NSAID誘発下部消化管障害に対するレバミピドの予防効果は?(データベース研究; Sci Rep. 2022)

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NSAIDs誘発下部消化管障害リスクとレバミピド併用との関連性は?

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、その解熱、鎮痛、抗炎症作用のために広く使用されています。しかし、NSAIDsによる下部消化管障害の様々な側面は不明なままであり、有効な予防法は確立されていません。レバミピドの薬理作用と臨床試験から、レバミピドは下部消化管障害を予防する可能性がありますが、試験規模が小さいため、そのエビデンスは限られています。

そこで今回は、FDA有害事象報告システム(FAERS)および日本の有害事象報告データベース(JADER)を用い、レバミピドとロキソプロフェンおよびジクロフェナクとの併用によるNSAID誘発性下部消化管障害の予防効果を評価した研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

NSAID誘発性下部消化管障害の予防効果ロキソプロフェン+レバミピドジクロフェナク+レバミピド
FAERS報告オッズ比 1.15
(95%CI 0.88~1.51
報告オッズ比 1.28
(95%CI 0.82~2.01
JADER報告オッズ比 0.50
(95%CI 0.35~0.71
報告オッズ比 0.43
(95%CI 0.27~0.67

算出されたレバミピドとロキソプロフェンおよびジクロフェナク併用時の報告オッズ比および95%信頼区間(CI)は、FAERSではそれぞれ1.15(95%CI 0.88~1.51)および1.28(95%CI 0.82~2.01)、JADERではそれぞれ0.50(95%CI 0.35~0.71)および0.43(95%CI 0.27~0.67)でした。

薬剤を併用してもシグナルは検出されませんでした。

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NSAIDsは上部消化管障害を引き起こすことが知られていますが、下部消化管障害も引き起こす可能性があることが明らかになっています。下部消化管障害には、プロスタグランジン産生の減少による粘膜保護因子の減少、ミトコンドリア機能不全による酸化ストレス、腸内細菌叢の恒常性の破壊に伴うグラム陰性細菌の増加が関連しているとされています。しかし、NSAIDsによる下部消化管障害のいくつかの側面は依然として不明であり、効果的な予防法は確立されていません。

さて、有害事象報告データベースを用いた研究の結果、NSAID誘発下部消化管傷害に対してレバミピド併用による予防効果が示唆されました。併用による有害事象のシグナル検出はありませんでした。

あくまでも相関関係が示されたにすぎず、コホート研究やランダム化比較試験と比較して、交絡因子の調整はさらに不充分であるといえます。とはいえ、これまでの研究結果と同様の結果が示されていることは注目に値します。

レバミピドは、プロスタグランジンの生成増加により粘膜を保護し、フリーラジカルスカベンジャーとしてのスーパーオキシドの生成を阻害することで抗酸化作用を発揮するとされています。このため、NSAIDs使用に伴う下部消化管障害に対して、レバミピド予防投与が有効であると考えられますが、これまでに報告された研究は症例数が限られています。一方、メタ解析も行われているため、次はメタ解析の論文を参照してみようと思います。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 有害事象報告データベースを用いた研究の結果、NSAID誘発下部消化管傷害に対してレバミピド併用による予防効果が示唆された。併用による有害事象のシグナル検出はなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、その解熱、鎮痛、抗炎症作用のために広く使用されている。しかし、NSAIDによる下部消化管障害の様々な側面は不明なままであり、有効な予防法は確立されていない。レバミピドの薬理作用と臨床試験から、レバミピドは下部消化管障害を予防する可能性があるが、試験規模が小さいため、そのエビデンスは限られている。

方法:本研究では、FDA有害事象報告システム(FAERS)および日本の有害事象報告データベース(JADER)を用いて、レバミピドとロキソプロフェンおよびジクロフェナクとの併用によるNSAID誘発性下部消化管障害の予防効果を評価した。

結果:算出されたレバミピドとロキソプロフェンおよびジクロフェナク併用時の報告オッズ比および95%信頼区間(CI)は、FAERSではそれぞれ1.15(95%CI 0.88~1.51)および1.28(95%CI 0.82~2.01)、JADERではそれぞれ0.50(95%CI 0.35~0.71)および0.43(95%CI 0.27~0.67)であった。薬剤を併用してもシグナルは検出されなかった。

結論:これらの結果は、NSAID誘発下部消化管傷害に対するレバミピドの予防効果を示唆している。

引用文献

Preventive effect of rebamipide on NSAID-induced lower gastrointestinal tract injury using FAERS and JADER
Toru Ima et al. PMID: 35173236 PMCID: PMC8850592 DOI: 10.1038/s41598-022-06611-y
Sci Rep. 2022 Feb 16;12(1):2631. doi: 10.1038/s41598-022-06611-y.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35173236/

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