成人非合併性急性A型インフルエンザ感染症に対するオンラジビルの安全性と有効性は?(DB-RCT; Lancet Infect Dis. 2024)

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非複雑性インフルエンザA感染症患者におけるオンラジビルの有効性・安全性は?

オンラジビル(Onradivir, ZSP1273)は新規の抗インフルエンザAウイルス阻害剤です。前臨床試験において、オンラジビルはインフルエンザA H1N1およびH3N2の複製を阻害し、インフルエンザ感染動物の生存率を増加させることが示されています。しかし、実臨床における検証は行われていません。

そこで今回は、合併症のない急性A型インフルエンザウイルス感染症の外来患者を対象に、3種類のオンラジビル投与レジメンの安全性と有効性をプラセボと比較評価することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

中国の20の臨床施設で多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照第2相試験が行われました。対象は、初診時に迅速抗原検査でスクリーニングされたインフルエンザ様疾患を有する成人(18~65歳)で、発熱(腋窩温38.0℃以上)があり、症状発現から48時間以内に中等度の全身症状と呼吸器症状が少なくとも1つずつ存在する患者でした。妊娠している患者、オンラジビルに対するアレルギーがある患者、登録前7日以内にインフルエンザ抗ウイルス薬の投与を受けている患者は除外されました。

参加者は、双方向Web応答システムにより、オンラジビル200mg1日2回投与群、オンラジビル400mg1日2回投与群、オンラジビル600mg1日1回投与群、およびプラセボ群の4群にランダムに割り付けられました(1:1:1:1)。5日間の経口治療は症状発現後48時間以内に開始されました。

本研究の主要転帰は、修正intention-to-treat集団におけるインフルエンザ症状緩和までの期間でした。安全性は副次的転帰でした。患者が自己評価した7つのインフルエンザ症状の重症度を4段階の順序尺度で評価され、全患者において治療に起因する有害事象が評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

2019年12月7日から2020年5月18日の間に、合計205例の患者がスクリーニングされ、そのうち172例(84%)がオンラジビル投与群(200mg1日2回投与群n=43、400mg1日2回投与群n=43、600mg1日1回投与群n=43)、またはプラセボ投与群(n=42)ににランダム割り付けられました。年齢中央値は22歳(IQR 20〜26)でした。

インフルエンザ症状緩和までの期間
(IQR)
プラセボ群との差
プラセボ群62.87時間(36.40〜113.25)
オンラジビル200mg1日2回投与群46.92時間(24.00〜81.38
オンラジビル400mg1日2回投与群54.87時間(23.67〜110.62
オンラジビル600mg1日1回投与群40.05時間(17.70〜65.82中央値 -22.82時間
p=0.0330

プラセボ群(62.87時間[IQR 36.40〜113.25])に比べ、オンラジビル3群ともインフルエンザ症状緩和までの時間中央値は減少しました(200mg1日2回投与群46.92時間[IQR 24.00〜81.38]、400mg1日2回投与群54.87時間[23.67〜110.62]、600mg1日1回投与群40.05時間[17.70〜65.82])。

オンラジビル600mg1日1回投与群とプラセボ群の差の中央値は-22.82時間でした(p=0.0330)。

最も多く報告された治療起因性の有害事象は下痢(171例中71例[42%])で、プラセボ群では10%であったのに対し、オンラジビル投与群では33.65%でした。重篤な有害事象は認められませんでした。

コメント

A型インフルエンザに対する治療薬の開発が行われています。今更感はありますが、治療選択肢が増えることは患者に有益となる可能性があります。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、オンラジビルは、プラセボと同等の安全性プロファイルを示すとともに、特にオンラジビル600mg 1日1回投与レジメンにおいて、合併症のない成人インフルエンザ感染症患者のインフルエンザ症状の改善およびウイルス量の低下において、プラセボよりも高い有効性を示しました。ただし、プラセボ群との差は、中央値で-22.82時間です。実臨床で得られる恩恵がどの程度であるのか慎重な判断が求められます。さらに各群の症例数が少ないことから更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、オンラジビルは、プラセボと同等の安全性プロファイルを示すとともに、特にオンラジビル600mg 1日1回投与レジメンにおいて、合併症のない成人インフルエンザ感染症患者のインフルエンザ症状の改善およびウイルス量の低下において、プラセボよりも高い有効性を示した。

根拠となった試験の抄録

背景:オンラジビル(Onradivir, ZSP1273)は新規の抗インフルエンザAウイルス阻害剤である。前臨床試験において、オンラジビルはインフルエンザA H1N1およびH3N2の複製を阻害し、感染動物の生存率を増加させることが示されている。本研究では、合併症のない急性A型インフルエンザウイルス感染症の外来患者を対象に、3種類のオンラジビル投与レジメンの安全性と有効性をプラセボと比較評価することを目的とした。

方法:中国の20の臨床施設で多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照第2相試験を行った。対象は、初診時に迅速抗原検査でスクリーニングされたインフルエンザ様疾患を有する成人(18~65歳)で、発熱(腋窩温38.0℃以上)があり、症状発現から48時間以内に中等度の全身症状と呼吸器症状が少なくとも1つずつ存在する患者とした。妊娠している患者、オンラジビルに対するアレルギーがある患者、登録前7日以内にインフルエンザ抗ウイルス薬の投与を受けている患者は除外された。参加者は、双方向Web応答システムにより、オンラジビル200mg1日2回投与群、オンラジビル400mg1日2回投与群、オンラジビル600mg1日1回投与群、およびプラセボ群の4群にランダムに割り付けられた(1:1:1:1)。症状発現後48時間以内に5日間の経口治療を開始した。
主要転帰は、修正intention-to-treat集団におけるインフルエンザ症状緩和までの期間とした。安全性は副次的転帰とした。患者が自己評価した7つのインフルエンザ症状の重症度を4段階の順序尺度で評価し、全患者において治療に起因する有害事象を評価した。本試験はClinicalTrials.govに登録されており、登録番号はNCT04024137である。

調査結果:2019年12月7日から2020年5月18日の間に、合計205例の患者がスクリーニングされ、そのうち172例(84%)がオンラジビル投与群(200mg1日2回投与群n=43、400mg1日2回投与群n=43、600mg1日1回投与群n=43)、またはプラセボ投与群(n=42)ににランダム割り付けられた。年齢中央値は22歳(IQR 20〜26)であった。プラセボ群(62.87時間[36.40〜113.25])に比べ、オンラジビル3群ともインフルエンザ症状緩和までの時間中央値は減少した(200mg1日2回投与群46.92時間[IQR 24.00〜81.38]、400mg1日2回投与群54.87時間[23.67〜110.62]、600mg1日1回投与群40.05時間[17.70〜65.82])。オンラジビル600mg1日1回投与群とプラセボ群の差の中央値は-22.82時間であった(p=0.0330)。最も多く報告された治療起因性の有害事象は下痢(171例中71例[42%])で、プラセボ群では10%であったのに対し、オンラジビル投与群では33.65%であった;重篤な有害事象は認められなかった。

解釈:オンラジビルは、プラセボと同等の安全性プロファイルを示すとともに、特にオンラジビル600mg 1日1回投与レジメンにおいて、合併症のない成人インフルエンザ感染症患者のインフルエンザ症状の改善およびウイルス量の低下において、プラセボよりも高い有効性を示した。

資金提供:国家中医薬学際創新チームプロジェクト、中国国家自然科学基金、広東省科学技術基金、広州市科学技術計画プロジェクト、広州研究室緊急重点計画、マカオ科学技術発展基金、広東レイノベント・バイオテック。

引用文献

Safety and efficacy of onradivir in adults with acute uncomplicated influenza A infection: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 2 trial
Zifeng Yang et al. PMID: 38330975 DOI: 10.1016/S1473-3099(23)00743-0
Lancet Infect Dis. 2024 Feb 5:S1473-3099(23)00743-0. doi: 10.1016/S1473-3099(23)00743-0. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38330975/

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