急性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作患者における低用量コルヒチンの効果は?
急性期の軽度から中等度の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作を発症した患者は、特に最初の数日間、脳卒中再発のリスクがかなり高いとされています。さらに重要なことは、発症後3ヵ月間のハイリスク期間が、1年以内の脳卒中再発の約70%、5年以内の脳卒中再発の40%を占めていることです。
急性期に炎症が亢進している患者では、虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作後の新たな脳卒中リスクがさらに高いことが報告されており、これは、脳卒中の残存再発リスクを減少させるために、早期の抗炎症治療が潜在的に重要であることを示唆しています。
コルヒチンはプラーク成長を抑制し、プラークの不安定性のリスクとステント内再狭窄のリスクを減少させることにより、動脈硬化の進行を遅らせたことを示唆しています。しかし、急性脳卒中や一過性脳虚血発作患者において、コルヒチンが早期の脳卒中発症を予防できるかどうかは充分に検証されていません。
そこで今回は、高感度C反応性蛋白の濃度が2mg/L以上である、心塞栓を伴わない軽度から中等度の急性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(transient ischaemic attack, TIA)患者を対象に、症状発現後24時間以内に開始した低用量コルヒチンとプラセボの、3ヵ月以内の脳卒中後遺症抑制に対する有効性と安全性を評価することを目的に実施された二重盲検ランダム化比較試験(CHANCE-3試験)の結果をご紹介します。
本試験は、多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験でした。2022年8月11日~2023年4月13日の間に中国の244病院で実施されました。
試験参加者は、40歳以上の軽度~中等度の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作であり、高感度CRPが2mg/L以上の患者 8,343例が登録されました。患者は症状発現後24時間以内にコルヒチン(0.5mgを1~3日目に1日2回、その後0.5mg/日)またはプラセボを90日間投与する群に1:1でランダムに割り付けられました。
本試験の主要評価項目はランダム化後90日以内の新規脳卒中発症でした。安全性の主要アウトカムは治療期間中の重篤な有害事象でした。有効性と安全性の解析はすべてintention to treatで行われました。
試験結果から明らかになったことは?
4,176例がコルヒチン群に、4,167例がプラセボ群に割り付けられました。
コルヒチン群 | プラセボ群 | ハザード比 (95%信頼区間) | |
90日以内の脳卒中の発症 | 264例(6.3%) | 270例(6.5%) | ハザード比 0.98 (0.83~1.16) P=0.79 |
90日以内に脳卒中が発生したのはコルヒチン群264例(6.3%)、プラセボ群270例(6.5%)でした(ハザード比 0.98、95%信頼区間 0.83~1.16;P=0.79)。
重篤な有害事象はコルヒチン群で91例(2.2%)、プラセボ群で88例(2.1%)に認められました(P=0.83)。
コメント
脳卒中ハイリスク患者における低用量コルヒチンの効果は不明です。
さて、ランダム化比較試験の結果、急性非心血管塞栓性軽度~中等度虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作で高感度C反応性蛋白が2mg/L以上の患者において、低用量コルヒチンはプラセボと比較して、90日以内の脳卒中再発リスクを減少させませんでした。
これまでの報告において、急性期を含め冠動脈疾患を有する患者における低用量コルヒチン投与により、脳卒中リスクが低減することが報告されています。しかし、本試験も含めて心疾患を有さない患者においては、低用量コルヒチン投与による利益が得られないようです。
どのような患者で低用量コルヒチン投与による利益が最大化するのか、更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、急性非心血管塞栓性軽度~中等度虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作で高感度C反応性蛋白が2mg/L以上の患者において、低用量コルヒチンはプラセボと比較して、90日以内の脳卒中再発リスクを減少させなかった。
根拠となった試験の抄録
目的:高リスクの非心臓塞栓性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作後、症状発現から3ヵ月以内のその後の脳卒中リスク減少に対するコルヒチンの有効性と安全性をプラセボと比較検討する。
試験デザイン:多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験。
試験設定:2022年8月11日~2023年4月13日の間に中国の244病院。
試験参加者:40歳以上の軽度~中等度の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作で高感度CRPが2mg/L以上の患者 8,343例が登録された。
介入:患者は症状発現後24時間以内にコルヒチン(0.5mgを1~3日目に1日2回、その後0.5mg/日)またはプラセボを90日間投与する群に1:1でランダムに割り付けられた。
主要評価項目:主要評価項目はランダム化後90日以内の新規脳卒中発症であった。安全性の主要アウトカムは治療期間中の重篤な有害事象とした。有効性と安全性の解析はすべてintention to treatで行われた。
結果:4,176例がコルヒチン群に、4,167例がプラセボ群に割り付けられた。90日以内に脳卒中が発生したのはコルヒチン群264例(6.3%)、プラセボ群270例(6.5%)であった(ハザード比 0.98、95%信頼区間 0.83~1.16;P=0.79)。重篤な有害事象はコルヒチン群で91例(2.2%)、プラセボ群で88例(2.1%)に認められた(P=0.83)。
結論:低用量コルヒチンは、急性非心血管塞栓性軽度~中等度虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作で高感度C反応性蛋白が2mg/L以上の患者において、プラセボと比較して90日以内の脳卒中再発リスクを減少させるというエビデンスは得られなかった。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov, NCT05439356
引用文献
Colchicine in patients with acute ischaemic stroke or transient ischaemic attack (CHANCE-3): multicentre, double blind, randomised, placebo controlled trial
Jiejie Li et al. PMID: 38925803 PMCID: PMC11200154 DOI: 10.1136/bmj-2023-079061
BMJ. 2024 Jun 26:385:e079061. doi: 10.1136/bmj-2023-079061.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38925803/
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