帯状疱疹の発症リスクが高まる時期は?―季節性があるとするのは本当か?(MDVプレスリリースを受けて; 2025年7月30日)

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帯状疱疹リスクの季節性

2025年4月から、65歳以上を対象とした帯状疱疹ワクチンの定期接種が日本で始まり、同年3月には「帯状疱疹診療ガイドライン2025」も初版が発刊されるなど、帯状疱疹の予防と管理への関心が高まっています。

さらに最近では、帯状疱疹ワクチン接種によって認知症リスクの低下や心血管疾患リスクの抑制が報告され、単なる皮膚の疾患にとどまらない影響が注目されています。

そんな中、国内における帯状疱疹の発症時期には季節性があるのかを検証した最新の大規模データ(MDV)が報告されました。以下、その内容をわかりやすく解説します。


夏から秋にかけて、患者数が増加

メディカル・データ・ビジョン(MDV)は、自社が保有する全国317医療機関の診療データ(2019年1月~2025年3月)を用いて、帯状疱疹の発症傾向を調査しました。

◆ 年間の患者数推移(2019~2025年データより)

  • 2月は患者数が最も少なく、3月から春にかけて増加
  • 7月〜10月にかけて再び増加傾向
  • 11月〜1月は横ばい〜やや減少傾向

この結果から、帯状疱疹の発症には「夏から秋にかけての季節性」があることが示唆されました。
MDVはその要因として以下を挙げています。

  • 夏の疲労蓄積
  • 気温・湿度の変動
  • 季節による免疫力の低下

とくに高齢者では免疫機能(抵抗力)の変動が症状の引き金になりやすいと考えられています。


年齢・性別による傾向:70代以上の女性に多い

データ分析では、年齢とともに発症リスクが高まる傾向が見られ、70代で患者数が最も多い結果となりました。

また、女性のほうがやや多く発症している点も特徴です。


帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクは?

帯状疱疹に続発する帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia, PHN)は、高齢になるほど発症リスクが上昇することが知られています。

今回の報告でも、

  • PHNの発症率は年齢とともに増加
  • 80代が最も高リスク
  • 性別では男性のほうがやや多い

という傾向が明らかになりました。


使用されている治療薬と処方動向

調査では、帯状疱疹治療に用いられる抗ウイルス薬の処方傾向についても触れられており、以下の薬剤が多く使用されていました。

  • アシクロビル
  • バラシクロビル

全体的に大きな変動はありませんが、アシクロビルは2021年以降にやや増加傾向がみられています。


おわりに:予防の重要性と季節に応じた対策を

夏から秋にかけての季節に帯状疱疹の発症が増加する傾向があることが、今回の大規模データから明らかになりました。

高齢者を中心に発症リスクが高まること、帯状疱疹後の神経痛という後遺症のリスクもあることから、発症予防のためのワクチン接種や、季節に応じた体調管理が今後ますます重要となります。

日本のデータベースを用いていることから、結果の外挿性は高いと考えられます。引き続き追っていきたいテーマですね。

続報に期待。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会編:帯状疱疹診療ガイドライン2025
  2. Pomirchy M, et al. JAMA. 2025; 333: 2083-2092. PMID: 40267506
  3. Eyting M, et al. Nature. 2025; 641: 438-446. PMID: 40175543
  4. Lee S, et al. Eur Heart J. 2025 May 5:ehaf230. PMID: 40324473
  5. 帯状疱疹、7月から増える傾向 医療ビッグデータで患者数推移などを抽出. MDVプレスリリース. 2025/7/30

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