白人とアジア人でGLP-1受容体作動薬の効果に差がある？
心血管アウトカム試験（CVOT）において、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬（GLP-1RA）は、白人と比較してアジア人においてより高い心血管効果を示すことが示唆されていますが、充分に検証されていません。
そこで今回は、GLP-1RAの心血管系に対する有効性をアジア人と白人で比較することを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
メタ解析のためのデータ源はPubMedおよびClinicalTrials.govであり、系統的レビューが行われました（2015年1月1日～2024年11月1日）。対象は、GLP-1RAのランダム化プラセボ対照CVOTでした。バイアスリスクについても評価されました（RoB 2）。本解析では、主要有害心血管イベント（MACE）の民族特異的ハザード比（HR）が用いられました。
試験結果から明らかになったことは？
PRISMA（Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses：系統的レビューとメタ解析のための優先的報告項目）ガイドラインに従ったランダム効果メタ解析において、8試験（アジア人5,909例、白人55,855例）が対象となりました。
| アジア人 | 白人 | |
| GLP-1RA関連MACE | HR 0.69 （95％CI 0.58～0.83） | HR 0.85 （95％CI 0.79～0.91） 交互作用のP=0.045 |
| MACEリスクの絶対減少率 | 2.9％ （95％CI 1.5～4.2） | 1.4％ （95%CI 0.9～1.9） |
GLP-1RA関連MACE HRはアジア人で0.69（95％CI 0.58～0.83）、白人で0.85（95％CI 0.79～0.91）でした（交互作用のP=0.045）。
また、MACEリスクの絶対減少率はアジア人で2.9％（95％CI 1.5～4.2）であったのに対し、白人では1.4％（0.9～1.9）でした。
コメント
白人と比較して、アジア人の方がGLP-1受容体作動薬による心血管イベントのリスク減少効果をより得られる可能性があります。しかし、実臨床における比較検証は充分に行われていません。
さて、メタ解析の結果、GLP-1RAは白人と比較してアジア人でMACEをより減少させる可能性が示唆されました。
アジア人の中でも、より効果が得られる民族については明らかとなっていません。あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、主要有害心血管イベント（MACE）のリスク減少効果が大きいことについて再現性の確認も含め更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ メタ解析の結果、GLP-1受容体作動薬は白人と比較してアジア人でMACEリスクをより減少させる可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景：心血管アウトカム試験（CVOT）において、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬（GLP-1RA）は、白人と比較してアジア人においてより高い心血管効果を示すことが示唆されている。
目的：GLP-1RAの心血管系に対する有効性をアジア人と白人で比較する。
データ源：PubMedおよびClinicalTrials.govの系統的レビュー（2015年1月1日～2024年11月1日）。
試験選択：GLP-1RAの無作為化プラセボ対照CVOT。バイアスリスクを評価した（RoB 2）。
データ抽出：主要有害心血管イベント（MACE）の民族特異的ハザード比（HR）。
データの統合：PRISMA（Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses：系統的レビューとメタ解析のための優先的報告項目）ガイドラインに従ったランダム効果メタ解析で、8試験（アジア人5,909例、白人55,855例）を対象とした。GLP-1RA関連MACE HRはアジア人で0.69（95％CI 0.58～0.83）、白人で0.85（95％CI 0.79～0.91）であった（交互作用のP=0.045）。MACEリスクの絶対減少率はアジア人で2.9％（95％CI 1.5～4.2）であったのに対し、白人では1.4％（0.9～1.9）であった。
試験の限界：個々の患者レベルのデータが不足していたため、アジア人グループの詳細なサブクラス分類は不可能であった。
結論：GLP-1RAは白人と比較してアジア人でMACEをより減少させる可能性がある。
引用文献
Comparative Efficacy of Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists for Cardiovascular Outcomes in Asian Versus White Populations: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Trials of Populations With or Without Type 2 Diabetes and/or Overweight or Obesity
Matthew M Y Lee et al. PMID: 39977628 DOI: 10.2337/dc24-1533
Diabetes Care. 2025 Mar 1;48(3):489-493. doi: 10.2337/dc24-1533.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39977628/
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