッド内スクリーン使用
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 追加10分のスクリーン使用 | 睡眠時間 −3分 |
スクリーンタイプ別の影響
| スクリーン使用 | 睡眠時間への影響 |
|---|---|
| インタラクティブ使用 | −9分 |
| パッシブ使用 | −4分 |
特に影響が大きかった行動
| 活動 | 睡眠時間への影響 |
|---|---|
| ゲーム | −17分 |
| マルチタスク | −35分 |
試験の限界(批判的吟味)
本研究にはいくつかの制約がある。
まず、対象者はニュージーランドの1都市に住む79名の若年者であり、他の地域や文化環境への一般化には注意が必要である。
次に、スクリーン使用は4夜のみ観察されており、長期的な睡眠パターンへの影響は評価されていない。
また、研究対象は健康な若年者であり、
- 不眠症
- 睡眠障害
- 精神疾患
などを有する集団への適用は困難である。
さらに、本研究は観察研究であるため、スクリーン使用が睡眠変化の原因であると断定することはできない。他の要因も含めて多因子的な影響の結果であると受け取る方が適切だろう。
コメント(臨床的解釈)
本研究は、スクリーン使用を客観的に測定した点が大きな特徴である。
従来の研究では「就寝前のスクリーンは睡眠に悪影響を及ぼす」とされることが多かったが、本研究では
- 就寝前2時間のスクリーン使用自体は睡眠時間と関連しない
- ベッドに入ってからのスクリーン使用が睡眠短縮と関連
という結果が示された。
また、
- ゲーム
- マルチタスク
などのインタラクティブな活動ほど睡眠への影響が大きいことも示唆された。
まとめ
この反復測定コホート研究では、
- 就寝前2時間のスクリーン使用は睡眠時間と関連しなかった
- ベッド内でのスクリーン使用は睡眠時間短縮と関連
- 特にゲームやマルチタスクなどの活動で影響が大きかった
という結果が示された。
そのため、「就寝前のスクリーンをすべて禁止する」という従来の睡眠衛生指導は必ずしも現実的ではない可能性が示唆される。
目の前の患者に対して、どのようなアプローチや後押しができるのか、再考するための材料になると考えられる。
他の年齢層や疾患を有する患者層における検証も求められる。続報に期待。

✅まとめ✅ ニュージーランドで実施された反復測定コホート研究の結果、就寝後のスクリーンタイムは睡眠障害と関連しており、特にインタラクティブなスクリーンタイムやマルチタスクを伴うスクリーンタイムの場合に顕著であることが示された。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性: アンケートに基づく横断的研究では、就寝前のスクリーンタイムが睡眠不足と相関していることが示唆されていますが、自己申告データでは現代のスクリーン使用の複雑さを捉えきれない可能性があり、この分野を前進させるには客観的な毎晩の測定が必要です。
目的: 若者の夜間のスクリーンタイムがその夜の睡眠時間と質に関連しているかどうかを調べる。
試験デザイン、設定、および参加者: この反復測定コホート研究は、2021年3月から12月にかけて、ニュージーランドのダニーデンにある参加者の自宅で実施されました。参加者は11歳から14.9歳までの健康な青少年でした。データは2023年10月から11月にかけて分析されました。
曝露: ウェアラブルまたは据え置き型ビデオカメラを用いて、就寝2時間前から被験者が初めて睡眠を試みる時間(入眠時間)まで、スクリーンタイムを客観的に測定し、4日間連続しない夜間に記録した。ビデオデータは、信頼性の高いプロトコル(κ = 0.92)を用いてコード化し、デバイス(8つの選択肢 [例:スマートフォン])とアクティビティ(10の選択肢 [例:ソーシャルメディア])の種類を定量化した。
主なアウトカムと評価指標: 睡眠時間と質は、手首に装着する加速度計を用いて客観的に測定された。スクリーン使用と睡眠指標との関連は、参加者をランダム効果として週末を考慮した混合効果回帰モデルを用いて、夜間ごとに分析された。
結果: 参加者79名(男性47名 [59.5%]、平均[SD]年齢12.9歳 [1.1]歳)のうち、1名を除く全員が就寝前にスクリーンタイムを経験しました。就寝前2時間のスクリーン使用は、その夜の睡眠に関する健康状態のほとんどの指標と関連がありませんでした(例:スクリーンタイム合計10分増加につき、睡眠時間合計の平均差は0分 [95% 信頼区間 -3~20分])。すべての種類のスクリーンタイムは入眠遅延と関連していましたが、特にインタラクティブ スクリーンの使用と関連していました(平均差 10分、95% 信頼区間 4~16分、インタラクティブ スクリーンタイム10分増加につき)。就寝時のスクリーンタイムが10分増加するごとに、睡眠時間合計が短くなっていました(平均差 -3分、95% 信頼区間 -6~-1分)。総睡眠時間の平均差は、インタラクティブスクリーン使用10分ごとに-9分(95%信頼区間-16~-2分)、パッシブスクリーン使用10分ごとに-4分(95%信頼区間-7~-0分)でした。特に、ゲーム(ゲーム10分ごとに平均差-17分、95%信頼区間-28~-7分)とマルチタスク(マルチタスクを行った夜と行わなかった夜で平均差-35分、95%信頼区間-67~-4分)は、総睡眠時間の減少と関連していました。
結論と関連性: この反復測定コホート研究では、客観的な方法を用いた結果、就寝後のスクリーンタイムは睡眠障害と関連しており、特にインタラクティブなスクリーンタイムやマルチタスクを伴うスクリーンタイムの場合に顕著であることが示されました。これらの知見は、就寝前のスクリーンタイムを全て制限するという現在の睡眠衛生に関する推奨事項は、達成可能でも適切でもないことを示唆しています。
引用文献
Screen Use at Bedtime and Sleep Duration and Quality Among Youths
Bradley Brosnan et al. PMID: 39226046 PMCID: PMC11372655 DOI: 10.1001/jamapediatrics.2024.2914
JAMA Pediatr. 2024 Nov 1;178(11):1147-1154. doi: 10.1001/jamapediatrics.2024.2914.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39226046/

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