抗精神病薬による体重増加患者におけるセマグルチドまたはメトホルミンによる肥満の管理は有用ですか?(コホート研究; MOSA試験; BMC Psychiatry. 2024)

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抗精神病薬による体重増加に対してもセマグルチドは有効なのか?

抗精神病薬による体重増加(Antipsychotic-induced weight gain, AIWG)は、患者にとっても臨床医にとっても重大な臨床的課題であり、抗精神病薬を使用している患者において体重増加を予防あるいは回復させるための適切な介入が必要です。

グルカゴン様ペプチド1(Glucagon-like peptide 1, GLP-1)アゴニストは肥満症に対する新しい治療法として最近注目を集めています。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは顕著な体重減少をもたらすことが証明されていますが、AIWG患者における検証は充分に行われていません。

そこで今回は、セマグルチドがAIWG患者の体重減少にも同様に有効かどうかを検討した前向きコホート研究の結果をご紹介します。

日常外来診療におけるAIWGの治療に対する経口セマグルチドの有効性と安全性を評価する目的で、前向き非ランダム化コホート研究が行われました。その後、メトホルミンを服用しているAIWG患者である対照群と比較されました。

試験結果から明らかになったことは?

16週後の平均体重減少
(95%CI)
セマグルチド群(n=10)4.5kg(-6.7 〜 -2.3kg
p<0.001
平均体重減少 4%
メトホルミン群(n=26)2.9kg(-4.5 〜 -1.4kg
p<0.001
平均体重減少 2.5%

16週後の平均体重減少は、セマグルチド群(n=10)では4.5kg(95%信頼区間(CI) -6.7 〜 -2.3kg、p<0.001)であったのに対し、メトホルミン群(n=26)では2.9kg(95%CI -4.5 〜 -1.4kg、p<0.001)でした。これはセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%の平均体重減少に相当します。

セマグルチド群
(95%信頼区間)
メトホルミン群
(95%信頼区間)
体格指数(BMI)の減少-1.7kg/m2
-2.4 〜 -1.0kg/m2
p<0.001
-0.8kg/m2
-1.4 ~ -0.3kg/m2
p=0.001
ウエスト周囲径の減少-6.8cm
-9.7 〜 -3.8cm
p<0.001
-3.4cm
-5.4 ~ -1.3cm
p=0.001

体格指数(BMI)とウエスト周囲径のそれぞれの減少は、セマグルチド群で-1.7kg/m2(95%信頼区間 -2.4 〜 -1.0kg/m2、p<0.001)、-6.8cm(95%信頼区間 -9.7 〜 -3.8cm、p<0.001)、メトホルミンで観察された減少は-0.8kg/m2(95%CI -1.4 ~ -0.3kg/m2、p=0.001)、-3.4cm(95%CI -5.4 ~ -1.3cm、p=0.001)でした。両群間の差は統計学的に有意ではありませんでした。

両群とも、副作用は一般的に軽度かつ一過性で、主に吐き気でした。

さらに、精神症状は軽減し、QOLは改善しました。

コメント

GLP-1受容体作動薬は、抗糖尿病薬として承認されましたが、消化器系の副作用の他に体重減少が支援され、抗肥満薬として使用されている製剤もあります。抗精神病薬の副作用として、しばしば体重増加がありますが、これに対するGLP-1受容体作動薬の効果検証は充分に行われていません。

さて、前向きコホート研究の結果、経口セマグルチドは精神科患者にとって実行可能で有効かつ安全な治療選択肢である可能性が示唆されました。メトホルミンでも体重減少効果が示されていますが、セマグルチドの方が、より大きな体重減少効果を示しています。

本試験はコホート研究であり、再現性の確認を含めて更なる検証が求められるところではありますが、抗精神病薬の使用に伴う体重増加に対しても、セマグルチドによる体重減少効果(体重増加抑制効果)が示されました。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 前向きコホート研究の結果、経口セマグルチドは精神科患者にとって実行可能で有効かつ安全な治療選択肢である可能性が示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:抗精神病薬による体重増加(Antipsychotic-induced weight gain, AIWG)は、患者にとっても臨床医にとっても重大な臨床的課題であり、抗精神病薬を使用している患者において体重増加を予防あるいは回復させるための適切な介入が必要である。グルカゴン様ペプチド1(Glucagon-like peptide 1, GLP-1)アゴニストは肥満症に対する新しい治療法として最近注目を集めている。セマグルチド(GLP-1作動薬)は顕著な体重減少をもたらすことが証明されている。本研究では、セマグルチドがAIWG患者の体重減少にも同様に有効かどうかを検討した。

方法:日常外来診療におけるAIWGの治療に対する経口セマグルチドの有効性と安全性を評価する目的で、前向き非ランダム化コホート研究を行った。その後、その結果をメトホルミンを服用しているAIWG患者の対照群と比較した。

結果:16週後の平均体重減少は、セマグルチド群(n=10)では4.5kg(95%信頼区間(CI) -6.7 〜 -2.3kg、p<0.001)であったのに対し、メトホルミン群(n=26)では2.9kg(95%CI -4.5 〜 -1.4kg、p<0.001)であった。これはセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%の平均体重減少に相当する。体格指数(BMI)とウエスト周囲径のそれぞれの減少は、セマグルチド群で-1.7kg/m2(95%信頼区間 -2.4 〜 -1.0kg/m2、p<0.001)、-6.8cm(95%信頼区間 -9.7 〜 -3.8cm、p<0.001)であった。メトホルミンで観察された減少は-0.8kg/m2(95%CI -1.4 ~ -0.3kg/m2、p=0.001)、-3.4cm(95%CI -5.4 ~ -1.3cm、p=0.001)であった。両群間の差は統計学的に有意ではなかった。両群とも、副作用は一般的に軽度かつ一過性で、主に吐き気であった。さらに、精神症状は軽減し、QOLは改善した。

結論:経口セマグルチドは精神科患者にとって実行可能で有効かつ安全な治療選択肢である。しかし、これらの所見を裏付けるためにはさらなる調査が必要である。

キーワード:抗精神病薬による体重増加;GLP-1アゴニスト;メトホルミン;肥満;セマグルチド

引用文献

Management of obesity with semaglutide or metformin in patients with antipsychotic-induced weight gain (MOSA): a non-randomised open-label pilot study
Bea Campfort et al. PMID: 39616309 PMCID: PMC11607825 DOI: 10.1186/s12888-024-06317-7
BMC Psychiatry. 2024 Nov 30;24(1):865. doi: 10.1186/s12888-024-06317-7.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39616309/

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