バロキサビル耐性ウイルスは増えているのか?(Euro Surveill. 2026)

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― 日本における7シーズンの全国サーベイランス


臨床疑問(Clinical Question)

日本でバロキサビル使用開始後、インフルエンザウイルスの薬剤感受性はどのように変化したのか?


研究の背景

バロキサビル マルボキシルは、cap-dependent endonuclease阻害薬として2018年2月に日本で承認された。

日本は世界で最初に臨床使用を開始した国であり、実臨床での使用拡大が耐性ウイルス出現に与える影響は重要な公衆衛生課題である。

本研究は、2017/18〜2023/24シーズンの7年間にわたる全国サーベイランスデータを解析し、バロキサビル感受性を評価した。


PICO

P:日本で検出された季節性インフルエンザウイルス
I:バロキサビル曝露(臨床使用環境下)
C:ー
O:感受性低下ウイルスの頻度、PAタンパク質変異


試験デザイン

  • 研究タイプ:全国サーベイランス研究
  • 期間:2017/18〜2023/24シーズン
  • 検体数:3,671株
  • 評価法:表現型試験+遺伝子解析
  • 目的:感受性低下ウイルスの頻度およびPA変異の同定

試験結果から明らかになったことは?

全体の感受性低下率

指標結果
全体1.7%

亜型別感受性低下率

亜型感受性低下率
A(H3N2)3.6%
A(H1N1)pdm090.9%
B型0%

主なPAアミノ酸置換

変異
E23K
Y24C
I38M/N/S/T/V
E199G/K

シーズン別傾向

シーズン感受性低下率優勢株
2018/194.6%A(H3N2)
2022/233.2%A(H3N2)

→2018/19シーズンはバロキサビル供給量がピークであったとの記載あり。


その他の所見

  • 感受性低下株は治療歴のある患者および未治療患者の双方から検出された
  • 抗ウイルス使用量が少なかったシーズンでは低頻度

試験の限界(批判的吟味)

本研究は全国規模のサーベイランスであり外的妥当性は高いが、いくつかの制約がある。

第一に、本研究は観察的サーベイランスであり、バロキサビル使用量と耐性出現との因果関係を直接証明するものではない。

第二に、臨床転帰(重症化、治療失敗率)との関連は評価されていない。

第三に、ウイルス分離株ベースでの解析であり、患者背景や地域差の詳細までは示されていない。

第四に、耐性株の伝播力については示唆はあるものの、感染拡大の実測データは示されていない。

したがって、本研究は耐性出現の頻度と傾向を示す疫学的報告と解釈するのが適切である。


コメント(臨床的解釈)

全体として、感受性低下率は1.7%と低水準であった。

しかし、

  • A(H3N2)優勢シーズンで増加
  • 使用量ピーク時期と一致

という点は臨床上重要である。

日本は抗インフルエンザ薬使用頻度が高い国であり、薬剤使用量が耐性出現に影響する可能性は否定できない。

とはいえ、現時点では感受性低下は比較的まれであり、直ちに臨床戦略を変更すべき状況とは言えない。継続的な表現型・遺伝子監視の重要性が強調される。


まとめ

7シーズンの全国サーベイランスにより、バロキサビル感受性低下率は全体で1.7%と比較的低頻度であった。

一方で、A(H3N2)優勢シーズンや使用量ピーク時期に増加が観察され、抗ウイルス使用と耐性出現との関連が示唆された。これらの結果から今後も継続的監視が必要であると考える。

より堅牢な試験デザインでの耐性株の出現頻度のモニタリングも求められる。続報に期待。

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✅まとめ✅ 日本の7シーズンにわたるサーベイランス研究の結果、バロキサビルに対する感受性の低下は依然として比較的まれであることが示された(全体で1.7%)。伝染性ウイルス変異体の出現は、治療戦略の指針となり、公衆衛生上の備えを支援し、耐性ウイルスの蔓延を防ぐために、表現型および遺伝子型の継続的な監視の必要性を強調している。

根拠となった試験の抄録

背景: キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤であるバロキサビル マルボキシルは、2018 年 2 月に日本でインフルエンザ A 型および B 型感染症の治療薬として承認され、日本は臨床使用を導入した最初の国となりました。

目的: 2017/18年から2023/24年までの臨床使用の最初の7シーズンにわたって、日本における季節性インフルエンザウイルスのバロキサビル感受性を評価することを目的とした。

方法: 表現型および遺伝子型アッセイを使用して 3,671 種類のインフルエンザウイルスの全国調査を実施し、バロキサビル感受性を評価し、感受性の低下に関連するポリメラーゼ酸性 (PA) タンパク質のアミノ酸置換を特定しました。

結果: 検査したウイルスの1.7%がバロキサビルに対する感受性の低下を示した。インフルエンザA(H3N2)ウイルスの頻度が最も高く(3.6%)、次いでインフルエンザA(H1N1)pdm09(0.9%)であった。インフルエンザBウイルスでは感受性の低下は見られなかった。主要なPA変異は、E23K、Y24C、I38M/N/S/T/V、E199G/Kであった。感受性が低下したウイルスは、治療群と非治療群の両方で検出された。感受性の低下は、2018/19シーズン(4.6%)と2022/23シーズン(3.2%)に最も多く見られ、両シーズンともA(H3N2)ウイルスが優勢であった。注目すべきは、2018/19シーズンは医療機関へのバロキサビルの供給がピークに達した時期と一致し、その後のシーズンでは抗ウイルス薬の使用が減少し、感受性が低下したウイルスの割合が低かったことである。

結論: 本研究の結果は、バロキサビルの使用頻度と耐性ウイルスの出現との間に関連性がある可能性を示唆し、流行している亜型が季節性感受性プロファイルをどのように形成するかを浮き彫りにしている。バロキサビルに対する感受性の低下は依然として比較的まれであるものの、伝染性ウイルス変異体の出現は、治療戦略の指針となり、公衆衛生上の備えを支援し、耐性ウイルスの蔓延を防ぐために、表現型および遺伝子型の継続的な監視の必要性を強調している。

キーワード インフルエンザ、バロキサビル、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤、耐性

引用文献

Baloxavir susceptibility of seasonal influenza viruses during the first seven seasons of clinical use in Japan, 2017/18 to 2023/24
Emi Takashita et al. PMID: 41508891  PMCID: PMC12862291 DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2026.31.1.2500336
Euro Surveill. 2026 Jan;31(1):2500336. doi: 10.2807/1560-7917.ES.2026.31.1.2500336.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41508891/

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