急性脳卒中患者の予後に優れるのは?DAPT vs. SAPT
二重抗血小板療法は、一過性脳虚血発作や軽度の脳卒中患者における脳卒中再発の抑制において、単一抗血小板療法よりも優れていることが証明されています。しかし、軽度〜中等度の虚血性脳卒中患者におけるその効果に関する確実なエビデンスは不足しています。
そこで今回は、軽度〜中等度の虚血性脳卒中患者において、二重抗血小板療法が一重抗血小板療法より優れているかどうかを検討するために実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、2016年12月20日〜2022年8月9日に中国の66病院で実施された多施設共同非盲検エンドポイントランダム化比較試験です。最終追跡日は2022年10月30日でした(解析は2023年3月12日に報告)。虚血性脳卒中患者3,065例のうち、適格基準を満たさない患者またはランダム化結果が得られなかった患者65例が除外され、症状発現後48時間以内の急性軽度~中等度脳卒中患者3,000例が登録されました。
患者は症状発現後48時間以内に、クロピドグレル+アスピリン投与群(n=1,541)とアスピリン単独投与群(n=1,459)に1:1の割合でランダムに割り付けられました。
本試験の主要評価項目は7日後の早期神経学的悪化であり、脳出血を伴わないNIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)スコア*がベースラインと比較して2点以上上昇した場合と定義されました。アスピリン単独群に対するクロピドグレル+アスピリン併用群の優越性は、治療割り付けに関係なく、少なくとも1回の有効性評価を受けたすべてのランダム化参加者を含む修正intention-to-treat集団に基づいて評価されました。出血イベントは安全性のエンドポイントでした。
*11項目で評価される神経学的評価スケール。「0点」が正常であり、最大の「42点」に近づくほど神経学的重症度が高いことを示す。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された3,000例のうち、1,942例(64.6%)が男性で、平均(SD)年齢は65.9(10.6)歳、入院時のNIHSSスコアの中央値(IQR)は5(4~6)、1,830例(61.0%)が原因不明の脳卒中でした。合計2,915例が修正intention-to-treat解析に組み入れられました。
二重抗血小板療法群 (クロピドグレル+アスピリン) | アスピリン単独群 | リスク差 (95%CI) | |
7日後の早期の神経学的悪化 (NIHSSの2点以上の上昇) | 1,502例中72例(4.8%) | 1,413例中95例(6.7%) | リスク差 -1.9% (-3.6 〜 -0.2) P=0.03 |
早期の神経学的悪化は、二重抗血小板療法群では1,502例中72例(4.8%)であったのに対し、アスピリン単独群では1,413例中95例(6.7%)でした(リスク差 -1.9%、95%CI -3.6 〜 -0.2;P=0.03)。
出血イベントは2群間で同様でした。
コメント
一過性脳虚血発作や軽度の脳卒中患者における脳卒中再発の抑制における二重抗血小板療法(DAPT)の有効性が示されていますが、中等度まで含めた脳卒中患者に対する有効性・安全性については充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、中国の軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中患者において、クロピドグレル+アスピリンは7日後の早期神経学的悪化の抑制に関してアスピリン単独投与より優れており、安全性プロファイルも同様であることが示されました。
NIHSSスコアがベースラインからどのくらい変化したのか、中等度の脳卒中患者がどの程度含まれていたのか、7日を超えた患者転帰の評価がなされているのか等々、確認したいところです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、中国の軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中患者において、クロピドグレル+アスピリンは7日後の早期神経学的悪化の抑制に関してアスピリン単独投与より優れており、安全性プロファイルも同様であった。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:二重抗血小板療法は、一過性脳虚血発作や軽度の脳卒中患者における脳卒中再発の抑制において、単一抗血小板療法よりも優れていることが証明されているが、軽度〜中等度の虚血性脳卒中患者におけるその効果に関する確実なエビデンスは不足している。
目的:軽度〜中等度の虚血性脳卒中患者において、二重抗血小板療法が一重抗血小板療法より優れているかどうかを検討する。
試験デザイン、設定、参加者:2016年12月20日〜2022年8月9日に中国の66病院で実施された多施設共同非盲検エンドポイントランダム化比較試験である。最終追跡日は2022年10月30日であった。解析は2023年3月12日に報告された。虚血性脳卒中患者3,065例のうち、適格基準を満たさない患者またはランダム化結果が得られなかった患者65例を除外し、症状発現後48時間以内の急性軽度~中等度脳卒中患者3,000例が登録された。
介入:症状発現後48時間以内に、患者をクロピドグレル+アスピリン投与群(n=1,541)とアスピリン単独投与群(n=1,459)に1:1の割合でランダムに割り付けた。
主要アウトカムと評価基準:主要評価項目は7日後の早期神経学的悪化とし、脳出血を伴わないNIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)スコアがベースラインと比較して2点以上上昇した場合と定義した。アスピリン単独群に対するクロピドグレル+アスピリン併用群の優越性は、治療割り付けに関係なく、少なくとも1回の有効性評価を受けたすべてのランダム化参加者を含む修正intention-to-treat集団に基づいて評価された。出血イベントは安全性のエンドポイントとした。
結果:ランダム化された3,000例のうち、1942例(64.6%)が男性で、平均(SD)年齢は65.9(10.6)歳、入院時のNIHSSスコアの中央値(IQR)は5(4~6)、1,830例(61.0%)が原因不明の脳卒中であった。合計2,915例が修正intention-to-treat解析に組み入れられた。早期の神経学的悪化は、二重抗血小板療法群では1,502例中72例(4.8%)であったのに対し、アスピリン単独群では1,413例中95例(6.7%)であった(リスク差 -1.9%、95%CI -3.6 〜 -0.2;P=0.03)。出血イベントは2群間で同様であった。
結論と関連性:中国の軽度〜中等度の急性虚血性脳卒中患者において、クロピドグレル+アスピリンは7日後の早期神経学的悪化の抑制に関してアスピリン単独投与より優れており、安全性プロファイルも同様であった。これらの所見から、軽度から中等度の急性脳卒中患者の治療において、二重抗血小板療法はアスピリン単独療法よりも優れた選択である可能性が示された。
臨床試験登録 ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02869009
引用文献
Clopidogrel Plus Aspirin vs Aspirin Alone in Patients With Acute Mild to Moderate Stroke: The ATAMIS Randomized Clinical Trial
Hui-Sheng Chen et al. PMID: 38466274 PMCID: PMC10928538 (available on 2025-03-11) DOI: 10.1001/jamaneurol.2024.0146
JAMA Neurol. 2024 Mar 11:e240146. doi: 10.1001/jamaneurol.2024.0146. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38466274/
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