座位行動の減少介入は有効なのか?
座位行動は、腰痛緩和のためのもっとも妥当な介入対象です。しかし、その効果検証は充分に行われていません。
そこで今回は、6ヵ月間の座位行動削減介入が、腰痛と関連障害のアウトカム、および傍脊柱筋(すなわち、脊柱起立筋と横脊柱筋)のインスリン感受性(グルコース取り込み、GU)および筋脂肪率(FF)に及ぼす影響を検討したランダム化比較試験の2次解析の結果をご紹介します。
過体重または肥満でメタボリックシンドロームの成人64名が介入群(n=33)と対照群(n=31)にランダムに割り付けられました。
介入群はSBを1時間/日減らすことを目的とし(加速度計で測定)、対照群は通常通り継続しました。腰痛強度と疼痛関連障害は、10cmのVisual Analogue ScaleとOswestry Disability Index(ODI)質問票を用い評価されました。
傍脊柱筋GUは、高インスリン血症-高血糖クランプ中の18-フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影により測定されました。FFはMRIにより測定されました。
試験結果から明らかになったことは?
疼痛関連障害は両群とも介入中に増加しました。
腰痛強度は、腰痛強度が変化しなかった介入群よりも対照群で有意に増加しました(群×時間 p=0.030)。
疼痛関連障害、ODI、傍脊椎GUおよびFFの統計学的に有意な群間変化は観察されませんでした。
全研究群において、1日の歩数の変化は傍脊柱筋GUの変化と正の相関を示しました。
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デスクワークを主体とする仕事に従事する人では、腰痛を発症するリスクが高いことが知られています。また、過体重や肥満を有する人では、リスクがさらに増加することも知られています。しかし、座位時間を減少させた場合の効果検証については充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の2次解析の結果、座位時間の減少に焦点を当てた介入は、傍脊柱筋のインスリン感受性や筋脂肪率にかかわらず、腰痛の悪化を予防する可能性が示されました。6か月間の介入結果であることから、より長期的な効果、あるいは、より短期的な介入効果については不明です。また、事後解析の結果であることから、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。
とはいえ、妥当性の高い結果であると考えられます。意識的に、構造的に座位時間を減少させるための取り組みにより、腰痛郷土の減少や腰痛リスク低減が示されるのか、さらなる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の2次解析の結果、座位時間の減少に焦点を当てた介入は、傍脊柱筋のインスリン感受性や筋脂肪率にかかわらず、腰痛の悪化を予防する可能性が示された。
根拠となった試験の抄録
目的:座位行動(SB)は、腰痛緩和のためのもっとも妥当な介入対象である。そこで本研究では、6ヵ月間のSB削減介入が、腰痛と関連障害のアウトカム、および傍脊柱筋(すなわち、脊柱起立筋と横脊柱筋)のインスリン感受性(グルコース取り込み、GU)および筋脂肪率(FF)に及ぼす影響を検討することを目的とした。
方法:過体重または肥満でメタボリックシンドロームの成人64名を介入群(n=33)と対照群(n=31)にランダムに割り付けた。介入群はSBを1時間/日減らすことを目的とし(加速度計で測定)、対照群は通常通り継続した。腰痛強度と疼痛関連障害は、10cmのVisual Analogue ScaleとOswestry Disability Index(ODI)質問票を用いて評価した。
傍脊柱筋GUは、高インスリン血症-高血糖クランプ中の18-フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影を用いて測定した。FFはMRIを用いて測定した。
結果:疼痛関連障害は両群とも介入中に増加した。腰痛強度は、腰痛強度が変化しなかった介入群よりも対照群で有意に増加した(群×時間 p=0.030)。疼痛関連障害、ODI、傍脊椎GUおよびFFの統計学的に有意な群間変化は観察されなかった。全研究群において、1日の歩数の変化は傍脊柱筋GUの変化と正の相関を示した。
結論:SBの減少に焦点を当てた介入は、傍脊柱筋GUやFFにかかわらず、腰痛の悪化を予防するために実行可能であろう。
試験登録番号 NCT03101228。
キーワード:腰痛、臨床試験、MRI、過体重、疼痛管理。
引用文献
Effects of reducing sedentary behaviour on back pain, paraspinal muscle insulin sensitivity and muscle fat fraction and their associations: a secondary analysis of a 6-month randomised controlled trial
Jooa Norha et al. PMID: 39343453 PMCID: PMC11440184 DOI: 10.1136/bmjopen-2024-084305
BMJ Open. 2024 Sep 28;14(9):e084305. doi: 10.1136/bmjopen-2024-084305.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39343453/
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