慢性腎臓病における入院率に対する診療ガイドラインベース介入の効果は?(RCT; ICD-Pieces試験; N Engl J Med. 2024)

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慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧を有する患者の入院リスクはどのくらい?

慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧(the kidney-dysfunction triad; 腎機能障害の3要素)を有する患者に対する有効な治療法があるにもかかわらず、この集団における死亡や合併症のリスクを減少させるためのガイドラインに沿った治療の実施を検討した大規模試験の結果は不足しています。

そこで今回は、141施設のプライマリケア診療所で治療を受けていた腎機能障害の3要素を有する患者11,182例を、個別化アルゴリズム(患者の電子カルテ[EHR]に基づく)で特定し、診療ガイドラインに基づく介入を実施する際に医療者を支援するプラクティスファシリテーターを用いる介入を受ける群と、通常のケアを受ける群に割り付け、介入効果を検証した非盲検クラスターランダム化比較試験(ICD-Pieces試験)の結果をご紹介します。

本試験の主要アウトカムは、1年後のあらゆる原因による入院でした。副次的アウトカムは救急外来受診、再入院、心血管イベント、透析、死亡などでした。

試験結果から明らかになったことは?

71施設の診療所(登録患者数 5,690例)を介入群に、70施設の診療所(登録患者数 5,492例)を通常ケア群に割り付けました。

介入群通常ケア群群間差
1年後の入院率20.7%
(95% 19.7~21.8
21.1%
(95%CI 20.1~22.2
群間差 0.4%ポイント
P=0.58

1年後の入院率は介入群で20.7%(95%信頼区間[CI] 19.7~21.8)、通常ケア群で21.1%(95%CI 20.1~22.2)でした(群間差 0.4%ポイント;P=0.58)。

救急外来受診、再入院、心血管イベント、透析、または何らかの原因による死亡のリスクは両群で同程度でした。

有害事象のリスクも両群で同様でしたが、急性腎障害は介入群でより多くの患者に認められました(12.7% vs. 11.3%)。

コメント

慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧(the kidney-dysfunction triad; 腎機能障害の3要素)を有する患者に対する介入効果について、検証した試験は限られています。

さて、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧の3疾患を有する患者を対象としたICD-Pieces試験において、プライマリケアクリニックに組み込まれたEHRベースのアルゴリズムと診療促進因子の使用は、1年後の入院の減少には結びつきませんでした。

多くの因子が影響していることから、どのような因子が入院リスクに寄与しているのか、また原因となる因子に対する介入により入院リスクが減少するのか、など更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧の3疾患を有する患者を対象としたICD-Pieces試験において、プライマリケアクリニックに組み込まれたEHRベースのアルゴリズムとプラクティスファシリテーターによる介入は、1年後の入院の減少には結びつかなかった。

根拠となった論文の抄録

背景:慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧(the kidney-dysfunction triad; 腎機能障害の3要素)を有する患者に対する有効な治療法があるにもかかわらず、この集団における死亡や合併症のリスクを減少させるためのガイドラインに沿った治療の実施を検討した大規模試験の結果は不足している。

方法:この非盲検クラスターランダム化比較試験では、141施設のプライマリケア診療所で治療を受けていた腎機能障害の3要素を有する患者11,182例を、個別化アルゴリズム(患者の電子カルテ[EHR]に基づく)を用いて患者を特定し、ガイドラインに基づく介入を実施する際に医療者を支援するプラクティスファシリテーターを用いる介入を受ける群と、通常のケアを受ける群に割り付けた。
主要アウトカムは、1年後のあらゆる原因による入院であった。副次的アウトカムは救急外来受診、再入院、心血管イベント、透析、死亡などであった。

結果:71施設の診療所(登録患者数 5,690例)を介入群に、70施設の診療所(登録患者数 5,492例)を通常ケア群に割り付けた。1年後の入院率は介入群で20.7%(95%信頼区間[CI] 19.7~21.8)、通常ケア群で21.1%(95%CI 20.1~22.2)であった(群間差 0.4%ポイント;P=0.58)。救急外来受診、再入院、心血管イベント、透析、または何らかの原因による死亡のリスクは両群で同程度であった。有害事象のリスクも両群で同様であったが、急性腎障害は介入群でより多くの患者に認められた(12.7% vs. 11.3%)。

結論:慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧の3疾患を有する患者を対象としたこの実用的試験では、プライマリケアクリニックに組み込まれたEHRベースのアルゴリズムとプラクティスファシリテーターによる介入は、1年後の入院の減少には結びつかなかった。

資金提供:米国国立衛生研究所 他

登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT02587936

引用文献

Pragmatic Trial of Hospitalization Rate in Chronic Kidney Disease
Miguel A Vazquez et al. PMID: 38598574 DOI: 10.1056/NEJMoa2311708
N Engl J Med. 2024 Apr 4;390(13):1196-1206. doi: 10.1056/NEJMoa2311708.
原著論文リンク

免責事項: この情報は、一般的な医療情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。健康上の問題がある場合は、必ず医師にご相談ください。

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