2型糖尿病患者におけるセマグルチドとタバコ使用障害との関連性はどのくらい?(標的試験エミュレーション研究; Ann Intern Med. 2024)

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タバコ使用障害に対するセマグルチドの効果は?

グルカゴン様ペプチド受容体作動薬(GLP-1RA)の2型糖尿病(T2DM)および肥満治療薬であるセマグルチド(semaglutide)を投与された患者において、喫煙欲求が減少したという報告があり、タバコ使用障害(tobacco use disorders、TUDs)に対するセマグルチドの潜在的有用性について関心が高まっています。

そこで今回は、T2DMとTUDを併存する患者において、セマグルチドとTUD関連ヘルスケア指標との関連を検討することを目的に実施された、電子カルテの全国的な集団ベースのデータベース(米国、2017年12月1日~2023年3月31日)に基づくエミュレーション標的試験の結果をご紹介します。

T2DMとTUDを併存する適格患者を対象に、セマグルチドの新規使用と他の抗糖尿病薬7種(インスリン製剤、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬、Na-グルコース共輸送体-2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、その他のGLP-1RA)を比較する7つの標的試験がエミュレートされました。

12ヵ月の追跡期間内に発生したTUD関連の医療措置(TUDの診断による医療機関受診、禁煙補助薬の処方、禁煙カウンセリング)をCox比例ハザードおよびKaplan-Meier生存分析により検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

本研究では、セマグルチド5,967例を含む222,942例の新規抗糖尿病薬使用者が比較されました。

セマグルチドタバコ使用障害診断による受診リスクにおけるハザード比 HR(95%CI)
vs. インスリン製剤HR 0.68(0.63~0.74
vs. 他のGLP-1RAHR 0.88(0.81~0.96

セマグルチドは他の抗糖尿病薬と比較して、TUD診断のための受診リスクが有意に低く、インスリン製剤と比較して最も強く(ハザード比[HR] 0.68、95%CI 0.63~0.74)、他のGLP-1RAと比較して最も弱かったが統計学的に有意でした(HR 0.88、CI 0.81~0.96)。

セマグルチドは禁煙補助薬の処方およびカウンセリングの減少と関連していました。肥満の診断の有無にかかわらず、同様の所見が観察されました。ほとんどの群間比較において、その差は処方開始後30日以内に生じました。

コメント

セマグルチドが喫煙欲求を抑制する可能性が報告されていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

さて、標的試験エミュレーション研究の結果、セマグルチドは、T2DMとタバコ使用障害(TUD)を併存する患者において、他のGLP-1受容体作動薬を含む他の抗糖尿病薬と比較して、主に処方後30日以内において、TUD関連の医療措置のリスクが低いことと関連していました。

より長期的な検証が求められるところですが、抗糖尿病薬の中でも特にセマグルチドがTUDに対して有効であると考えられる結果でした。また、禁煙補助薬を使用の有無や使用量、禁煙の持続期間、肺がんや心血管イベント、心肺機能への影響など、さまざまなアウトカムへの影響度が気にかかるところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 標的試験エミュレーション研究の結果、セマグルチドは、T2DMとタバコ使用障害を併存する患者において、他のGLP-1RAsを含む他の抗糖尿病薬と比較して、主に処方後30日以内において、タバコ使用障害関連の医療措置のリスクが低いことと関連していた。

根拠となった試験の抄録

背景:グルカゴン様ペプチド受容体作動薬(GLP-1RA)の2型糖尿病(T2DM)および肥満治療薬であるセマグルチド(semaglutide)を投与された患者において、喫煙欲求が減少したという報告があり、タバコ使用障害(tobacco use disorders、TUDs)に対するセマグルチドの潜在的有用性について関心が高まっている。

目的:T2DMとTUDを併存する患者において、セマグルチドとTUD関連ヘルスケア指標との関連を検討すること。

試験デザイン:患者の電子カルテの全国的な集団ベースのデータベースに基づくエミュレーション標的試験(Emulation target trial)。

試験設定:米国、2017年12月1日~2023年3月31日。

試験参加者:T2DMとTUDを併存する適格患者を対象に、セマグルチドの新規使用と他の抗糖尿病薬7種(インスリン製剤、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬、Na-グルコース共輸送体-2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、その他のGLP-1RA)を比較する7つの標的試験をエミュレートした。

測定:12ヵ月の追跡期間内に発生したTUD関連の医療措置(TUDの診断による医療機関受診、禁煙補助薬の処方、禁煙カウンセリング)をCox比例ハザードおよびKaplan-Meier生存分析を用いて検討した。

結果:本研究では、セマグルチド5,967例を含む222,942例の新規抗糖尿病薬使用者を比較した。セマグルチドは他の抗糖尿病薬と比較して、TUD診断のための受診リスクが有意に低く、インスリン製剤と比較して最も強く(ハザード比[HR] 0.68、95%CI 0.63~0.74)、他のGLP-1RAと比較して最も弱かったが統計学的に有意であった(HR 0.88、CI 0.81~0.96)。セマグルチドは禁煙補助薬の処方およびカウンセリングの減少と関連していた。肥満の診断の有無にかかわらず、同様の所見が観察された。ほとんどの群間比較において、その差は処方開始後30日以内に生じた。

限界:文献の偏り、残存交絡、現在の喫煙行動、肥満度、服薬アドヒアランスに関するデータの欠落。

結論:セマグルチドは、T2DMとTUDを併存する患者において、他のGLP-1Rasを含む他の抗糖尿病薬と比較して、主に処方後30日以内において、TUD関連の医療措置のリスクが低いことと関連していた。これらの所見は、TUD治療におけるセマグルチドの可能性を評価する臨床試験の必要性を示唆している。

主な資金源:米国国立衛生研究所

引用文献

Association of Semaglutide With Tobacco Use Disorder in Patients With Type 2 Diabetes : Target Trial Emulation Using Real-World Data
William Wang et al. PMID: 39074369 DOI: 10.7326/M23-2718
Ann Intern Med. 2024 Jul 30. doi: 10.7326/M23-2718. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39074369/

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