心血管疾患の二次予防にコルヒチンは有効か?(RCTのメタ解析; Atherosclerosis. 2024)

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抗炎症薬「コルヒチン」は心筋梗塞・脳卒中の再発予防に使えるのか?

近年、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の再発予防において、「炎症の制御」が注目されており、その代表的薬剤のひとつが「コルヒチン(Colchicine)」です。
コルヒチンは本来、痛風やベーチェット病の治療に用いられる抗炎症薬ですが、心筋梗塞後の炎症反応を抑制する効果が期待され、複数のランダム化比較試験(RCT)が実施されてきました。

しかし、これまでの結果は有効性と安全性の点で一貫していないため、今回のメタ解析では、二次予防としてのコルヒチンの有効性とリスクを明確に評価することが目的とされました。

試験結果から明らかになったことは?

試験デザインと概要

項目内容
研究デザインRCTのシステマティックレビューおよびメタ解析
対象冠動脈疾患または脳卒中の既往を有するASCVD患者
試験数9報(計30,659例)
コルヒチン群/対照群15,255例/15,404例
解析方法固定効果モデル(intention-to-treat解析)

主な結果

評価項目相対リスク(RR)95%信頼区間有意差
主要複合アウトカム(心血管死+心筋梗塞+脳卒中)0.880.81–0.95P=0.002(有意)
心筋梗塞0.840.73–0.97P=0.016(有意)
脳卒中0.900.80–1.02P=0.09(有意差なし)
心血管死0.940.78–1.13P=0.5(有意差なし)
消化器系有害事象による入院1.351.10–1.66P=0.004(有意に増加)
肺炎・がん・非心血管死による入院群間差なし

コメント

このメタ解析は、コルヒチンが心血管疾患の二次予防として一定の効果を持つことを示した重要な報告です。とくに、心筋梗塞の再発リスクを約16%、主要心血管イベント全体では12%低下させており、他の抗血小板薬やスタチンとの併用による相加的な予防効果が期待されます。

一方で、消化器系副作用(下痢、吐き気、腹痛など)による入院が有意に増加しており、全体の忍容性が課題とされています。また、心血管死や脳卒中に関しては統計学的に有意な差が出なかった点には注意が必要です。

このことから、コルヒチンは“全員に投与すべき薬”というよりは、高リスク群や再発リスクの高い患者を対象に、個別に投与の適応を検討した方が良い薬剤と言えるでしょう。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、冠動脈疾患や脳卒中の既往を有する患者において、コルヒチンは主要心血管イベントを12%抑制した。

根拠となった試験の抄録(日本語訳)

背景と目的:コルヒチンによる動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次予防に関するランダム化試験では、結果が一貫していない。本研究では、ASCVD患者を対象としたコルヒチンとプラセボまたは非投与の比較に関するRCTを対象に、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。

方法:固定効果モデルを用い、intention-to-treat解析により解析を行った。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカムとした。

結果:9試験、30,659人(コルヒチン15,255人、対照15,404人)が含まれた。主要複合アウトカムについて、コルヒチン群の相対リスクは0.88(95% CI: 0.81–0.95, P=.002)であった。内訳は、心血管死RR 0.94(P=.5)、心筋梗塞RR 0.84(P=.016)、脳卒中RR 0.90(P=.09)であった。消化器イベントによる入院はRR 1.35(P=.004)と有意に増加したが、肺炎、新規がん、非心血管死による入院リスクは上昇しなかった。

結論:冠動脈疾患や脳卒中の既往を有する患者において、コルヒチンは主要心血管イベントを12%抑制した。

引用文献

Colchicine in secondary prevention of atherosclerotic cardiovascular disease: A systematic review and meta-analysis
Bazarbashi N, Lopes RD, Berwanger O, et al.
PMID: 40314334
Atherosclerosis. 2024 Apr 17;389:117372. doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2024.117372.
ー 続きを読む:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40314334/

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