心房細動患者における頭蓋内出血リスクの比較:直接経口抗凝固療法 vs. 抗血小板療法(SR&MA; JAMA Netw Open. 2024)

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頭蓋内出血リスクに差はあるのか?

心房細動患者に対して、臨床医は経口抗凝固療法よりも抗血小板療法を処方することが多いです。これは、直接経口抗凝固薬(DOAC)による脳卒中予防効果が低いにもかかわらず、頭蓋内出血のリスクが高いという懸念と関連している可能性があります。

そこで今回は、抗血小板薬単剤療法と比較してDOAC療法が頭蓋内出血および大出血のリスク上昇と関連するかどうかを検討するメタ解析の結果をご紹介します。

PubMedおよびEmbaseデータベースの創刊から2024年2月7日までの系統的検索が行われました。DOAC療法と単剤抗血小板療法を比較したランダム化比較試験が対象となりました。追跡期間が30日未満またはサンプルサイズが200未満の試験は除外されました。

本試験はPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従い実施されました。データは2人の研究者が独立して抽出しました。プールされた治療効果および95%CIを報告するためにランダム効果メタ解析モデルが用いられました。

本解析の主要アウトカムは頭蓋内出血の発生でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計9件のランダム化比較試験が対象となりました(45,494人)。

平均追跡期間 17.1ヵ月DOAC療法抗血小板療法オッズ比 OR
(95%CI)
頭蓋内出血0.55%0.48%OR 1.15
0.71~1.88
I2=53.7%

DOAC療法は抗血小板療法と比較して頭蓋内出血の有意な高オッズとは関連しませんでしたが(試験の平均追跡期間 17.1ヵ月で 0.55% vs. 0.48%;オッズ比[OR] 1.15、95%CI 0.71~1.88)、試験間で異質性が認められました(I2=53.7%)。

頭蓋内出血リスク
OR(95%CI)
リバーロキサバンOR 2.09(1.20~3.64
ダビガトランOR 1.00(0.61~1.64
アピキサバンOR 0.72(0.44~1.17

DOAC薬剤別の解析では、頭蓋内出血リスクに関するそれぞれの推定値は以下の通りでした;リバーロキサバン OR 2.09、95%CI 1.20~3.64;ダビガトラン OR 1.00、95%CI 0.61~1.64;アピキサバン OR 0.72、95%CI 0.44~1.17)。

平均追跡期間 15.5ヵ月DOAC療法抗血小板療法オッズ比 OR
(95%CI)
大出血2.41%1.76%OR 1.39
1.07~1.80
大出血リスク
OR(95%CI)
リバーロキサバンOR 1.91( 1.22~3.00
ダビガトランOR 1.21(0.86~1.69
アピキサバンOR 1.09(0.73~1.63

全体として、DOAC療法は抗血小板療法と比較して大出血のオッズが高いことが示されました(平均追跡期間 15.5ヵ月で 2.41% vs. 1.76%;OR 1.39、95%CI 1.07~1.80)。 リバーロキサバンのOR 1.91(95%CI 1.22~3.00)、ダビガトランのOR 1.21(95%CI 0.86~1.69)、アピキサバンのOR 1.09(95%CI 0.73~1.63)であった。

コメント

抗血小板薬単剤療法と比較してDOAC療法が頭蓋内出血および大出血のリスク上昇と関連するかどうかは充分に検証されていません。

さて、系統的レビューおよびメタ解析において、DOAC療法は抗血小板療法と比較して頭蓋内出血のリスクを有意に高めるものではありませんでしたが、大出血のリスクを高めるものでした。

心房細動患者において、特に出血リスクの高い患者においては、DOACよりもアスピリンの処方が多いことが報告されています(文献1文献2)。ただし、いずれの報告も米国を中心としたものであり、日本人に外挿するのは困難です。

とはいえ、同様のケースが想定されることから、出血リスクの高い心房細動患者においては、DOACよりもアスピリンの方が良いかもしれません。一方、DOACを使用する場合、アピキサバン(商品名:エリキュース)が良さそうです。

解析対象となった文献数が10件未満であること、白人を中心とした報告であることから、日本人に外挿する場合は結果を慎重に判断する必要があります。

アジア人でも同様の結果が示されるか否か、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 系統的レビューおよびメタ解析において、DOAC療法は抗血小板療法と比較して頭蓋内出血のリスクを有意に高めるものではなかったが、大出血のリスクを高めるものであった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:心房細動患者に対して、臨床医は経口抗凝固療法よりも抗血小板療法を処方することが多いが、これは直接経口抗凝固薬(DOAC)は脳卒中予防効果が低いにもかかわらず、頭蓋内出血のリスクが高いという懸念と関連している可能性がある。

目的:抗血小板薬単剤療法と比較してDOAC療法が頭蓋内出血および大出血のリスク上昇と関連するかどうかを検討する。

データ源:PubMedおよびEmbaseデータベースの創刊から2024年2月7日までの系統的検索を行った。

研究の選択:DOAC療法と単剤抗血小板療法を比較したランダム化比較試験を対象とした。追跡期間が30日未満またはサンプルサイズが200未満の試験は除外した。

データの抽出と統合:本試験はPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従った。データは2人の研究者が独立して抽出した。プールされた治療効果および95%CIを報告するためにランダム効果メタ解析モデルが用いられた。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは頭蓋内出血の発生とした。

結果:合計9件のランダム化比較試験が対象となった(45,494人)。DOAC療法は抗血小板療法と比較して頭蓋内出血の有意な高オッズとは関連しなかったが(試験の平均追跡期間 17.1ヵ月で 0.55% vs. 0.48%;オッズ比[OR] 1.15、95%CI 0.71~1.88)、試験間で異質性が認められた(I2=53.7%)。DOAC薬剤別の解析では、頭蓋内出血リスクに関するそれぞれの推定値は以下の通りであった;リバーロキサバン OR 2.09、95%CI 1.20~3.64;ダビガトラン OR 1.00、95%CI 0.61~1.64;アピキサバン OR 0.72、95%CI 0.44~1.17)。全体として、DOAC療法は抗血小板療法と比較して大出血のオッズが高かった(平均追跡期間 15.5ヵ月で 2.41% vs. 1.76%;OR 1.39、95%CI 1.07~1.80)。 リバーロキサバンのOR 1.91(95%CI 1.22~3.00)、ダビガトランのOR 1.21(95%CI 0.86~1.69)、アピキサバンのOR 1.09(95%CI 0.73~1.63)であった。

結論と関連性:この系統的レビューおよびメタ解析において、DOAC療法は抗血小板療法と比較して頭蓋内出血のリスクを有意に高めるものではなかったが、大出血のリスクを高めるものであった。これらの所見は、ICHのリスクに関して抗血小板療法と比較したDOACの安全性を支持し、現在の心房細動ガイドラインの遵守を強化するものである。

引用文献

Risk of Intracranial Hemorrhage Associated With Direct Oral Anticoagulation vs Antiplatelet Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis
Mark Coyle et al. PMID: 39630447 PMCID: PMC11618459 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.49017
JAMA Netw Open. 2024 Dec 2;7(12):e2449017. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.49017.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39630447/

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