少関節型PsAに対するアプレミラストの効果は?
少関節型乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬において頻度が高い疾患ですが、ほとんど研究されていないません。
そこで今回は、初期の少関節型PsAにおけるアプレミラスト(商品名:オテズラ)の有効性を評価することを目的に実施されたランダム化比較試験(FOREMOST試験)の結果をご紹介します。
FOREMOST試験(NCT03747939)は、第4相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。患者は早期(症状持続期間5年以下)の小関節型PsA(腫脹関節が1個以上4個以下、圧痛関節が1個以上4個以下、活動関節が2~8個)でした。患者はアプレミラスト30mg1日2回投与群とプラセボ群に2:1でランダムに割り付けられ、24週間投与されました。
本試験の主要評価項目は、センチネル関節(ベースライン時に罹患していた関節)に基づき、16週目に最小疾患活動性(MDA)関節(腫脹関節1関節以下、圧痛関節1関節以下を必須とするMDAの修正)を達成した患者の割合であり、非反応者のインピュテーションと多重インピュテーションを併用しました。探索的解析ではすべての関節が評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された308例(アプレミラスト:n=203、プラセボ:n=105)のうち、平均(SD)PsA罹病期間は9.9(10.2)ヵ月、平均年齢は50.9(SD 12.5)歳、39.9%の患者が従来の合成疾患修飾性抗リウマチ薬を使用していました。
MDA関節を達成した患者の割合 | アプレミラスト群 | プラセボ群 |
センチネル関節(主要評価項目) | 33.9% p=0.0008 | 16.0% |
全関節 | 21.3% 名目上のp=0.0028 | 7.9% |
MDA-関節(センチネル関節(主要評価項目)および全関節)は、16週目にアプレミラスト投与群(33.9%および21.3%)がプラセボ投与群(16.0%および7.9%)より有意に多く達成されました(それぞれp=0.0008および名目上のp=0.0028)。
患者報告アウトカム、臨床的疾患活動性、皮膚病変においても、アプレミラスト投与群でプラセボ投与群より大きな改善が認められました。
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乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis, PsA)は、乾癬を患っている人に発症することのある慢性的な関節炎です。免疫系の異常によって引き起こされ、関節に炎症が起こることで痛みや腫れが生じます。乾癬性関節炎は多様な症状を呈するため、いくつかのサブタイプに分類され、その一つに少数関節型乾癬性関節炎(Oligoarticular Psoriatic Arthritis)があります。PsA全体の約30~50%を占めるとされていますが、本サブタイプに対するアプレミラストの有効性・安全性の検証は充分ではありません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、初期の少関節型PsAを対象において、16週間のアプレミラスト投与が臨床的アウトカムと患者報告アウトカムを改善することが示されました。
乾癬性関節炎のサブタイプの一つである小関節型PsAに対しても有効なようです。再現性の確認を含め、より長期的な検証が用いられます。
続報に期待。
なお、P値は以下の3つに分類できます。基本的には、主要評価項目として設定されたアウトカムに対するサンプルサイズに基づき検証的なP値が設定されます。
- 検証的p値:事前に検出力(1 – βエラー)を制御してサンプルサイズを決定し、αエラーに対する多重性への対処が行われているP値。主要評価項目の統計解析で用いられる。
- 検証的ではないが多重性を制御したp値:事前にサンプルサイズは決められていないが、αエラーに対する多重性への対処が行われているP値。主に副次評価項目の統計解析が該当する。
- 名目上のp値…事前にサンプルサイズは決められておらず、αエラーに対する多重性への対処もされていない場合のP値。探索的な評価項目など事後解析(事前設定解析を除く)で用いられる。
✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、初期の少関節型PsAを対象において、16週間のアプレミラスト投与が臨床的アウトカムと患者報告アウトカムを改善することが示された。
根拠となった試験の抄録
目的:少関節型乾癬性関節炎(PsA)は頻度が高いが、ほとんど研究されていない。目的は、初期の少関節型関節性PsAにおけるアプレミラスト(商品名:オテズラ)の有効性を評価することである。
方法:FOREMOST試験(NCT03747939)は、第4相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。患者は早期(症状持続期間5年以下)の小関節型関節性PsA(腫脹関節が1個以上4個以下、圧痛関節が1個以上4個以下、活動関節が2~8個)であった。患者はアプレミラスト30mg1日2回投与群とプラセボ群に2:1でランダムに割り付けられ、24週間投与された。
主要評価項目は、センチネル関節(ベースライン時に罹患していた関節)に基づき、16週目に最小疾患活動性(MDA)関節(腫脹関節1関節以下、圧痛関節1関節以下を必須とするMDAの修正)を達成した患者の割合とし、非反応者のインピュテーションと多重インピュテーションを併用した。探索的解析ではすべての関節を評価した。
結果:ランダム化された308例(アプレミラスト:n=203、プラセボ:n=105)のうち、平均(SD)PsA罹病期間は9.9(10.2)ヵ月、平均年齢は50.9(SD 12.5)歳、39.9%の患者が従来の合成疾患修飾性抗リウマチ薬を使用していた。MDA-関節(センチネル関節(主要評価項目)および全関節)は、16週目にアプレミラスト投与群(33.9%および21.3%)がプラセボ投与群(16.0%および7.9%)より有意に多く達成された(それぞれp=0.0008および名目上のp=0.0028)。患者報告アウトカム、臨床的疾患活動性、皮膚病変においても、アプレミラスト投与群でプラセボ投与群より大きな改善が認められた。
結論:FOREMOST試験は初期の少関節型関節性PsAを対象にデザインされた最初のランダム化比較試験であり、アプレミラストが臨床的アウトカムと患者報告アウトカムを改善することが示された。本試験は、これらの患者におけるPsAの最適な管理に役立つであろう。
試験登録番号:NCT03747939
キーワード:抗炎症薬、非ステロイド;抗リウマチ薬;関節炎、乾癬性
引用文献
Treatment of early oligoarticular psoriatic arthritis with apremilast: primary outcomes at week 16 from the FOREMOST randomised controlled trial
Laure Gossec et al. PMID: 39164067 DOI: 10.1136/ard-2024-225833
Ann Rheum Dis. 2024 Oct 21;83(11):1480-1488. doi: 10.1136/ard-2024-225833.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39164067/#article-details
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