2型糖尿病患者の予後における中強度スタチン+エゼチミブ vs. 高強度スタチン
低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)低下療法は、糖尿病患者の心血管疾患(CVD)予防において重要であるとされています。しかし、糖尿病患者における低強度または中強度スタチンとエゼチミブ併用療法および高強度スタチン単剤療法のCVD、脳卒中、死亡率の転帰を比較した研究はまだ限られています。
そこで今回は、韓国の国民健康保険請求データベースを用いて、糖尿病患者における低・中強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法の心筋梗塞(MI)、脳卒中、全死亡の一次予防効果を比較検討した研究結果をご紹介します。
本研究では20歳以上の2型糖尿病および脂質異常症患者が登録されました。低強度または中強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法について傾向スコアマッチ解析により比較されました。
心筋梗塞、脳卒中、全死亡からなる複合アウトカムの発生率と各成分の分析が行われました。
試験結果から明らかになったことは?
ハザード比 (95%CI) | |
複合アウトカムの発生リスク (心筋梗塞、脳卒中、全死亡) | ハザード比 0.85 (0.74〜0.98) |
中強度スタチン+エゼチミブ併用療法では、LDL-C(74±37.9mg/dL vs. 80.8±38.8mg/dL、P<0.001)および複合アウトカムの発生率は高強度スタチン単剤療法よりも低いことが示されました(ハザード比0.85、95%CI 0.74〜0.98)。
一方、低強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法では、LDL-C値と複合転帰に有意差は認められませんでした。
コメント
2型糖尿病、脂質異常症、高血圧は合併することが知られており、多併存疾患患者においては、心血管イベントの発生リスクが増加することが報告されています。持続的なHbA1c、LDLコレステロール、血圧のコントロールが心血管イベントの発生リスクを低減することが報告されていますが、個々の治療方法の比較検討については充分に行われていません。
さて、韓国のデータベース研究の結果、2型糖尿病患者において、中強度スタチンにエゼチミブを追加することは、高強度スタチン単独療法よりもLDL-C低下効果が高く、複合アウトカムの一次予防効果も高いことが示されました。
ただし、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。追試が求められます。また、LDLコレステロールの群間差は6mg/dLであり、この差が心筋梗塞、脳卒中、全死亡に影響する度合いは低いと考えられます。他の交絡因子の影響が大きいと考えられます。
とはいえ、高強度スタチンを使用できない患者において、治療選択肢が増えることになります。引き続き追っていきたいテーマです。
続報に期待。
【まとめ】韓国のデータベース研究の結果、2型糖尿病患者において、中強度スタチンにエゼチミブを追加することは、高強度スタチン単独療法よりもLDL-C低下効果が高く、複合アウトカムの一次予防効果も高いことが示された。
根拠となった試験の抄録
背景:低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)低下療法は、糖尿病患者の心血管疾患(CVD)予防においてかなり重要である。糖尿病患者における低強度スタチンまたは中強度スタチンとエゼチミブ併用療法および高強度スタチン単剤療法のCVD、脳卒中、死亡率の転帰を比較した研究はまだ不足している。
目的:本研究では、韓国の国民健康保険請求データベースを用いて、糖尿病患者における低・中強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法の心筋梗塞(MI)、脳卒中、全死亡の一次予防効果を比較した。
方法:20歳以上の2型糖尿病および脂質異常症患者を登録した。低強度または中強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法を傾向スコアマッチ解析により比較した。心筋梗塞、脳卒中、全死亡からなる複合アウトカムの発生率と各成分の分析が行われた。
結果:中強度スタチン+エゼチミブ併用療法では、LDL-C(74±37.9mg/dL vs. 80.8±38.8mg/dL、P<0.001)および複合アウトカムの発生率は高強度スタチン単剤療法よりも低かった(ハザード比0.85、95%CI 0.74〜0.98)。一方、低強度スタチンとエゼチミブの併用療法と高強度スタチン単剤療法では、LDL-C値と複合転帰に有意差は認められなかった。
結論:2型糖尿病患者において、中強度スタチンにエゼチミブを追加することは、高強度スタチン単独療法よりもLDL-C低下効果が高く、複合アウトカムの一次予防効果も高いことが示された。
キーワード:心血管疾患、糖尿病、エゼチミブ、一次予防、スタチン
引用文献
Comparison of the Efficacy of Ezetimibe Combination Therapy and High-Intensity Statin Monotherapy in Type 2 Diabetes
So Young Park et al. PMID: 38175670 DOI: 10.1210/clinem/dgad714
J Clin Endocrinol Metab. 2024 Jan 4:dgad714. doi: 10.1210/clinem/dgad714.Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38175670/
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