更年期に伴う血管運動症状に対するエリンザネタントの効果はどのくらい?(RCT; OASIS試験; JAMA. 2024)

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選択的ニューロキニン-1,3受容体拮抗薬であるエリンザネタントの有効性・安全性は?

更年期血管運動症状(VMS)は、更年期にホルモンの変化によって引き起こされる症状群です。主な症状には、ホットフラッシュ(突然の熱感と発汗)、ナイトスウェット(夜間の発汗)、動悸(心臓の鼓動の異常感)、不眠(睡眠の質の低下)があり、日常生活に多大な影響を及ぼします。

これらはエストロゲンの減少が原因であるとされていることから、治療にはホルモン補充療法(HRT)や非ホルモン治療、ライフスタイルの改善が含まれますが、症状の管理には個別の対応が求められます。

更年期VMSに対する安全で効果的な治療方法の確立、なかでも比較的副作用の少ない非ホルモン治療が必要とされています。

そこで今回は、中等度から重度の更年期VMSに対する選択的ニューロキニン-1,3受容体拮抗薬であるエリンザネタント(Elinzanetant)の有効性と安全性を評価することを目的に実施されたOASIS試験の結果をご紹介します。

OASIS試験は、中等度から重度の血管運動症状を有する40~65歳の閉経後患者を対象とした2件のランダム化二重盲検第3相試験(OASIS 1および2:OASIS 1は2021年8月27日~2023年11月27日の間に米国、欧州、イスラエルの77施設で、OASIS 2は2021年10月29日~2023年10月10日の間に米国、カナダ、欧州の77施設で実施)です。

エリンザネタント120mgを1日1回26週間経口投与する群、マッチングプラセボを12週間投与した後、エリンザネタント120mgを14週間経口投与する群にランダムに分けられました。

本試験の主要評価項目は、ベースラインから4週目および12週目までの中等度から重度の血管運動症状の頻度と重症度の平均変化であり、電子ホットフラッシュ日誌で測定されました。副次評価項目は、ベースラインから12週目までのPatient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form 8b total T scoreおよびMenopause-Specific Quality of Life questionnaire total scoreでした。

試験結果から明らかになったことは?

適格な参加者(平均年齢 OASIS 1:54.6[SD 4.9]歳;OASIS 2:54.6[SD 4.8]歳)が、エリンザネタント群(OASIS 1:n=199;OASIS 2:n=200)またはプラセボ群(OASIS 1:n=197;OASIS 2:n=200)にランダムに割り付けられました。合計309例(78.0%)と324例(81.0%)がそれぞれOASIS 1と2を完了しました。

24時間当たりのVMSの平均値ベースライン4週目12週目ベースライン
エリンザネタント群エリンザネタント群エリンザネタント群プラセボ群
OASIS 113.4(SD 6.6)-3.3
(95%CI -4.5 ~ -2.1
P<0.001
-3.2
(95%CI -4.8 ~ -1.6
P<0.001
14.3(SD 13.9)
OASIS 214.7(SD 11.1)-3.0
(95%CI -4.4 ~ -1.7
P<0.001
-3.2
(95%CI -4.6 ~ -1.9
P<0.001
16.2(SD 11.2)
VMS重症度ベースライン4週目12週目ベースライン
エリンザネタント群エリンザネタント群エリンザネタント群プラセボ群
OASIS 12.6(SD 0.2)-0.3
(95%CI -0.4 ~ -0.2
P<0.001
-0.4
(95%CI -0.5 ~ -0.3
P<0.001
2.5(SD 0.2)
OASIS 22.5(SD 0.2)-0.2
(95%CI -0.3 ~ -0.1
P<0.001
-0.3
(95%CI -0.4 ~ -0.1
P<0.001
2.5(SD 0.2)

エリンザネタント群とプラセボ群のベースラインにおける24時間当たりのVMSの平均値は、OASIS 1:13.4(SD 6.6) vs. 14.3(SD 13.9)、OASIS 2:14.7(SD 11.1) vs. 16.2(SD 11.2)でした。

ベースラインのVMS重症度は、OASIS 1:2.6(SD 0.2) vs. 2.5(SD 0.2)、OASIS 2:2.5(SD 0.2) vs. 2.5(SD 0.2)でした。

エリンザネタントは、4週目(OASIS 1:-3.3、95%CI -4.5 ~ -2.1、P<0.001;OASIS 2:-3.0、95%CI -4.4 ~ -1.7、P<0.001)および12週目(OASIS 1:-3.2、95%CI -4.8 ~ -1.6、P<0.001;OASIS 2:-3.2、95%CI -4.6 ~ -1.9、P<0.001)のVMS頻度を有意に減少させました。

エリンザネタントは、4週目(OASIS 1:-0.3、95%CI -0.4 ~ -0.2、P<0.001;OASIS2:-0.2、95%CI -0.3 ~ -0.1、P<0.001)および12週目(OASIS 1:-0.4、95%CI -0.5 ~ -0.3、P<0.001;OASIS 2:-0.3、95%CI -0.4 ~ -0.1、P<0.001)のVMS重症度も改善しました。

エリンザネタントは、12週目に睡眠障害および更年期障害に関連したQOLを改善し、安全性プロファイルは良好でした。

コメント

ホットフラッシュなど更年期の血管運動症状(VMS)に対する治療方法は限られており、より副作用の少ない治療方法の確立が求められています。

さて、ランダム化比較試験の結果、エリンザネタントは、中等度から重度の更年期血管運動症状に対して良好な忍容性と有効性を示しました。

有害事象の発生割合は約50%でした。発生頻度の高い有害事象は、頭痛、倦怠感、関節痛であり、発生率としては、4~8%と比較的低い値です。忍容性は高いと考えて差し支えないでしょう。

ただし、統計学的に有意な差が、実臨床でどのくらい患者の有益性につながっているのか、反映されているのかについては不明です。QOLの向上と一言でいっても、目の前の患者にとって有益なのか?治療満足度はどのくらいなのか?など、引き続き検証が必要なところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、エリンザネタントは、中等度から重度の更年期血管運動症状に対して良好な忍容性と有効性を示した。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:更年期の血管運動症状(VMS)に対する安全で効果的な非ホルモン治療が必要とされている。

目的:中等度から重度の更年期血管運動症状に対する選択的ニューロキニン-1,3受容体拮抗薬であるエリンザネタント(Elinzanetant)の有効性と安全性を評価すること。

試験デザイン、設定、参加者:中等度から重度の血管運動症状を有する40~65歳の閉経後患者を対象とした2件のランダム化二重盲検第3相試験(OASIS 1および2:OASIS 1は2021年8月27日~2023年11月27日の間に米国、欧州、イスラエルの77施設で、OASIS 2は2021年10月29日~2023年10月10日の間に米国、カナダ、欧州の77施設で実施)。

介入:エリンザネタント120mgを1日1回26週間経口投与するか、マッチングプラセボを12週間投与した後、エリンザネタント120mgを14週間経口投与する。

主要アウトカムと評価基準:主要評価項目は、ベースラインから4週目および12週目までの中等度から重度の血管運動症状の頻度と重症度の平均変化であり、電子ホットフラッシュ日誌で測定した。
副次評価項目は、ベースラインから12週目までのPatient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form 8b total T scoreおよびMenopause-Specific Quality of Life questionnaire total scoreであった。

結果:適格な参加者(平均年齢 OASIS 1:54.6[SD 4.9]歳;OASIS 2:54.6[SD 4.8]歳)が、エリンザネタント群(OASIS 1:n=199;OASIS 2:n=200)またはプラセボ群(OASIS 1:n=197;OASIS 2:n=200)にランダムに割り付けられた。合計309例(78.0%)と324例(81.0%)がそれぞれOASIS 1と2を完了した。エリンザネタント群とプラセボ群のベースラインにおける24時間当たりのVMSの平均値は、OASIS 1:13.4(SD 6.6) vs. 14.3(SD 13.9)、OASIS 2:14.7(SD 11.1) vs. 16.2(SD 11.2)であった。ベースラインのVMS重症度は、OASIS 1:2.6(SD 0.2) vs. 2.5(SD 0.2)、OASIS 2:2.5(SD 0.2) vs. 2.5(SD 0.2)であった。エリンザネタントは、4週目(OASIS 1:-3.3、95%CI -4.5 ~ -2.1、P<0.001;OASIS 2:-3.0、95%CI -4.4 ~ -1.7、P<0.001)および12週目(OASIS 1:-3.2、95%CI -4.8 ~ -1.6、P<0.001;OASIS 2:-3.2、95%CI -4.6 ~ -1.9、P<0.001)のVMS頻度を有意に減少させた。エリンザネタントは、4週目(OASIS 1:-0.3、95%CI -0.4 ~ -0.2、P<0.001;OASIS2:-0.2、95%CI -0.3 ~ -0.1、P<0.001)および12週目(OASIS 1:-0.4、95%CI -0.5 ~ -0.3、P<0.001;OASIS 2:-0.3、95%CI -0.4 ~ -0.1、P<0.001)のVMS重症度も改善した。エリンザネタントは、12週目に睡眠障害および更年期障害に関連したQOLを改善し、安全性プロファイルは良好であった。

結論と関連性:エリンザネタントは、中等度から重度の更年期血管運動症状に対して良好な忍容性と有効性を示した。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. OASIS 1: NCT05042362、OASIS 2: NCT05099159。

引用文献

Elinzanetant for the Treatment of Vasomotor Symptoms Associated With Menopause: OASIS 1 and 2 Randomized Clinical Trials
JoAnn V Pinkerton et al. PMID: 39172446 PMCID: PMC11342219 (available on 2025-02-22) DOI: 10.1001/jama.2024.14618
JAMA. 2024 Aug 22:e2414618.  doi: 10.1001/jama.2024.14618. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39172446/

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