“意図” は行動変化を引き起こせるのか?
◆研究の概要
- 社会心理学や健康心理学では「意図(intention)」が行動の主要な原因と考えられる。
- しかし多くの研究は相関デザインであり、因果関係を検証できない。
- この論文は、意図を意識的に操作し、行動変化への因果関係を検証した研究を対象とした メタ解析である。
- 結果として「意図変化」と「行動変化」は統計的に関連していたという知見が示された。
試験結果から明らかになったことは?
◆研究の背景
多くの行動理論(例:計画的行動理論など)は、「意図が行動を引き起こす」と仮定しています(意図→行動)。しかし、多くの研究は因果推論を排除する相関研究であり、意図の変化が行動の変化を直接引き起こすかどうかは実証されていませんでした。
そこで本研究では、以下の条件を満たす 実験的研究(介入して意図を変える研究) を対象に、意図の変化と行動の違いを比較するメタ解析が行われました。
◆研究方法
- 条件:
- ランダム化された比較デザイン
- 意図を有意に高める介入が含まれる
- 行動の測定が行われる
- 対象:47件の実験的研究
- 分析手法:効果量のメタ解析
- 指標:
- 意図変化の効果量(Cohen’s d)
- 行動変化の効果量(Cohen’s d)
◆主要結果
| 指標 | 効果量(d) | 変化のサイズ |
|---|---|---|
| 意図(intention) | d = 0.66 | 中等度〜大きな変化 |
| 行動(behavior) | d = 0.36 | 小さめ〜中等度の変化 |
➡ まとめ
介入によって意図が中〜大きく変化すれば、その後の行動にも「小〜中くらいの変化」が生じるという傾向が示されました。
研究結果が示す心理学的な意味
この結果は「意図が行動に影響する」という理論的仮定をある程度支持します。
ただし、効果量を見ると:
- 意図の変化は中〜大程度
- 行動の変化はそれより小さい
というパターンが示されました。つまり、意図の強化は行動変化につながるが、その影響は限定的である可能性が示唆されます。
行動変化には意図以外にも多くの要因(例:環境・自制力・習慣など)が関与していると考えられます。
試験の限界
本論文のメタ解析には以下のような限界があります:
1) 研究間で介入内容のばらつき
介入の種類や対象行動、測定方法は研究ごとに異なり、統一された基準ではありませんでした。
2) 行動測定の多様性
行動は自己申告や観察評価など様々であり、測定方法による差が存在します。
3) 出版バイアスの可能性
肯定的な効果を示す研究が出版されやすいというバイアスが影響している可能性があります。
(メタ解析全般の一般的な課題)
4) 調整因子不足
意図から行動への変換は他の心理的要因(自己効力感、計画性など)にも影響されますが、これらを統合的に評価した結果ではありません。
現場への応用と今後の研究
本研究は心理理論に裏付けられたエビデンスとして、意図を強化する介入は行動変化の可能性を高めるという示唆を与えています。
しかし、意図だけを強化しても行動変化が大きくならない場合があるため、以下のような補完的な要因を取り入れた戦略が重要です:
- 自動的プロセス(習慣化・実行意図:Implementation intention) の促進
- 自己効力感の向上
- 行動を支える環境整備
この研究は、健康行動支援や生活習慣改善プログラムなどの設計に役立つ基礎知見として重要であり、今後は「意図から行動への媒介プロセス」を明示的に評価する実験が期待されます。
続報に期待。

✅まとめ✅ メタ解析の結果、意識的に誘発される意図の変化は、その後に続く行動変化と結びついていることが明らかとなった。
根拠となった試験の抄録
社会心理学および健康心理学における多くの理論は、意図が行動を引き起こすと仮定しています。しかし、意図と行動の関係を検証するほとんどの研究は、因果推論を排除する相関研究です。行動意図の変化が行動変化をもたらすかどうかを判断するには、参加者を対照群と比較してそれぞれの意図の強度を有意に高める処置群にランダムに割り当て、その後の行動の違いを比較する必要があります。本研究では、これらの基準を満たす意図と行動の関係に関する実験的検証を47件実施しました。メタアナリシスでは、意図の中程度から大きな変化(d=0.66)が、行動の小さめから中程度の変化(d=0.36)につながることが示されました。また、本レビューでは、意図と行動の一貫性に影響を与えるいくつかの概念的要因、方法論的特徴、および介入特性も特定されました。
引用文献
Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence
Thomas L Webb et al. PMID: 16536643 DOI: 10.1037/0033-2909.132.2.249
Psychol Bull. 2006 Mar;132(2):249-68. doi: 10.1037/0033-2909.132.2.249.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16536643/

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