ワクチンの接種回数と重症COVID-19発生との関連性は?
ワクチン接種不足(SARS-CoV-2ワクチンの接種回数が推奨回数に満たない)は、完全接種(SARS-CoV-2ワクチンの接種回数が推奨回数に達する)と比較して、重症COVID-19の転帰、すなわちCOVID-19による入院や死亡のリスク上昇と関連する可能性があります。しかし、充分に検証されていません。
そこで今回は、ワクチン接種不足に関連する因子を明らかにし、英国各国および英国全土におけるワクチン接種不足者の重症COVID-19転帰のリスクを調査しようとしたコホート研究のメタ解析の結果をご紹介します。
本研究では、イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズにおけるコホート研究を実施するために、全人口をカバーする匿名化され、整合化された電子カルテデータが用いられました(参加者は5歳以上)。
2022年6月1日時点のワクチン未接種の調整オッズ比が推定されました。また、2022年6月1日〜9月30日までの期間における重症COVID-19転帰の調整ハザード比(aHR)について、ワクチン接種不足を時間依存性の曝露とし推定されました。国別の解析結果が英国全体の固定効果メタ解析に統合されました。2022年6月1日に英国のすべての人が完全接種を受けたという反事実シナリオに関連する重症COVID-19転帰の減少が推定されました。
試験結果から明らかになったことは?
ワクチン未接種の人 (2022年6月1日時点) | |
イングランド | 58,967,360例中26,985,570例(45.8%) |
北アイルランド | 1,885,670例中938,420例(49.8%) |
スコットランド | 4,992,498例中1,709,786例(34.2%) |
ウェールズ | 2,358,740例中773,850例(32.8%) |
2022年6月1日にワクチン未接種の人は、イングランドでは58,967,360例中26,985,570例(45.8%)、北アイルランドでは1,885,670例中938,420例(49.8%)、スコットランドでは4,992,498例中1,709,786例(34.2%)、ウェールズでは2,358,740例中773,850例(32.8%)でした。
年齢が低い人、より恵まれない環境にいる人、非白人民族の人、合併症の数が少ない人ほど、ワクチン接種を完全に受けていない可能性が高いことが示されました。
コホートでは合計40,393件の重症COVID-19転帰があり、このうち14,156件はワクチン未接種者でした。2022年6月1日に全員が完全接種を受けたという反事実的シナリオに関連する、英国における追跡期間4ヵ月間の重症COVID-19転帰の減少を、5~15歳では210(95%CI 94〜326)、16~74歳では1,544(1,399〜1,689)、75歳以上では5,426(5,340〜5,512)と推定されました。
(75歳以上のメタ解析) | 重篤なCOVID-19転帰のaHR |
ワクチン接種が推奨用量より1回少ない場合 | aHR 2.70(2.61〜2.78) |
2回少ない場合 | aHR 3.13(2.93〜3.34) |
3回少ない場合 | aHR 3.61(3.13〜4.17) |
4回少ない場合 | aHR 3.08(2.89〜3.29) |
75歳以上のメタ解析における重篤なCOVID-19転帰のaHRは、推奨用量より1回少ない場合は2.70(2.61〜2.78)、2回少ない場合は3.13(2.93〜3.34)、3回少ない場合は3.61(3.13〜4.17)、4回少ない場合は3.08(2.89〜3.29)でした。
コメント
ワクチン接種回数と患者転帰との関連性については充分に検証されていません。
さて、英国コホート研究のメタ解析の結果、COVID-19に対するワクチン接種不足率は、2022年夏の英国4ヵ国で32.8%〜49.8%の範囲でした。ワクチン接種不足はCOVID-19の重篤な転帰のリスク上昇と関連していました。ただし、あくまでも関連性が示されたに過ぎません。また英国での検証結果であることから、他の国や地域でも同様の結果が示されるのかについては不明です。さらに接種回数と患者転帰との関連性については明確でないことから更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 英国コホート研究のメタ解析の結果、COVID-19に対するワクチン接種不足率は、2022年夏の英国4ヵ国で32.8%〜49.8%の範囲であった。ワクチン接種不足はCOVID-19の重篤な転帰のリスク上昇と関連していた。
根拠となった試験の抄録
背景:ワクチン接種不足(SARS-CoV-2ワクチンの接種回数が推奨回数に満たない)は、完全接種(SARS-CoV-2ワクチンの接種回数が推奨回数に達する)と比較して、重症COVID-19の転帰、すなわちCOVID-19による入院や死亡のリスク上昇と関連する可能性がある。われわれは、ワクチン接種不足に関連する因子を明らかにし、英国各国および英国全土におけるワクチン接種不足者の重症COVID-19転帰のリスクを調査しようとした。
方法:イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズにおけるコホート研究を実施するために、全人口をカバーする匿名化され、整合化された電子カルテデータを用いた。参加者は5歳以上でなければコホートに組み入れられなかった。2022年6月1日時点のワクチン未接種の調整オッズ比を推定した。また、2022年6月1日から9月30日までの期間における重症COVID-19転帰の調整ハザード比(aHR)を、ワクチン接種不足を時間依存性の曝露として推定した。国別の解析結果を英国全体の固定効果メタ解析に統合した。2022年6月1日に英国のすべての人が完全接種を受けたという反事実シナリオに関連する重症COVID-19転帰の減少を推定した。
結果:2022年6月1日にワクチン未接種の人は、イングランドでは58,967,360例中26,985,570例(45.8%)、北アイルランドでは1,885,670例中938,420例(49.8%)、スコットランドでは4,992,498例中1,709,786例(34.2%)、ウェールズでは2,358,740例中773,850例(32.8%)であった。年齢が低い人、より恵まれない環境にいる人、非白人民族の人、合併症の数が少ない人ほど、ワクチン接種を完全に受けていない可能性が高かった。コホートでは合計40,393件の重症COVID-19転帰があり、このうち14,156件はワクチン未接種者であった。2022年6月1日に全員が完全接種を受けたという反事実的シナリオに関連する、英国における追跡期間4ヵ月間の重症COVID-19転帰の減少を、5~15歳では210(95%CI 94〜326)、16~74歳では1,544(1,399〜1,689)、75歳以上では5,426(5,340〜5,512)と推定した。75歳以上のメタ解析における重篤なCOVID-19転帰のaHRは、推奨用量より1回少ない場合は2.70(2.61〜2.78)、2回少ない場合は3.13(2.93〜3.34)、3回少ない場合は3.61(3.13〜4.17)、4回少ない場合は3.08(2.89〜3.29)であった。
解釈:COVID-19に対するワクチン接種不足率は、2022年夏の英国4ヵ国で32.8%〜49.8%の範囲であった。ワクチン接種不足はCOVID-19の重篤な転帰のリスク上昇と関連していた。
資金提供:UK Research and Innovation National Core Studies, Data and Connectivity
引用文献
Undervaccination and severe COVID-19 outcomes: meta-analysis of national cohort studies in England, Northern Ireland, Scotland, and Wales
HDR UK COALESCE Consortium Collaborators PMID: 38237625 DOI: 10.1016/S0140-6736(23)02467-4
Lancet. 2024 Jan 12:S0140-6736(23)02467-4. doi: 10.1016/S0140-6736(23)02467-4. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38237625/
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