―「子ども心(childlike wonder)」という新しい経路に注目した研究(JMIR Serious Games. 2025)
人気ゲームが及ぼす影響とは?
現代の若年成人は、学業・就職活動・SNSなどにより「常にオン」の状態に置かれ、十分な休息が取れないことによるバーンアウト(燃え尽き)が問題となっています。
こうした中、「ゲームは気晴らしになる」という直感的理解を超えて、なぜ・どのように心に作用するのかを検証した研究が報告されました。
本記事では、スーパーマリオブラザーズ(Super Mario Bros.)やヨッシー(Yoshi)といった人気ゲームが、若年成人のバーンアウトリスクにどのように関与するかを検討した論文について解説します。
試験結果から明らかになったことは?
◆研究の背景と目的
- バーンアウトは医療・教育分野だけでなく、一般の若年成人にも広がっている問題
- ビデオゲームは「逃避」や「娯楽」として語られることが多いが、
心理的な回復経路(メカニズム)は十分に検証されていなかった - 本研究では特に、
「子ども心(childlike wonder)」
という感情体験に着目し、- 幸福感(happiness)
- バーンアウトリスク
との関係を検討しました。
◆研究デザイン
本研究は混合研究法(mixed methods)を採用しています。
① 質的研究(インタビュー)
- 対象:大学生41名
- 条件:スーパーマリオまたはヨッシーのプレイ経験あり
- 方法:探索的・半構造化インタビュー
② 量的研究(横断調査)
- 対象:336名
- 内容:
- ゲームによる「子ども心」の喚起
- 人生全体の幸福感
- バーンアウトリスク
◆試験結果
🔹 主な解析結果
| 関係性 | 係数(b) | 95%信頼区間 | P値 | 解釈 |
|---|---|---|---|---|
| 子ども心 → 幸福感 | 0.30 | 0.21 ~ 0.38 | <0.001 | 正の関連 |
| 幸福感 → バーンアウト | -0.48 | -0.572 ~ -0.377 | <0.001 | 負の関連 |
| 子ども心 → バーンアウト(直接効果) | -0.08 | -0.16 ~ 0.01 | 0.06 | 有意差なし |
| 子ども心 → 幸福感 → バーンアウト(間接効果) | -0.14 | -0.20 ~ -0.09 | (有意) | 完全媒介 |
🔹 質的研究の知見
インタビューからは以下の内容が抽出されています:
- マリオ・ヨッシーの世界観が
- 「童心に返る感覚」
- 「安心感・親しみ」
- 「気持ちが軽くなる体験」
をもたらす
- その結果として
- 気分の改善
- 精神的な疲労感の軽減
が語られていました。
本研究が示すポイント
- ゲーム → 子ども心 → 幸福感 → バーンアウト低下
という感情的経路が示唆された - 「子ども心」自体が直接バーンアウトを下げるのではなく、
幸福感を介することで影響が及ぶ点が特徴 - エスケープ(逃避)やノスタルジーを超え、日常的に使える “デジタルな小さな回復環境” としてゲームを再定義している
試験の限界
本研究には、原著でも以下のような明確な限界が存在します。
- 因果関係は証明できない
- 横断研究のため
「ゲーム → バーンアウト低下」とは断定できない
- 横断研究のため
- 自己申告データに基づく評価
- 幸福感・バーンアウトはいずれも主観指標
- 回想バイアスや社会的望ましさバイアスの影響を受ける可能性あり
- 対象が大学生に限定
- 平均年齢:22歳
- 社会人・中高年・医療従事者などへの一般化は困難
- 特定タイトルへの依存
- スーパーマリオ/ヨッシーという
「世界的に親しまれたゲーム」に限定 - 他ジャンル(FPS、ソーシャルゲーム等)では結果が異なる可能性
- スーパーマリオ/ヨッシーという
- プレイ時間・頻度の詳細評価がない
- 過剰プレイによる負の影響は評価対象外
薬剤師・医療者の視点から
本研究は治療介入を示すものではありませんが、
- 「短時間でポジティブ感情を喚起する行動」
- 「コストが低く、アクセスしやすい回復手段」
という観点から、
セルフケア・メンタルヘルス教育の補助的視点として示唆を与えます。
特に、
- 若年層
- 学生
- 初期キャリア層
におけるバーンアウト予防の “行動選択肢の一つ” として、今後、縦断研究や介入研究が求められます。
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◆まとめ
- スーパーマリオやヨッシーは
「子ども心」を喚起 → 幸福感を高め → バーンアウトリスクを下げる
という経路と関連していた - ただし、因果関係は未確立
- 「ゲーム=悪」でも「万能」でもなく、
心理的回復に寄与し得る一側面を示した研究と位置づけるのが妥当
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 横断研究の結果、スーパーマリオブラザーズやヨッシーなどの人気ビデオゲームが、プレイヤーの子供のような好奇心を育み、幸福感を高め、燃え尽き症候群のリスクを軽減する上で、有意なプラス効果を持つことを示した。
根拠となった試験の抄録
背景: 絶え間ないプレッシャーと「常にオン」の文化は、若者に真の休息の時間を奪う可能性があります。ビデオゲームは認知的逃避とリラクゼーションをもたらすことが知られていますが、「スーパーマリオブラザーズ」などの人気ビデオゲームが若者の燃え尽き症候群のリスクに及ぼす影響については、依然として重要な疑問が残っています。
目的: 本研究では、スーパーマリオブラザーズやヨッシーといった人気ビデオゲームが、子供らしい好奇心を育む可能性を、もし育めるとすればどの程度育むのかを検証した。また、これらのゲームが若年成人のバーンアウトリスクを軽減する可能性についても調査した。
方法: 混合研究法を用いた。まず、スーパーマリオブラザーズまたはヨッシーのプレイ経験を持つ大学生41名(女性19名、46.3%、男性21名、51.2%、性別非開示希望者1名、2.4%、平均年齢22.51歳、標準偏差1.52歳)を対象に、探索的かつ詳細なインタビューを実施し、質的データを収集した。次に、スーパーマリオブラザーズとヨッシーのプレイヤー336名を対象とした横断調査を実施し、量的データを収集した。この調査は、これらのゲームが子供のような好奇心、人生における全体的な幸福感、そして燃え尽き症候群のリスクに及ぼす影響を検証するものである。
結果: 詳細なインタビューから得られた知見から、プレイヤーは「スーパーマリオブラザーズ」と「ヨッシー」のゲームが子供のような好奇心を育み、人生における幸福感を高め、燃え尽き症候群のリスクを軽減する力を持っていることを高く評価していることが明らかになった。定量分析の結果、ゲームがもたらす子供のような好奇心は、若年成人の幸福感にプラスの影響を与えていることが示された(b=0.30、SE=0.04、t=6.80、95%信頼区間0.21-0.38、P<.001)。また、全体的な幸福感は、燃え尽き症候群のリスクを有意に低下させた(b=-0.48、SE=0.05、t=-9.55、95%信頼区間-0.572–0.377)。結果は、子供のような驚きが燃え尽き症候群に及ぼす影響は幸福感によって完全に媒介されており、子供のような驚きが燃え尽き症候群のリスクに直接与える影響は有意でなくなった(b=-0.08、SE=0.04、t=-1.88、95% CI -0.16~0.01、P=.06)のに対し、子供のような驚きが燃え尽き症候群のリスクに与える間接的な影響は有意であった(b=-0.14、ブートストラップSE=0.03、95% CI -0.20~-0.09)ことを示しました。
結論: 調査結果は、スーパーマリオブラザーズやヨッシーなどの人気ビデオゲームが、プレイヤーの子供のような好奇心を育み、幸福感を高め、燃え尽き症候群のリスクを軽減する上で、有意なプラス効果を持つことを示しました。本研究は、子供のような好奇心が、主流のビデオゲームが幸福感を高め、燃え尽き症候群を軽減する感情的な経路として特定した最初の研究の一つです。現実逃避やノスタルジアを超えて、本研究は、よくデザインされ、世界中で親しまれているゲームが、アクセスしやすく、レジリエンスを育むデジタルマイクロ環境としてどのように機能するかについて、新たな視点を提供しています。これらの調査結果は、ゲームとメンタルヘルスを結びつける研究に貢献し、日常的な遊びを通してメンタルウェルネスを促進することに関心を持つゲームデザイナー、教育者、医療専門家にとって実用的な示唆を持っています。
キーワード: 燃え尽き症候群、子供のような驚き、幸福、定性的研究、調査研究、ビデオゲーム
引用文献
Super Mario Bros. and Yoshi Games’ Affordance of Childlike Wonder and Reduced Burnout Risk in Young Adults: In-Depth Mixed Methods Cross-Sectional Study
Winze Tam et al. PMID: 41417495 DOI: 10.2196/84219
JMIR Serious Games. 2025 Dec 19:13:e84219. doi: 10.2196/84219.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41417495/


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