抗がん薬に伴う末梢神経障害に対するミロガバリンの有効性評価(単施設観察研究; 医療薬学 2021)

patient sitting and doctor standing behind 01_中枢神経系
Photo by RDNE Stock project on Pexels.com
この記事は約4分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

化学療法誘発の末梢神経障害に対するミロガバリンの効果は?

抗がん薬による末梢神経障害(CIPN: chemotherapy-induced peripheral neuropathy)は、がん患者の生活の質(QOL)を大きく低下させる副作用のひとつです。

特にタキサン系やプラチナ系抗がん薬により手足のしびれや感覚異常が生じ、治療の継続が困難になる場合も少なくありません。
しかし、CIPNに対して有効性が明確に示された支持療法薬は乏しく、臨床現場での課題となっています。

ミロガバリン(商品名:タリージェ®)は、末梢性神経障害性疼痛に対して承認されている新規薬剤で、カルシウムチャネルのα2δサブユニットに選択的に作用することが特徴です。

今回ご紹介するのは、CIPNに対するミロガバリンの有効性と安全性を評価した単施設のコホート研究の結果です。


試験結果から明らかになったことは?

◆試験デザイン

  • 対象:CIPNを有する21名の患者(主に膵がん、大腸がん、卵巣がん、胃がん)
  • 原因薬剤:パクリタキセル、ナブパクリタキセル、オキサリプラチン、カルボプラチン
  • 評価方法:Numerical Rating Scale(NRS)による疼痛スコア
  • 期間:2019年4月〜10月に富山大学附属病院で実施
  • 中央値年齢:68歳
  • 投与量調整:腎機能(CCr値)に基づき薬剤師が適正化

◆主な結果

◆主な有効性指標

アウトカム結果
NRSスコア(全体)中央値6 → 2へ有意に改善(P<0.001)
効果発現までの日数中央値29.5日(範囲 7–77日)
タキサン系群中央値5 → 3へ改善(P<0.01)
プラチナ系群中央値6 → 0へ改善(P<0.05)
有効例数21例中18例で改善(86%)

◆安全性

副作用発現人数(割合)
傾眠(Grade1–2)4名(19%)
浮腫(Grade1–2)4名(19%)
浮腫(Grade3)1名(5%、投与中止に至る)
入院を要する重篤副作用なし

◆考察

  • ミロガバリンはタキサン系・プラチナ系いずれのCIPNにも有効性が示唆されました。
  • 従来の支持療法薬デュロキセチンと比較しても、幅広い薬剤に起因するCIPNに効果が見られた点は臨床的に重要です。
  • 副作用は傾眠や浮腫が主体で、プレガバリンと比べて忍容性は良好と考えられます。
  • 投与開始時に薬剤師が腎機能を評価し適正投与を行ったことが、安全性の確保に寄与したと考えられます。

◆試験の限界

  • 単施設・少数例(21例)の後方視的研究であること
  • 投与レジメンの偏り(膵がん治療レジメンが多数)
  • 効果判定時期に統一性がない

◆今後の検討課題

  • 多施設・大規模臨床試験による再現性確認
  • 他剤との比較試験
  • 長期安全性の評価

◆まとめ

ミロガバリンは、抗がん薬に伴う末梢神経障害に対して疼痛を有意に改善し、忍容性も比較的良好であることが示されました。CIPNに対する有効な支持療法薬の候補として、今後さらなる検証が期待されます。

単施設での検証かつ小規模な検証結果であることから再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

sparkling fireworks display in night sky

✅まとめ✅ 単施設のコホート研究の結果、ミロガバリンは化学療法による末梢神経障害性疼痛(CIPN)に対して緩和効果を有し、化学療法における重要な支持療法薬となり得ることが示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は患者の生活の質(QOL0)を低下させるが、既存の支持療法薬に関するエビデンスは乏しい。ミロガバリンは末梢神経障害性疼痛を適応とする新規薬剤であり、その作用機序は電圧依存性カルシウムチャネルα2δサブユニットへの強力かつ選択的な結合を伴う。我々はミロガバリンのCIPNに対する効果を検討した。

方法:タキサン系またはプラチナ系抗がん剤によるCIPN患者21名を対象に、ミロガバリン投与開始後の経過を追跡した。評価には数値評価尺度(NRS)を用い、全患者において投与開始時のミロガバリン用量をクレアチニンクリアランスに基づき薬剤師が評価した。

結果:過剰投与は発生しなかった。ミロガバリンはNRSスコアを中央値6から2へ有意に減少させた(P<0.001)。最良効果判定までの投与日数中央値は29.5日であった。さらに、タキサン系抗がん剤群とプラチナ系抗がん剤群の両方で、ミロガバリン投与によりNRS中央値が有意に低下した。安全性調査では、眠気グレード1または2が4例、浮腫グレード1または2が4例、浮腫グレード3が1例認められた。入院を要する重篤な副作用は認められなかった。

結論:本研究は、ミロガバリンが化学療法による末梢神経障害性疼痛(CIPN)に対して緩和効果を有し、化学療法における重要な支持療法薬となり得ることを示唆している。同時に、ミロガバリン導入後は薬剤師が腎機能を評価し適正使用に貢献することで、患者が薬剤の最大効果を期待できると考えられる。

引用文献

抗がん薬に伴う末梢神経障害に対するミロガバリンの有効性評価. 石川 et al. 医療薬学47(1); 1-9: 2021.

コメント

タイトルとURLをコピーしました