ACS後PCI患者における「アスピリン早期中止」は有効か?(N Engl J Med. 2025)

close up view of two medicinal tablets 02_循環器系
Photo by www.kaboompics.com on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

― NEO-MINDSET試験から得られたものとは?

DAPT後のSAPTではアスピリンを中止した方が良いのか?

急性冠症候群(ACS)に対するPCI後の標準治療は、アスピリン+P2Y12阻害薬の二重抗血小板療法(DAPT)です。
しかし出血リスクの観点から、近年はアスピリンを早期中止し、強力P2Y12阻害薬単剤にする戦略
が注目されています。

今回ご紹介するランダム化比較試験は、この戦略の有効性と安全性を検証したNEO-MINDSET試験です。


試験結果から明らかになったことは?

◆PICO

項目内容
P(対象)ACSでPCI成功後の患者
I(介入)早期にアスピリン中止し、強力P2Y12阻害薬単剤(チカグレロルまたはプラスグレル)
C(比較)標準DAPT(アスピリン+強力P2Y12阻害薬)
O(主要評価項目)①死亡・MI・脳卒中・緊急再血行再建の複合(非劣性検証)
②大出血または臨床的意義のある非大出血(優越性検証)

◆研究デザイン

  • 多施設オープンラベルRCT(ブラジル)
  • PCI成功後、入院4日以内に割付
  • 追跡期間:12か月
  • ITT解析:3410例
    • 単剤群:1712例
    • DAPT群:1698例

◆試験結果

主要虚血イベント

指標単剤群DAPT群絶対差
(95%CI)
主要虚血イベント7.0%5.5%+1.47%
(−0.16 ~ 3.10)
非劣性p値=0.11

非劣性は証明されなかった


出血イベント

指標単剤群DAPT群絶対差
(95%CI)
大出血または臨床的意義のある出血2.0%4.9%−2.97%
(−4.20 ~ −1.73)

出血は単剤群で少なかった


ステント血栓症

指標単剤群DAPT群
ステント血栓症12例4例

→ 単剤群で多かった


研究から分かること

  • P2Y12単剤療法は虚血イベントに対してDAPTの非劣性を示せなかった
  • 出血イベントは単剤療法で少なかった
  • ステント血栓症は単剤群で多かった

試験の限界

本研究には臨床解釈に影響する重要な制約があります。

1. オープンラベル試験

盲検化されておらず、治療・評価バイアスの可能性があります。

2. 地域的偏り

ブラジルのみの研究であり、医療体制・背景リスクが他地域と異なる可能性があります。

3. イベント数が比較的少ない

虚血イベントが少なく、非劣性検証に十分な統計的検出力が不足した可能性があります。

4. 薬剤選択が統一されていない

チカグレロルとプラスグレルが混在しており、薬剤間差の影響を評価できません。

5. 高リスク患者の層別解析不足

糖尿病、複雑病変、高齢者などでのサブグループ効果は十分検証されていません。


臨床的示唆

本試験から得られる現時点での実務的な示唆は以下です。

  • PCI後ACS患者では、アスピリン早期中止(DAPT4日後の中止)は標準治療を置き換える根拠にはならない
  • 出血リスクが高い患者では単剤戦略の検討余地あり
  • ステント血栓症増加の可能性には注意が必要

つまり、

👉 「DAPT短縮=常に安全」ではない

という重要なメッセージを示した試験といえます。


まとめ

NEO-MINDSET試験では、

  • P2Y12単剤療法は虚血イベントに対してDAPTに非劣性を示せなかった
  • 出血は減少した
  • ステント血栓症は増加した

という結果でした。

したがって現時点では、ACS後PCI患者の標準治療は依然としてDAPTと考えるのが妥当です。

これまでの試験結果を踏まえると、少なくとも3か月のDAPTは必要そうです。さすがにDAPT開始してから4日後の中止は早すぎるようです。最適なDAPT期間の解明が求められます。

続報に期待。

person holding a book

✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、急性冠症候群に対するPCIが成功した患者において、強力なP2Y12阻害剤単独療法は、12か月時点での死亡または虚血性イベントの複合に関して、抗血小板療法2剤併用療法に対して非劣性を示せなかった。

根拠となった試験の抄録

背景: 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) が成功した直後に開始されるアスピリンを含まない強力な P2Y12 阻害剤単独療法が、急性冠症候群の患者に有効かつ安全であるかどうかは不明である。

方法: ブラジルにおいて、PCIが成功した急性冠症候群患者を対象とした多施設共同、非盲検、無作為化試験を実施した。患者は入院後4日以内に、アスピリン投与を中止し、強力なP2Y12阻害薬単剤療法(チカグレロルまたはプラスグレル)を受ける群、または2剤併用抗血小板療法(アスピリンと強力なP2Y12阻害薬)を受ける群に1:1の割合で割り付けられた。12ヶ月間評価された2つの主要評価項目は、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、または緊急標的血管血行再建術(非劣性検定、非劣性マージン2.5パーセントポイント)と、重大または臨床的に重要な非重大出血(優越性検定)の複合であった。

結果: 計3,410例が治療意図集団(ITT)に含まれた(単剤療法群1,712例、抗血小板薬2剤併用療法群1,698例)。12ヵ月時点で、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、または緊急血行再建術は、単剤療法群で119例(カプラン・マイヤー法推定値7.0%)、抗血小板薬2剤併用療法群で93例(カプラン・マイヤー法推定値5.5%)に認められた(絶対リスク差1.47パーセントポイント、95%信頼区間[CI]-0.16~3.10、非劣性のP = 0.11)。重大出血または臨床的に重要な非重大出血は、単剤療法群で33例(カプラン・マイヤー法による推定値2.0%)、抗血小板薬2剤併用療法群で82例(カプラン・マイヤー法による推定値4.9%)に認められました(絶対リスク差-2.97パーセントポイント、95%信頼区間-4.20~-1.73)。ステント血栓症は、単剤療法群で12例、抗血小板薬2剤併用療法群で4例に認められました。

結論: 急性冠症候群に対するPCIが成功した患者において、強力なP2Y12阻害剤単独療法は、12か月時点での死亡または虚血性イベントの複合に関して、抗血小板療法2剤併用療法に対して非劣性であるとは認められなかった。

資金提供: ブラジル保健省

試験登録番号: ClinicalTrials.gov番号 NCT04360720

引用文献

Early Withdrawal of Aspirin after PCI in Acute Coronary Syndromes
Patricia O Guimarães et al. PMID: 40888723 DOI: 10.1056/NEJMoa2507980
N Engl J Med. 2025 Nov 27;393(21):2095-2106. doi: 10.1056/NEJMoa2507980. Epub 2025 Aug 31.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40888723/

コメント

タイトルとURLをコピーしました