非便秘性過敏性腸症候群患者に対するエバスチンの有効性は?
過敏性腸症候群(IBS)は、特に消化器の疾患がないにも関わらず、腹痛と便秘、または下痢を慢性的に繰り返す慢性疾患です。便通異常のタイプから「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つのタイプに分類されます。
非便秘性IBS患者の一部において、ヒスタミンを含有する食品が症状を悪化させることが報告されています。しかし、抗ヒスタミン薬が有効であるのかについては充分に検証されていません。
そこで今回は、非便秘型IBSに対するヒスタミン1受容体拮抗薬エバスチンの有効性について検証したランダム化プラセボ対照第2相試験の結果をご紹介します。
本試験では、Rome III基準を満たす非便秘性IBS患者をエバスチン20mg群とプラセボ群にランダムに割り付け、12週間検証しました。
被験者は全体的な症状の軽減(global relief of symptoms, GRS)と腹痛の強さ(abdominal pain intensity, API)をスコア化しました。GRSについては全快または明らかな軽減が報告された場合、APIについては1週間の平均疼痛スコアがベースラインに対して少なくとも30%減少した場合、被験者はレスポンダーとみなされました。
本試験の主要評価項目は、GRSとAPIの両方(「GRS+API」、複合エンドポイント)、およびGRSとAPIそれぞれについて、治療12週のうち少なくとも6週で週単位の反応者となった被験者の割合としました。
試験結果から明らかになったことは?
202例(32±11歳、女性68%)がエバスチン投与群(n=101)とプラセボ投与群(n=101)にランダムに割り付けられました。
エバスチン20mg投与群 (n=101) | プラセボ投与群 (n=101) | |
GRS+API | 12%(12/92) p=0.047 | 4%(4/87) |
GRS | 15%(14/91) p=0.072 | 7%(6/87) |
API | 37%(34/92) p=0.081 | 25%(20/85) |
エバスチンの投与により、GRS+APIではプラセボ(4%、4/87、p=0.047)と比較して有意に多くの反応者(12%、12/92)が得られましたが、GRSとAPIを別々に投与した場合の反応者の割合は、統計学的に有意ではありませんでした。しかし、プラセボと比較してエバスチンの方が高い傾向が認められました(プラセボ vs. エバスチン、GRS:7%(6/87) vs. 15%(14/91)、p=0.072、API:25%(20/85) vs. 37%(34/92)、p=0.081)。
コメント
一部のIBS患者に対して抗ヒスタミン薬が有効である可能性が報告されていますが、充分に検証されていません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、エバスチンはプラセボよりも優れていることが示されました。ただし、小規模かつ短期間の検証結果であることから更なる検証が求められます。また、エバスチン以外の抗ヒスタミン薬の有効性については不明です。
非便秘性IBS患者に対する新規治療としてさらなる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、エバスチンはプラセボよりも優れており、非便秘性IBS患者に対する新規治療として更なる検証が求められる。
根拠となった試験の抄録
目的:非便秘性過敏性腸症候群(IBS)患者に対する治療薬としてのヒスタミン1受容体拮抗薬エバスチンを、ランダム化プラセボ対照第2相試験で評価した。
方法:Rome III基準を満たす非便秘性IBS患者を20mgのエバスチンとプラセボにランダムに割り付け、12週間投与した。被験者は全体的な症状の軽減(global relief of symptoms, GRS)と腹痛の強さ(abdominal pain intensity, API)をスコア化した。GRSについては全快または明らかな軽減が報告された場合、APIについては1週間の平均疼痛スコアがベースラインに対して少なくとも30%減少した場合、被験者はレスポンダーとみなされた。
主要評価項目は、GRSとAPIの両方(「GRS+API」、複合エンドポイント)、およびGRSとAPIそれぞれについて、治療12週のうち少なくとも6週で週単位の反応者となった被験者の割合とした。
結果:202例(32±11歳、女性68%)がエバスチン投与群(n=101)とプラセボ投与群(n=101)にランダムに割り付けられた。エバスチンの投与により、GRS+APIではプラセボ(4%、4/87、p=0.047)と比較して有意に多くの反応者(12%、12/92)が得られたが、GRSとAPIを別々に投与した場合の反応者の割合は、統計学的に有意ではなかったものの、プラセボと比較してエバスチンの方が高かった(プラセボ vs. エバスチン、GRS:7%(6/87) vs. 15%(14/91)、p=0.072、API:25%(20/85) vs. 37%(34/92)、p=0.081)。
結論:本研究は、エバスチンがプラセボよりも優れていることを示しており、非便秘性IBS患者に対する新規治療としてさらに評価されるべきである。
試験登録番号:本試験プロトコールは、各試験実施施設の地方倫理委員会により承認された(EudraCT番号:2013-001199-39;ClinicalTrials.gov識別子:NCT01908465)。
キーワード:腹痛、過敏性腸症候群、神経免疫相互作用、内臓過敏症
引用文献
Treatment of non-constipated irritable bowel syndrome with the histamine 1 receptor antagonist ebastine: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Lisse Decraecker et al. PMID: 38191268 DOI: 10.1136/gutjnl-2023-331634
Gut. 2024 Jan 8:gutjnl-2023-331634. doi: 10.1136/gutjnl-2023-331634. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38191268/
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