COVID-19患者に対する経口抗ウイルス薬VV116の有効性・安全性は?
SARS-CoV-2の蔓延は世界的な大流行を引き起こし、オミクロン感染症の治療には未だ満たされていない医療ニーズがあります。SARS-CoV-2に対して強力な活性を有する経口抗ウイルス薬であるVV116は、in vitroや小規模の臨床研究で有効性が示されているものの、より大規模な臨床研究は実施されていません。
そこで今回は、軽度〜中等度のCOVID-19患者における経口抗ウイルス薬VV116の有効性と安全性を検討するために行われたプラセボ対照ランダム化比較試験の結果をご紹介します。
この多施設共同、二重盲検、第3相ランダム化比較試験では、中国の感染症病院および三次総合病院の成人が登録されました。適格患者は、順列化ブロックランダム化を用いて1:1の割合でランダムに割り付けられ、VV116経口剤(1日目は12時間ごとに0.6g、2~5日目は12時間ごとに0.3g)またはプラセボ経口剤(VV116と同じスケジュール)を5日間投与されました。
ランダム化の層別化因子には、SARS-CoV-2ワクチン接種の有無、重症COVID-19への進行の高リスク因子の有無が含まれました。組み入れ基準は、SARS-CoV-2検査陽性、試験初回投与3日前までにCOVID-19の初期症状が発現、初回投与24時間前までにCOVID-19に関連する対象症状のスコアが2以上であることでした。重症または重篤なCOVID-19を発症した患者、あるいは抗ウイルス薬を服用した患者は試験から除外されました。
本試験の主要エンドポイントは、2日間連続して臨床症状が消失するまでの期間でした。有効性解析は、VV116またはプラセボを少なくとも1回投与され、SARS-CoV-2核酸陽性と判定され、初回投与前にインフルエンザウイルス陽性と判定されなかった全患者からなる、修正intention-to-treat集団で行われました。安全性解析は、VV116またはプラセボを少なくとも1回投与された参加者全員について行われました。
試験結果から明らかになったことは?
合計 1,369例の患者がランダムに治療群に割り付けられ、1,347例がVV116(n=674)またはプラセボ(n=673)を投与されました。
VV116投与群 | プラセボ群 | ハザード比 HR (95%CI) | |
中間解析 | 中央値 10.9日(IQR 5.6〜20.3) | 中央値 12.9日(IQR 6.8〜22.6) | HR 1.21 (1.04〜1.40) p=0.0023 |
最終解析 | 513例(79.4%) 中央値 10.9日(IQR 5.6〜20.8) | 494例(76.0%) 中央値 12.9日(IQR 7.0〜23.6) | HR 1.17 (1.04〜1.33) p=0.0009 |
中間解析では、1,229例の患者において、VV116はプラセボよりも臨床症状が持続的に消失するまでの期間を短縮しました(ハザード比[HR] 1.21、95%CI 1.04〜1.40、p=0.0023)。最終解析では、1,296例の患者において、プラセボと比較してVV116が臨床症状消失までの時間を大幅に短縮し(HR 1.17、95%CI 1.04〜1.33、p=0.0009)、中間解析の結果と一致していました。
有害事象の発生率は両群間で同等でした(674例中242例[35.9%] vs. 673例中283例[42.1%])。
コメント
SARS-CoV-2のオミクロン変異株による感染の流行が続いています。COVID-19に対する新たな治療薬候補として、経口抗ウイルス薬VV116があげられますが、実臨床での検証は充分ではありません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、軽度〜中等度のCOVID-19患者において、経口抗ウイルス薬(VV116)はプラセボと比較して臨床症状が持続的に消失するまでの期間を有意に短縮しました。しかし、その効果は絶対差で2日間でした。重症化の予防効果や死亡リスクの低減効果など、臨床上より重要となるアウトカムの検証が求められます。一方、短期間における安全性に関する懸念は認められなかったことから、臨床での使用はしやすいと考えられます。ただし、モニタリング項目や薬物相互作用などの情報が不足していることから、安全性の項目についても更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 軽度〜中等度のCOVID-19患者において、経口抗ウイルス薬(VV116)はプラセボと比較して臨床症状が持続的に消失するまでの期間を有意に短縮したが、その効果は絶対差で2日間だった。安全性に関する懸念は認められなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:SARS-CoV-2の蔓延は世界的な大流行を引き起こし、オミクロン感染症の治療には未だ満たされていない医療ニーズがある。SARS-CoV-2に対して強力な活性を有する経口抗ウイルス薬であるVV116を、軽度〜中等度のCOVID-19患者における有効性と安全性を検討するために、この第3相試験でプラセボと比較した。
方法:この多施設共同、二重盲検、第3相ランダム化比較試験は、中国の感染症病院および三次総合病院の成人を登録した。適格患者は、順列化ブロックランダム化を用いて1:1の割合でランダムに割り付けられ、VV116経口剤(1日目は12時間ごとに0.6g、2~5日目は12時間ごとに0.3g)またはプラセボ経口剤(VV116と同じスケジュール)を5日間投与された。ランダム化の層別化因子には、SARS-CoV-2ワクチン接種の有無、重症COVID-19への進行の高リスク因子の有無が含まれた。組み入れ基準は、SARS-CoV-2検査陽性、試験初回投与3日前までにCOVID-19の初期症状が発現、初回投与24時間前までにCOVID-19に関連する対象症状のスコアが2以上であることであった。重症または重篤なCOVID-19を発症した患者、あるいは抗ウイルス薬を服用した患者は試験から除外された。
主要エンドポイントは、2日間連続して臨床症状が消失するまでの期間とした。有効性解析は、VV116またはプラセボを少なくとも1回投与され、SARS-CoV-2核酸陽性と判定され、初回投与前にインフルエンザウイルス陽性と判定されなかった全患者からなる、修正intention-to-treat集団で行われた。安全性解析は、VV116またはプラセボを少なくとも1回投与された参加者全員について行われた。この試験はClinicalTrials.gov(NCT05582629)に登録され、終了した。
結果:合計 1,369例の患者がランダムに治療群に割り付けられ、1,347例がVV116(n=674)またはプラセボ(n=673)を投与された。中間解析では、1,229例の患者において、VV116はプラセボよりも臨床症状が持続的に消失するまでの期間を短縮した(ハザード比[HR] 1.21、95%CI 1.04〜1.40、p=0.0023)。最終解析では、1,296例の患者において、プラセボと比較してVV116が臨床症状消失までの時間を大幅に短縮し(HR 1.17、95%CI 1.04〜1.33、p=0.0009)、中間解析と一致した。有害事象の発生率は両群間で同等であった(674例中242例[35.9%] vs. 673例中283例[42.1%])。
解釈:軽度〜中等度のCOVID-19患者において、経口抗ウイルス薬(VV116)はプラセボと比較して臨床症状が持続的に消失するまでの期間を有意に短縮し、安全性に関する懸念は認められなかった。
資金提供:上海ビンナ・バイオサイエンス社、上海市科学技術委員会、中国国家重点研究開発プログラム
引用文献
Oral VV116 versus placebo in patients with mild-to-moderate COVID-19 in China: a multicentre, double-blind, phase 3, randomised controlled study
Xiaohong Fan et al. PMID: 38006892 DOI: 10.1016/S1473-3099(23)00577-7
Lancet Infect Dis. 2023 Nov 22:S1473-3099(23)00577-7. doi: 10.1016/S1473-3099(23)00577-7. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38006892/
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